表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/384

1-30

 女神は手をかざし桃たちの方へ何かを放った

 

「危ない!」


 桃が盾を構えて防ぐが、あまりの威力の強さに盾ごと弾き飛ばされてしまった

 きりもみ回転しながら飛ばされていく

 テティが走り出し、女神を切り裂こうと腕を伸ばした

 その腕はあっさりと捕まれそのまま地面に叩きつけられた

 ゴシャリと嫌な音を立てて地面をえぐる。 いくらか骨が砕けたようだ


「カフッ」


 血を吐き出し転がるテティ。 立ち上がれないようだ

 走り出したアルがテティを抱えて下がる

 そこに再び女神の一撃が放たれた

 間一髪でかわし、テティをアリシャの元へと連れて行った

 アリシャは即座に回復魔法をかけてテティの傷を癒していく

 相当の重傷で、すぐには治せそうにない


「一人脱落、次はどなたかし…あれ?」


 余裕そうに笑っていた女神は目を見開いている

 自分の胸に突き刺さる腕を見た

 それは的確に女神の核を貫いている


「嘘、でしょ? なんなのこれ」


 ルーナは女神の核を砕いた 

 それに伴い女神は存在を保てなくなる


「なんなの? あなた一体、何、も…の…」


 ルーナを見る目は恐怖に染まっている

 末端とは言え女神である彼女は人間程度の攻撃では傷一つ負うことはない。 それは勇者であろうとだ

 消えゆく思考で女神は思う。 ともにこの世界をおさめていたもう一人の女神、妹のことを


あの子とはいつもそりが合わなかった。 でも、愛していた

あの子だけはコレと戦わせてはならない。 この世界から神がいなくなるのだけは避けなくては…


 最後の力を振り絞って妹である女神の封印を解き、メッセージを届けた

 そして、彼女は完全に消滅した


「終わった…の?」

 

 桃はボロボロの体で立ち上がる

 邪神と呼ばれた女神は消えた

 世界は再び平穏を取り戻したのだ


 と、誰もが思った

 

 急激に収束し、目の前に先ほど倒した女神とそっくりな女神が現れるまでは


「な! まだ消えてない!?」


 女神はゆっくりと目を開く


「よくも、お姉さまを…」


 憎々し気にルーナを見る女神

 神々しい光を帯びている。

 女神は地上に降り立つとルーナを光で拘束した

 

「キャッ! 何これ、力が…」


 絡め捕られたルーナは力がどんどん抜けていくのを感じる

 女神の持つ神器の力だった。 どんなに力が強くとも神器を介して空気中に力を霧散させてしまう恐るべき能力を持った光の鞭

 ルーナはその力を抑え込まれてしまった

 そこにもう一つの神器が投擲される

 光の速さで撃ち込まれた輝く槍はルーナの胸を貫いた


「ぐっ、あっ」


 ルーナが倒れる

 再生もできなくなっているようだ

 胸から血を大量に流している。 もはや致死量と言ってもいい


「よくも! よくも! 死ね! 異世界の住人がっ!」


 さらに槍を投擲し続ける女神。 ルーナはまるで針山のように串ざされていった

 血だまりが大きく広がる


「ルーナちゃん!」


 桃が駆け寄ろうとするが体が動かない


「あなたたちには危害を加えるつもりはありません。 勇者よ、おとなしく見ていなさい」


 喋りながらも投擲を続ける。 ルーナは貫かれるたびに地面を転がっている

 大量の血を流したせいか、すでに傷口から流れる血すらない

 

 完全に動かなくなったルーナを見て女神はようやく投擲をやめた

 ズタボロになったルーナはピクリとも動かない


「これはこれは、まさかこの世界の女神が我らの目的を果たしてくれるとはな」


 そこに声がかかった

 女神が声のした方向を見やると、女騎士に率いられた騎士たちが見えた


「誰だ、お前たちは」


 女神が問う。 その問いに返答はない

 騎士たちは転がるルーナに近づいた


「ふむ、動かないがまだ死んではいないようだな」


 その言葉に女神は驚く

 あれだけ神器を差し続けたのだ。 神ですら生きていられるはずはない

 それなのに生きていると言う女騎士の言葉を疑った


「どれ、私がとどめを刺してやろう」


 リゼラスは禍々しい槍を取り出しルーナに向けた

 明らかに異質な力、そこからは自分が投げた神器よりも強い力を感じられた

 槍を振り下ろす女騎士

 しかしその槍は止められた。 外ならぬルーナの手によって

 

「馬鹿な、なぜ動けるの!?」


 女神は驚いた。 力も奪い、これほどに神器を撃ち込んだのだ。 動けるはずがないと思っていた

 ルーナは槍を掴んだ手に力を込める

 パキンと簡単に槍は折れた


「ぐっ、まだこれほどの力を? さすがは破壊神と言ったところか。 グリド殿」


 グリドと呼ばれた男が腰から刀を抜き放つ

 鈍い輝きを宿した刀身、グリドの武器、神剣“神殺しの焔”だ

 神を殺すために神が打った刀である。 二人を洗脳した勇者アストが持たせたものだ


 刀はルーナの首に向かって炎を宿しながら振り下ろされる

 その刀身を何かがうがち、すんでのところで弾いた

 パリケルが自らを模したカラクリ人形、改造を施したことで4号となった人形から放った銃弾だった

 

「邪魔をするな!」


 グリドが刀を横なぎに振るとそこから燃え盛る斬撃が飛んだ

 それはパリケルの人形を破壊し、パリケル自身へと向かい、彼女を焼いた


「あがぁああああ!!」


 パリケルの悲鳴が響く

 彼女は重度のやけどにより動けなくなったが、何とか生きているようだ


 それを見たアルは怒り、グリドへと立ち向かっていったが、あっさりと切り伏せられ倒れた

 桃は呆然として動けない

 今目の前で好意を寄せていた男が斬られた。

 倒れた彼は動かず、すでに死んでいるようだった


「邪魔をしなければ何もせん」


 グリドは再びルーナに刀を振り下ろそうとした

 が、ルーナは立ち上がっている。 その目は虚ろで、まるで死体が動いているかのようだった


「お姉ちゃんを、いじめた。 許さない」


 何を言っているのか誰もわからなかった

 それもそのはずで、現在体を操っているのはルーナではない

 彼女の双子の妹の意識だった


「私のお姉ちゃん、大切な、お姉ちゃんをいじめた…。 殺す」


 静かにそうつげる少女サニア(今はサニーと自ら名乗っている)は自分に刺さった槍を身震いだけですべて引き抜いた

 

「覚悟はいい?」


 サニーは手を振った

 グリドは全身をぐしゃぐしゃにへしゃがせて吹き飛んでいく


「次はあんた」


 女神に目を向けるサニー


「ひっ」


 女神は恐怖した

 自分の姉を倒したモノよりも禍々しい力を放っているそれはニタァっと不気味に笑っている

 手を伸ばして女神を掴んだ

 そのまま地面に叩きつける


「うぐぅっ」


 女神は身動きが取れない。 途轍もない力で押さえつけられていた

 

 その様子を見て女騎士リゼラスは引き時だと判断した

 死にかけているグリドを抱えると他の騎士たちと共に一斉に次元転移装置を起動し元の世界へと戻って行った


 女神にサニーの拳が振り下ろされた

 その拳は当たる直前に女神の顔の前で止まった

 

「だ、め…サニア、止めて」


「く、命拾いしたわね、この世界の女神」


 悔しそうにサニーは内側へと引っ込んだ

 ルーナの意識が戻ったようだ

 そこでルーナは知った

 自分の探していた妹は自分の中にいたのだと


 女神を抑えていた手を離した


「おのれ! あなたたち、手伝いなさい! この異世界人はこの世界に、いや、すべての世界に害をなす! 今のうちに屠っておかなければ!」


 女神は桃たちにそうつげた

 しかし桃は未だに呆然自失としている

 テティはまだ回復できていないし、パリケルも動けない。 アルはすでにこと切れていた

 その様子を見て女神は神器の力を解放した

 鞭を桃に絡ませると、桃は操られ立ち上がらされた

 まるで人形のように手足を動かされ、ルーナの前に立たされた


「こんなことはしたくありませんが、これもあの得体のしれない異世界人を滅ぼすためです」


 女神は心底申し訳なさそうに桃につげる

 そうしなければならないほど切羽詰まっているのだ


 女神は桃を操りルーナに剣を突き入れさせた

 ルーナはその剣を避けることなく受け入れている

 胸元に食い込む桃の大剣。 下位の神剣とはいえルーナにダメージを負わせることは出来る

 しかもルーナはそれを何の防御もせずに受け入れたのだ

 心臓に深々と突き入れられる剣

 

 「カフッ」 と血を吐き出した


 そして


「ごめんね」


 とルーナはつぶやいた


 その時周りで雷の嵐のようなものが起き始める

 バチバチと音を立てる嵐はルーナに収束し始めた

 痛む心臓と胸の傷を抱えルーナは手をあげた

 そこから出た癒しの波導があたり一面を覆う

 それはテティとパリケルの傷を癒し、アルを蘇らせた

 さらには消えたはずの女神までをも復活させる


 ルーナは力の使い方をサニーの記憶を通して知った

 だからこそ成せた技であった


 完全に嵐がルーナを覆うと、掻き消えた

 そこにはもうルーナの姿はなかった



 世界に平和が訪れた

 女神達と和解し、今後この世界の住人通しでの争いを一切しないと約束された

 この世界に流されてきた異世界人は女神達によって元の世界へと戻され、異次元の穴も全てが閉じられていく

 

 桃はルーナのことを思い出しながらも自らの世界へと戻って行った

 その世界は…


第一部完的な

桃のいた世界ってどこなんでしょうねえ

いずれ出します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ