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1-29

 テティの爪がロルカムに迫り、それを何とか間一髪でかわすが、二撃目により彼は腹部を切り裂かれた

 しかしそれだけでは止まらない

 あっさりと傷が癒え、すぐに体勢を立て直すと手に持つ棍棒でテティを突く

 みぞおちを突かれのけ反るテティ

 まだ体調が万全ではない彼女はそれだけで動きが鈍ってしまった

 そこにルガルティンの大剣が迫っていた

 テティの首を薙ぎ払おうと迫る大剣、それは何かにはじかれた

 桃が投擲した大楯だ

 ガキンと金属音が響く

 

「テティちゃん! 大丈夫?」


「はい!」


 テティを立ち上がらせると地面に刺さった大楯を引き抜いた

 ルガルティンは歯をむき出して怒っている

 

「獣魔王様、いや、獣の姫、貴様だけは許さん! 我らをたばかった報いを受けてもらう!」


 勝手だとテティは思った

 彼女はずっと眠っていたのだ

 それを無理やり起こされ、勝手に持ち上げられた

 しかも悪の根源としてだ

 

怒っているのは、私の方だ。 勇者様との思い出を、思いを踏みにじられたんだから


 テティはさらに力を解放する

 今の彼女では完全に力を解放することはできないが、それでも魔人たちを圧倒していた

 ルーナほどではないが恐るべき速さで次々と攻撃を繰り出していく

 その速度はどんどん上がっていく

 魔人たちは防戦一方だ

 そこに桃たちの攻撃も加わり押されている

 そして、ルーナが動いた

 一瞬である

 魔人たちは瞬きする間もなく全員が破壊された

 

「すごい、のね、あなた」


 テティはルーナを見て言った

 自分より速い者を初めて見たからだ


 魔人たちは無事討伐されたのだが、まだあと一人残っている

 ピニエだ

 彼女は戦闘を得意としない

 魔人が全員討伐されるのは時間の問題だろう


 問題は、邪神だ

 彼女が何を考えているのか全く読めない

 本来の神はどこへ行ったのか? 邪神を倒せばそれがわかるかもしれない

 


 そんな魔人を倒した勇者たちの元に上空から声がかかった

 邪神の声だ


「あら、あっけないのね。 まぁ楽しめたしいいか。 ね、そこのあなた。 あなたこの世界の住人じゃないわね? どこからきたの?」


 邪神の純粋な疑問だった

 彼女はルーナの力がどこから来たのかを知らない

 神々の末端ではあるこの世界の神ではルーナの力を知らないのも無理はない


「私は…。 わからない、でも、この世界に危害を加える気はない。 あなたはこの世界をどうしたいの?」


「そうね、私は自分のいいようにこの世界を作り変えたい。 前の神じゃ無理でしょ? あいつは見てることしかしなかった。 でも、私は違う、この世界の住人のことをいつも思っていた」


 彼女の声はどこか悲しそうである


「この世界には世界共通の敵が必要なの。 そのおかげで世界は今一つにまとまっている。 そうでしょう?獣魔王。 かつてあなたたちが私を敵とみなして立ち上がり、纏ったときみたいにね」


 彼女は本当は、世界を憂いていた

 いつまでたっても多種族同士で争う世界に

 だが今は違う

 全ての種族が一丸となっていた

 共通の敵、獣魔王と言う存在を倒すために


 邪神である彼女の本来の姿は、この世界を憂うもう一人の神だった

 本来ここは二人の神が治めていた

 その一柱が彼女だったのだ


 衝撃の事実に全員が驚いた

 だからこそ、桃がもらった勇者の力は本物だったのだ

 もう一柱の神は現在彼女によって封じられている


 邪神、いや、女神は姿を現した

 その目からは涙が頬を伝って流れている

 それは神々しく、本当に世界を憂いている女神の顔だった


「暇つぶし、と言っていたけど、あれは私たちに対する挑発だったのですね?」


 アルは女神に聞いた

 どう考えても先の暇つぶしという発言はおかしいと思ったからだ

 彼女は自分たちを挑発し、自らを倒させようとしている

 

「どうとらえても構いませんわ。 さぁ、私と戦いましょう」


 女神は本来の力を解放する

 目の前にいるのは紛れもない神だった

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