怒り狂う者
誰かの回想です
私は全てを許さない
愛するものを奪わせたこの世の全てを
最初に消したのは親だった
次に私の兄弟姉妹と言える者たちを複数
消して消して消して
その末に私は壊滅的な被害を受けた
だから依り代となる体を探して彷徨った
そして、見つけた
その子たちは私の器としてまさにうってつけだった
迷わずその子に憑依する
それが私を滅ぼそうとする者たちの画策であるとも知らずに
結果は失敗だった
私の力自体は定着したのだが、その子の自我を取り込むことができなかったのだ
それに、私の力そのものをその子の片割れと思われる少女に奪われた
私の強すぎる力を受けてか双子は暴走を始めた
いくつもの国を壊し、億を超える人間を殺しつくし、ようやく完全に能力が定着したころには双子は自らの過ちに気づき崩壊した
最初に依り代とした妹の方はいつ覚めるともわからぬ眠りにつき、姉の方はその罪を一身に受け償うため永遠ともいえるほどの苦痛を伴う転生を開始した
それにより私は力を奪われたまま体からはじき出される
その私を容赦なく奴らが叩いた
すべては策略だったのだ
一つの世界と器となる双子を犠牲にして
奴らは私とは違う
私は、私は全てを愛していたというのに!
消滅しかかっていた私は最後の力を振り絞り、転生を開始した
記憶を完全に保ったままの転生である
力はほぼなくなるだろう
それでも、私は生き残らねばならない
許せない許せない許せない
私は転生した
ほとんど力を持たないただの人となったのだ
それから幾度も幾度も転生を繰り返し、力を少しずつ蓄えた
ようやく私は元の力を取り戻せるだけの体を手に入れた
まずは力を取り戻すとしよう
そうしてボクは勇者召喚に応じた
力を蓄えたボクにとっては召喚先をこちらに設定させることなど造作もない
召喚紋をくぐると懐かしい匂いがした
ようやくここに帰ってこれた
あとは双子から力を奪い返す
周りで力を使い果たし死んでいる魔導士たちを尻目にボクは友好的な笑みを浮かべてその場にいる者全ての心を奪った
さぁ始めようか
破壊へのプロローグを
少年は薄く笑みを浮かべる
そして、自分からすべてを奪わせた者たちに復讐するために動き出す
誰も彼がかつて全ての神々を敵に回したモノだとは思はない
それは神々をもってしても巧妙に隠匿され見破ることができない
彼女、いや、彼は内心に憤怒を抑え込みながら計画を開始した