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 雷獣は唸っている

 こちらを目指してくる大群に向かって

 自分の主たる魔人を守らんと前に出た

 強力な力が確認できる

 危ない、自分の主人よりも圧倒的な気配

 主人は気づいていない

 それもそのはずで、ルーナは限りなく力を抑えて冒険者でいうAランクほどの気配しか発していなかった

 これは雷獣の野性的な感だった


「どしたの雷獣?」

「…あぁ、雑魚がむかってきてるのね」

「問題ないわ、殺して殺して殺しまくって終わり、あなたがいれば簡単」

「それに、どうやら獣魔王様へ通信が繋がったみたい、もう待つ意味もないね」

「獣魔王様が見てるんだから絶対勝たなきゃね!」


 彼女は知らない、この世界のどんなものも敵わない圧倒的な化け物がいることを

 だから警戒している雷獣を不思議に思った

 

「ま、いっか、ニャハ、殺せ雷獣」


 アナサのその言葉で進軍が始まった

 怒涛の如く押し寄せる魔物の大群と、それに向かう冒険者たち

 桃は盾を展開して彼らを強化する

 

 初撃は桃の大剣による一撃だった

 どこまでも伸びる大剣を一気に前方へと振るう

 雷獣やウワバミといった災害級は簡単に避けていたが、有象無象の魔物たちはあっさりと斬られる

 

 攻撃を避けるため飛び上がった雷獣は雷を冒険者に向かって落とした

 強化されているとはいえその一撃は強力で、冒険者の塊が打ち抜かれて息絶える

 ウワバミはその巨大な口で冒険者を丸のみにしている

 彼らの攻撃はその硬い鱗に阻まれ効果がないようだ

 

 桃は走り、雷獣に剣を突き立てるのだが、あっさりと躱された

 雷獣は思った。こいつは脅威になりえないと

 勇者はまだまだ発展途上、今の実力では雷獣相手は難しかった

 ならば一体何者がここまで自分を警戒させるのだ?

 あの不思議な人形を遣うガキも違う、白い衣を着たガキも、剣を振るう様々な冒険者もどれも彼も脅威ではない

 そんな中、一人慌てふためいている少女の姿が見えた

 なにも武器を持っていないし、ただ逃げているだけに見えた

 これが町中ならば不思議ではない

 一般人の少女が逃げているだけだろう

 だがここは戦場だった

 それが違和感に拍車をかける

 

 雷獣は本能的にこの少女がやばいと感じた

 今のうちに自分が消さなければ主の弊害となる

 だから、雷獣は少女に牙を向けた

 その判断は間違いだと気づかされる前に終わった

 向かってきた雷獣をルーナはただの一撃で屠った

 誰にも見えないほどの速度で撃ちだした拳は正確に雷獣の頭を砕き粉々に弾き飛ばした

 頭を失った雷獣はその場に倒れビクビクと痙攣している


 周囲にいた冒険者は何が起こったのか分からないといった表情で固まっている

 あれほどの脅威だった雷獣があっさりと死体になっている

 

 ルーナはそれで勇気が湧いたのか、光のような速さで続いてウワバミの頭をつぶした

 ぐちゃりと潰れるウワバミに続いて遅れてやって来るパーンと響く音

 何も見えない、残像すら線となるほどの速さでほんの数秒で魔物の大群の半分が倒された


「へ?なにが…起こってんの?どういうことよ…」


 アナサには何も見えない

 線が移動し、その先々で自分の魔物たちが次々と潰れていく異様な光景に動けずにいた

 もはや魔物は数百体にまで減っていた


「うそ、うそよ、なんで?だってだってだって、雷獣は私の最強の手ごま、ウワバミだってそれに負けない…。ダメじゃん、ニャハ、あぁ、これ、ダメだ。あたし、死んじゃっ…」


 アナサはそう言い終わる前に頭を砕かれ死んだ

 アナサ率いる一万もの大群は、ものの数分で全滅した

 冒険者たちも何が起こったのか分かっていないが、勇者の力だと誰かが叫んだ

 それを皮切りに勝利の雄たけびと桃をたたえる声が上がった

 桃はほとんど何もしていない

 ルーナがたった一人で全滅させたのだ

 彼女の力は封印されかなり抑えられている

 その実力は本来の力の1万分の1にも満たない

 それなのに、である

 

 桃たちは唖然としている

 あまりの力の差に自分たちは何のために戦っているのかという疑問が生まれた

 ルーナは分かっていないようだが、力を封じられている今でさえこの世界程度の低次元な存在ならば一撃で消すことができる力を持っている

 封印術だってルーナが少しだけ力を解放すれば簡単に破れる

 

 アルはルーナの危険性を見直した

 この子を敵に回してはいけない

 自分たちの理解の及ばない力を前に絶望し始めていた

 

 理解が及ばないのも無理はない

 彼女の力自体は最上位の次元に位置する力なのだから


俺TUEEEEではなく俺Ultimateです

強さの次元がまさに違います

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