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5-26

 暗い世界に一人の少女が佇む

 まわりを見るが誰もいない。あるのは深い悲しみだけ

 少女はその手で仲間を傷つけた。もはや自分の居場所はあそこにはない

 記憶を、取り戻した

 自分の勘違いで妹を殺そうとしたことに罪悪感を覚える

 

「私にはもう居場所なんてない。このまま消えよう。私の全ての力を暴走させて、自分ごと消しちゃえばいいんだ」


 彼女はその小さな体には似つかわしくない大きな力を体内で爆発的に高める

 自爆、それがルーナの選んだ結末だった


「サニー、サニー、ごめんね。もう一度、お話したかったのに、出来なかった…。さよなら」


 まばゆい光がルーナを包み込み、バシュッという音と共にその姿を消した

 魔力の残り香すら残すことなく


 消えてしまったルーナを全ての世界、全ての神々、闇、古の支配や黒族が探す

 誰も彼もが彼女に恩を感じ、その恩を返せていないと必死になっていた


「お姉ちゃん、お姉ちゃんどこなの?」


 中でも実の妹であるサニーはとりわけせわしく探している

 今度こそ、姉を見つけ出して元通りの姉妹として、平和に暮らせると思っていた

 それなのにルーナは記憶を失い、その記憶を取り戻しても罪悪感によって自分の前から姿を消してしまったのだ

 サニーは涙を流し、姉のことを思った


「クソッ! 一体どこへ消えたというんだルーナ! 私はまだあの子にちゃんとした謝罪ができていないんだぞ?」


 神聖騎士のリゼラスはパリケルと共にアカシックレコードを覗いていた

 だがそのアカシックレコードではルーナがどこに消えてしまったのかを追うことができず、未来もぼやけて確認できない

 手づまりだった


「く、もっと範囲を広げるぜな? いや、それでも見つかるかどうかわからないぜな。くぅ、どうすれば…。これほどまでに痕跡が残らないことなんてあるんぜな?」


「パリケル、私も手伝う。私にもアカシックレコードを連結させろ」


「そ、そんなことしたらお前の頭が破壊されるぜな! これは俺様自体がアカシックレコードという存在だからできることなんだぜな!」


「それでもいい! あの子を見つけれるなら私一人くらい壊れてもどうということはない!」


「ダメだぜな。できない、ぜな」


「いいから!」


 リゼラスは無理やりアカシックレコードからコードのような光を引き出すと自分の頭にグサリと差し込んだ


「これで、連結できたのだろう? やるぞパリケル!」


「ふぅ、どうなっても知らないぜな」


 二人は力を合わせ、ルーナの位置を血眼になって探した

 リゼラスの場合正に血眼、目や鼻、耳から多量の出血をしながらもその情報量の多さに耐えた

 それもひとえに神聖騎士として神の眷属になれたことが大きいだろう

 もし元のエルフの体のままであったなら一瞬で脳は破壊され、廃人になっていたはずだ


「パリケル! これを見ろ!」


 開始から実に半日。満身創痍のリゼラスが突如叫んだ


「こ、これは、時空の歪?」


「ああ、それとここの映像の数日前を見てくれ」


 早戻しのように映像が戻り、その場所の数日前の映像が流れた 

 そこにはどこからともなく現れた少女が映っており、その姿は紛れもないルーナだった


「間違いない、ルーナだぜな」


「ああ、そしてこの映像を進めると」


 リゼラスが早送りをしていくと、ルーナは何やら膝を抱え、自身の力を体内で膨れ上がらせているのが分かった


「自爆…。自爆しようとしているんだぜな!」


「なに!? ならば早くこの場所へ向かうぞ!」


「いや、待つぜな。確かに自爆しようとしているみたいだけど、どうにもこの力の流れが時空に歪を生んでるみたいなんだぜな」


「どういうだ?」


 パリケルがさらに映像を進める


「やはり…。これじゃあルーナはもう見つけれないぜな…。」


「どういうことだおい! はっきり説明しろ!」


 パリケルは首を振り、状況を説明した


「ルーナは、時間を超えたんだぜな」


「時間を!? 何を馬鹿なことを」


「間違いないんだぜな。それを証拠にこの時空の歪はどこかの時間軸に繋がってるはずなんだぜな」


「ならばそこに行けばルーナの居場所まで行けるんじゃないか?」


「それが、無理なんだぜな」


「どうして!?」


「もう、歪は消えてしまってるぜな」


 その場所の現在の映像を確認すると、そこにはなんの歪もなくまっさらな世界だけが映っていた

 歪を調査しなければどの時代、どの時間軸にいるかなどが分からない

 過去なのか現在なのか未来なのか、それすらもつかめないのだ

 アカシックレコードに記される膨大な数の記録。それらを一つ一つ探してルーナを見つけ出すにはそれこそ永遠とも呼べる時間がかかる


「いくら管理者の俺様でも、不可能に近いんだぜな」


「そんな…。そんなことって…。」


 リゼラスが愕然としてうなだれる


「こればっかりは俺様にもどうしようもないんだぜな」


「…。皆に伝えよう。このことを」


 しばらく考えたのちにリゼラスはそう言った

 その言葉にパリケルも悲し気な顔でうなづくしかなかった

 

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