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5-25

 アカシックレコードの記録回路とルーナの記憶回路が連結する

 散った魂と共に消えた記憶をこれによって呼び覚ます

 記憶はなくしたが完全に消えたわけではなく、魂に刻み込まれた記憶というものがある

 アカシックレコードはそれを呼び覚まそうとしているのだった


「ぐぁああ! 放せ! あああああああ!!」


 暴れるルーナを全員で抑え込み、パリケルが記録を一気に流し込んだ


「ああ! 頭が、痛い、痛、ぐぁあああああああああああ!!」


 一気に流れ込んできた自分と仲間たち、そして家族の記憶

 しかしそれでもルーナは暴れることをやめない


「放せぇえええ!」


 力を込め、大きく暴れ出したルーナに全員が振り払われて地面に転がる


「全部じゃない。だけど成功したぜな! 記憶をよみがえらせれた筈ぜな!」


 ルーナは頭を抱えて苦しみ、その場でもがく


「あぐぁああ、痛い、痛いよぉ。ルニア、助けて。痛い、痛い痛い」


 ルーナは頭を押さえてその場にうずくまり、襲い来る記憶の波に耐え続ける

 うずくまって震えるルーナに仲間たちが近づきその様子を見守る

 

「うるさいぃぃい。お前の体は僕がぁあ」


「そんなまさか! 俺様の計画は失敗だったっていうんだぜな!?」


「ぱ、パリケルさん、これは一体」


「まさか魂にこびりついていたというんだぜな…。レグの魂が。あそこまで痛がるのはおかしいと思ったんだぜな。要は記憶に拒絶反応が起きていたんだぜな。それは、レグがいたからだったんだぜな」


「フハハハ、ようやくこの体をまた手に入れることが、出来た。お前には感謝するよアカシックレコード」


「そんな、まだこいつは内部に潜んでいたって言うの? お姉ちゃんはこいつを消滅させるために犠牲になったって言うのに!」


「ちょうどいい。ここには僕の気に食わない連中が集まってるみたいだ。全部壊して再びここから破壊を始めよう」


 レグはふわりと浮き上がり、まずは桃を狙う


「桃!」


 桃を狙った怪光線。桃は動けず立ち尽くしてしまっていたが、アルがかばったことで桃は弾き飛ばされる

 ハッと正気に戻った桃が時すでに遅く、目の前にアルの傷一つない体が転がっていた


「これに当たった者は魂が消滅する。二度と蘇ることもない。お前らはこれで全滅だ」


 レドがその光を集約し、一気に放った


「みんな! 私の後ろへ!」


 全員が桃の後ろへ隠れたところで彼女は盾の力を発揮させた


「フルベルテウス!」


 盾が七色の光を発しながら怪光線を受けた

 激しい衝撃に全員で結界を張り耐えるが、空間にひずみが走り、結界は砕け、桃の盾と鎧を破壊する

 それでも盾を捨てた桃は後ろの仲間を守るために剣で対抗する

 剣にひびが入り始めるが、そこでなんとか怪光線は止まった


「ぐ、ハァハァ、嘘、たった一撃で、ここまで」


 すでに満身創痍の桃を含め、後ろにいた仲間は全員が虫の息で倒れていた

 桃は息を切らし、死を覚悟しながらも、それでも彼女は立ち上がる


「こうなるなんて思わなかった」


 剣を持つ桃はゼェゼェと息荒く敵に語り掛ける

 レグは笑いながらゆっくりと歩みを進めた

 レグは右手をスッとあげ、少女に向けると、その手からは光があふれ始める

 光は剣となって右手に握られ、桃に向けられた

 一瞬の瞬きの内に目の前のレグの姿が視界から消える

 桃は慌ててボロボロの大剣を盾に自分の右方向から迫る光の剣を受け止めた

 パキンとひびが入り、大剣は砕け散り、それと同時に桃の右腕は宙を舞い、切り口から血が吹き出る


「ああああああああ!!」


 痛みに朦朧とするが、それでもまだ倒れるわけにはいかない


「4号!」


 後ろで倒れていたパリケルの声がし、彼女の傍らでパキパキと音を立てて立ち上がるカラクリのような人形が自分の右腕を外し、投げた

 外れた右腕は今しがた手を失った少女の右腕に癒着し、彼女の手としてなじんでいく

 ヒュっとカラクリの右腕を振ると一振りの刀と成った


「まだ、戦える!」


 “聖剣 陽天の彼方”と呼ばれる光の剣を組み込んだカラクリの腕はキーンと音を立てて振動し始める

 超振動でさらに切れ味を増したのだ

 もはや少女の手には神剣や神具はない。この聖剣でレグに傷を与えれるのかもわからない

 それでも、少女は痛みを無視して敵に挑んだ

 少女によろよろと近づく仲間の少年

 魂のほんの一部が残っていたためアルの体をその意思で動かしたのだ

 彼は少女を自身の最後の力を使って癒す

 痛みが引いた

 それと同時に少年から命の火が消えていくのを感じる


 彼のことが好きだった

 そんな彼がゆっくりと倒れ、その命を散らす

 流れる涙をぬぐい、敵に振動する聖剣を向けた

 そして一気に踏み込み、敵の胸元に聖剣を突き刺し、驚くほどあっさり剣は胸に沈んでいった

 まるでレグ自身が受け入れているかのようだ


「ぐお、ああ、まだ抵抗して。くぁ、僕はまだ…。」


「おね、がい、これで死んで!」


 さらに奥深くに突き入れる

 レグ、いや、ルーナは、少女より小さな体をゆっくりと歩み進め、少女に抱き着いた


「…ごめん、なさい」


 ルーナが言った一言に思わず聖剣を引き抜こうとした

 しかし敵は聖剣をグッとつかみ、自分の胸――心臓にさらに刺し入れていく

 彼女はニコリと笑い、口からゴボッと血を吹き出した


「ルーナちゃん」


 桃はルーナを抱えた

 小柄な少女から力が抜けていくのがわかる

 いくら圧倒的な力と再生能力を誇る体であっても、自ら受け入れたため再生ができないようだ

 ルーナはそのまま崩れ落ちるように倒れた

 彼女の体から聖剣を引き抜くと、周囲に電撃と稲妻が走る

 それは集約し、倒れたルーナの体に集まり始め、「ごめんなさい」という彼女の声と共に消えた


「全部、終わったの? でもルーナちゃんは…」


「分からないぜな。力の波も何もかもがめちゃくちゃで、俺様の見た未来とは少し違うようなんだぜな。あの時見た未来。そこに描かれていたのは神々の絶滅。レグに抵抗できなかったルーナはほとんどの世界を滅ぼし、この世界で最終局面を迎えたんだぜな。神々はルーナを止めるために全てが魂ごと消された。でも今全ての神がこうして無事立っている。犠牲になったのは、アル、だけ…」


 アルのぐったりとした死体を桃はそっと抱き寄せる

 ドクン

 鼓動が聞こえた


「え?」


 アルの胸に耳を当てると、かすかにだが心臓の鼓動が聞こえたのだ


「生きてる! アル、生きてるよ!」


 全てを救うきっかけとなった勇敢な少年を救うため、神々は集まりその心血を注ぐかのようにアルを回復させた

 その結果、彼は無事一命をとりとめる


「ルーナのことは俺様に任せて欲しい。必ず探し出すぜな」


 戦いは終わり、本当の平和が訪れる

 そして一人の少女が世界から消えた

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