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ルーナは気配を手繰ってコーストという街に来ていた
ここには妖族という種族が暮らしており、場所も妖怪族の国内にある
一見するとただの獣人や人間のように見えるが、彼らは妖術という特殊な力を使うらしく、その能力は妖怪の種族によって違うらしい
ここから気配を感じるんだけど、なんかあいまいでわかりにくいね
うん、でも、ここにいるのは確実だよお姉ちゃん
二人は気配を探りつつこの街に宿を取ることにした
相手の位置がわかるまではここを拠点にして暮らすつもりだ
宿を取った後はギルドに行ってみる。 なにか怪しい情報や気になる依頼がないか調べるためだ
情報は特に気になるものがなかったので依頼を見ていると、行方不明者多数という表示が目に入った
どうやらこの街では子供含め何人もの女性の行方不明者が出ているようだ
痕跡は何もなく、ギルドも情報を求めているが行方不明者は街中だろうと家の中だろうと忽然と姿を消すので情報が集まらない
これ、何か気になるね。 受けてみよう
うん
二人はこの行方不明者捜索の依頼を受けた
ひとまずは情報を集める必要があるので行方不明になった人の家族や知り合いから聞くことにした
同じ依頼w受けている冒険者が何人かいたので彼らからも聞き、情報を共有する
ただ、情報はそんなに多くなかった。 どこの家の人がいなくなったとか、街の外では無事だったのに街の中で行方不明になったと言ったすでに知られている情報ばかりだった
街の中だけで起こる行方不明事件、必ず元凶はこの街にいるはずだ
調べ始めたのはいいが、何もわからないことだけが分かった
本当に何も出てこない。 不思議なほどに
だが人がいなくなる以上必ず何かおかしな点があるはずだ
それこそ目を皿のようにして探った
その結果、行方不明者が最後にいた場所からわずかだが魔力の痕跡が見つかった
それは上級の魔法使いたちでも気づかないほどの本当に微量な魔力
だが明らかにその場に似つかわしくないのだ
ルーナ達の力があればこそ見つかったもの
これをたどれば見つけれそうじゃない?
そうだね、行ってみよう
その日は大分暗くなってきていたので次の日に調査をすることにして宿にて就寝した
その夜のことだ
ルーナは何者かの気配に目を覚ました
目の前には暗がりに光る真っ赤な目が怪しく光っている
「だ、れ?」
相手はニタァと笑った
そしてルーナに手を伸ばすと体を掴み上げ、目の前の景色が変わった
そこには調査中に発見した魔力の痕跡と同じ力を感じる
もはや疑いようがなかった
この自分の体を抱き上げている不気味な女こそ一連の行方不明事件の犯人だ
「いい素材、みつかったぁぁあ」
「素材?」
「あんたはぁああ、あたしの美への礎になるのぉおおお」
言っている意味が分からなかった。 だがその気配は明らかに先の死んだ男と同じような気配
敵だ
どこかについたようだ
女はこちらが抵抗しないのをいいことにその場所、恐らく地下空間だろう場所の石畳の上にルーナを座らせた
あたりを見ると檻がいくつもあり、その中にはおびえた様子の少女や女性たちが囚われていた
泣いている者もいる
「あんたはぁあ、こっちの檻ねぇえ」
ボサボサの髪から覗く赤い目を光らせてこちらを見る
不気味だった
言われるがまま檻の中にわざと入るルーナ
隙をみて女性たちを助け出すためだ
自分の入れられた檻には同じ年頃(10歳くらい)の少女たちが閉じ込められていた
どの少女も整った顔立ちをしており、皆一様に泣いている
「大丈夫、私は助けに来た冒険者だから」
そう言って冒険者カードを見せる
それを見て彼女たちは少し安心したようだ
探知能力によると不気味な女は既に街の外へと去っており、声を出しても大丈夫だと判断した
まずルーナは檻を破壊すると囚われていたすべての女性たちを助け出した
報告にあった人数とも一致しているのでこれで全員だろう
問題はどうやってここから抜け出すかだ
困っているとサニーが答えてくれた
お姉ちゃん、溜まっていた魔力を少し使うことになるけど街まで転移できるよ
それは正に今うってつけの能力だった
魔力を使うことなど取るに足らない問題だ
ルーナは迷うことなく転移した
全員一斉に転移したので一か月で溜まる魔力を使い果たしてしまったが、また待てばいいだけなので問題としなかった
救われた女性たちはギルドによって保護され、無事それぞれの家へと帰されることになった
残すはあの女だ
何者かは分からないが、檻のあった地下空洞で待っていればまた現れるだろうと思い、ルーナはそれをギルドに報告
街の地下空洞で他の冒険者と共に待機することになった(件の地下空洞は街の下水道から行けた)