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ルーナは異世界の騎士たちの話をきいて驚いた
まさかここまで追ってくるとは思っていなかったからだ
アルはルーナの記憶を垣間見ていたため少しは事情を知っている
ルーナがおびえているのが分かった
あそこまでの力を持っているのにおびえている? それほどの力を持った騎士なのか?
アルはそう疑問に思った
確かに騎士たちの力はこの世界の住人では太刀打ちなどできない
だがルーナの力ならば簡単に彼らを退けることができる
彼女が恐れているのは騎士ではなく、彼らに仲間を傷つけられるのではないかということに恐怖しているのだ
現在魔人たちはこちらに向かってきているらしい
到着するのも時間の問題だろう
それまでに対策を立てなければならない
まずは街のギルドに情報を伝えた
伝えたのは魔人たちが攻めてくることのみ
テティのことは獣魔王と紹介せず、囚われていた少女で、何とか逃げだして情報を持ってきてくれたのだと伝えた
はたから見ればただの獣人である彼女はすぐに信じてもらえた
「それにしても異世界の騎士って何者なの? 私みたいに召喚されたとか?」
「いえ、それはないでしょう。 勇者召喚は神の御業です。 そう簡単に出来るものではありませんから」
答えてくれたのはギルドマスターの男サウスだ
支部ごとにマスターはいるが、彼はそれをまとめ上げる大本である
「じゃぁ流れてきたってこと?」
「違う」
その疑問を否定したのはルーナだった
「あの人たちは、私を追って来たの。 わたしを殺すために…」
アルとパリケル以外は驚いていた
彼らはルーナの記憶を見ているため騎士達のことは分かっていた
ルーナは今までの自分の経緯を話す
騎士達との関係についても包み隠さず話した
自分がかつて異世界で破壊神と呼ばれていたこと、騎士の一人であるリゼラスの両親を殺してしまったことなどだ
皆固唾を飲んで聞いていた
あまりにも突拍子もないことだがルーナの力を見れば誰もが信じるだろう
そんな中、彼らに魔人発見の知らせが入った
魔人たちはすでに街のすぐそばまで来ているらしい
「とにかく今は魔人を止めよう! ルーナちゃん、テティちゃん、力を貸して!」
桃は二人を頼った
自分では魔人たちに太刀打ちできるほどの力がないことは分かっている
邪神に力をもらったとはいえ勇者である
人々を守るため戦うと決めていた
街に被害が出るのを防ぐため桃たちは魔人の進行方向である荒野まで向かう
ここならば多少崩壊しても問題はない
それから一時間、魔人たちは姿を現した
その目が見据えるのは桃たちの姿
そして彼らは驚愕した
桃たちと共に獣魔王がいる
「なぜ、獣魔王様が、ここに?」
「私は獣魔王じゃない! 私は先代勇者の仲間、獣王テティ!」
魔人たちは驚く
自分たちが信じ、旗印として尊敬した獣魔王の正体が勇者の仲間だったことは正に寝耳に水だった
「どういうことですか? 獣魔王様! 我らをたばかっていたのですか!?」
憎しみと怒りをテティに向ける
テティはその気配に圧倒されそうになるが、グッとこらえて彼らに対峙した
そして、彼らと戦うために自らの力を解放する
雷を纏い、駆けだした
その速さは目で追えるものではなく、ルーナ以外はその動きを感知できなかった
一瞬のうちに魔人との間合いを詰める
それを皮切りに魔人たちとの戦いの火ぶたが切って落とされた
あと数話ですかね
この世界は