怒り狂う者2
どうやらあの世界での僕の力の奪取は叶わなかったようだ
あぁ、わたしの力、クソみたいな神々を殺すために、早く取り戻さなくては
この世界の神は既に殺した。 主要な国の洗脳も終わった。 既にこの世界は私の…僕のものだ
彼は戻って来た女騎士リゼラスとグリドを見やる
既に回復したグリドは勇者アストにひざまずいている
すでに二人には自分の意思がない。 それどころかこの国、いや、世界すべての者に自由な意思はなかった
全ての者が洗脳されている
誰もアストに逆らえない。 皇帝は既に消された。 その皇帝の椅子に座るアスト
「君たち二人は失敗した」
「ハッ! 申し訳ありません」
二人は跪きながら謝罪した
「特にリゼラス、君に至っては二回目だ。 どういうことかわかるかい?」
「はい、次にしくじれば自ら命を絶ち、アスト様の糧となります」
目に光のないリゼラスが答えた
「しょうがない、もう一人連れて行くといい。 キュレス」
現れたのは美麗な少女で、どうやら魔導士のようだ。 ゴスロリ服に左右で結ったツインテール、手には凶悪なメイスを持ち、やはり目に光はなかった
「お呼びでしょうか?」
「うん、君もついて行ってくれ、この二人じゃダメみたいだ。 君にはあの力を与えているから役に立つだろう」
「はい、行ってまいります」
スカートの端をチョンとつまんでお辞儀をするとリゼラス達と共に転移装置の上へと立った
順調に転移が開始され、ルーナのいる世界へと転送された
転移装置には 複数の管があり、その管一つ一つに子供含め多くの人が繋がれている
転移が終わるとその管に繋がれた人々はすでに息絶えていた
この装置は多くの魔力を持つ者の魂を必要とする。 これによりすでに数万人もの命が失われていた
しかし誰もそれに疑問をあげることも逆らうこともしない。 さも当然というようにその身をささげていた
勇者の洗脳はそれほどまでに強力だった
死体は全てかたずけられると次に召喚装置にいけにえとなる人間をつないでいく
「始めて」
アストの声で召喚装置が起動した
その召喚に応じたのは一人の少女。 彼女はゆっくりと目を開くと驚いた顔をした
「おお、おお、そのような姿になって…」
物悲しそうにアストに近づきそっと頬を撫でる
少女はそのまま愛おしそうにアストを抱きしめる
「姉様、召喚に応じていただき感謝いたします」
「よいよい、お前は私の可愛い妹なのだから。 いや、今は弟というべきかな? なぜそのような姿に?」
「私は体を失いました。 体を求めて彷徨った私はようやく見つけた器に力のほぼすべてを奪われました。 最後の力で何とか転生出来たものの、力は戻らなかったため転生を繰り返しておりました」
「そうか、お前も苦労したのだな。 だが、私が来たからにはそのような苦労、お前にはかけさせないよ。 私の可愛い妹」
「姉様、ありがとうございます。 あなたは全ての神々が敵に回る中唯一僕の味方でいてくれた。 そのせいであいつらに…」
「いいの、こうしてお前が私を呼び出してくれた。 またお前の役にたてるのだから」
二人はお互いを大事そうに抱きしめる
召喚された彼女の名は女神アズリア、勇者アストがまだ女神だったころ、彼女の一つ上の姉だった
末妹だったアズリアは初めてできた妹を溺愛していた。 そのためすべての神々がアストの敵に回る中、彼女だけが味方になり共に戦った。 そのため彼女は今まで封じられていたのだ。 それを今アストは呼び戻し、封印を解いた。 それも、どの神にもばれぬよう狡猾に
「エイシャ…」
女神だったころのアストの名を呼ぶアズリア
そこからは深い深い愛が伝わって来た