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「見つけた」


 あいまいな記憶のまま、かつてルーナと呼ばれた少女は世界を移動し続ける。自分を殺したと思われる妹に復讐を遂げるために

 なぜ自分は殺されなければならなかったのか、大切な何かを思い出せないが、妹を殺すことにためらいはない

 彼女はその思いに違和感を覚えることすらない。それは記憶だけではなく感情もいくつか失っていたからだった

 嘆きも悲しみも、愛も優しさも、彼女の中から消えている

 憎しみと怒りが今の彼女を突き動かしていた

 その怒りは彼女の体にまとわりつき、周囲にあるものを変質させていく

 植物は禍々しくねじ曲がり、動物は魔を受け凶悪な魔物へと変わった


「あいつを、殺さなきゃ。あいつは私を殺したんだから、私も殺し返さなきゃ」


 もはや正しい判断もつかないルーナは歯をむき出して笑い、自分で生み出した魔物や魔獣を引き連れて世界を超え、妹の前へと降り立った


 ここは神界

 全ての神々が集まっているその世界に突如として現れたルーナに対し、神々は驚きを隠せないようだった

 転移してくるにしても何らかの波長があるはずだが、それすら感じられない異質な力の持ち主を神々は警戒する


「アハ、そこにいた、サニー」


 笑顔の少女にサニーと呼ばれた少女はへたり込んで絶句する


「お姉ちゃん? 本当にお姉ちゃんなの? だってお姉ちゃんは私が」


「そう、お前が、殺した!」


 ルーナは引き連れた魔物たちを解き放ち、神々を襲わせた

 そして自分はサニーにゆっくりと歩み寄る


「妹、サニー、お前を殺してあげる。私を殺したように」


「待ってお姉ちゃん! 一体どうしたの!? なんで!?」


 動揺するサニーにルーナは何も答えずただ歩みを進めて笑った

 楽しいという感情もないため見せかけの、怒りから来る笑顔だが、その笑顔が余計にサニーを恐怖させる


「お、お姉ちゃん…」


「私のために死んでねサニー」


 ルーナが手を振り上げてサニーを襲う

 サニーはギュッと目をつむり、姉の攻撃を受け入れることにした

 自分が殺してしまった姉のやることならと振り下ろされる腕を成すがままにさせた

 ガキンッと金属音がし、その音に驚いたサニーがゆっくりと目を開けるとそこには岸田と石野が立っている

 岸田は神剣を抜いており、それがルーナの攻撃をすんでのところで受け止めている


「姉妹で殺し合うなんて、そんな悲しいことさせないっすよ。ルーナちゃん、君は一体どうしたって言うんすか?」


「ルーナ! 俺だ! 覚えているか?」


「誰? 邪魔しないで。その子を殺してあげるんだから」


 ルーナの目から怒りと憎しみの気配がする。石野はその目を見て胸を痛めた

 

「ここは、俺に任せてくれ。岸田は魔物たちの処理を頼む。レコ! 出てきてくれ!」


「はいです石野さん!」


 岸田がレコを呼び出し、ルーナに向き直った


「この魔物の数では神々も苦労するだろう。レコ、今こそ俺の力を使うべきだと思わないか?」


「そうですね! 石野さんの力は英雄召喚。みんなが呼びかけに答えてくれるはずですよ」


 神獣となった石野は自分の力を解放する

 それは神獣としての力ではなく、石野自身が手に入れた自分自身の力だ

 その力によって、石野の後ろに大軍が呼び出される

 それは彼と心を交わした異世界の勇者や英雄たちで、その誰もが石野の呼びかけに答えた者

 数は1万を超え、一斉に魔物たちに向かっていった


「さて、これで俺たちの邪魔をする者はいない。ルーナ、話をするんだ。俺とお前で」


「誰だか知らないけど、そんな必要ない。お前を殺してあの子も殺す。邪魔するならそいつらも殺す」


「聞く耳はもってくれないのか?」


 それ以上は何も語らず、ルーナは石野に向かっていった


「やむ負えない。すまないルーナ、お前を傷つけることになるかもしれない」


 振り下ろされる爪の一撃一撃を神刀で弾き、攻撃を与えていくのだが、まるで煙でも相手にしているかのようにその攻撃が通らない


「これは一体…。この刀は実体のないモノも斬れる。ルーナ、お前は一体」


 動揺し、油断してしまった石野はルーナに蹴り上げられ、気絶する


「誰かは分からない。でもきっとお前は、私の好きだった人。だから殺さないであげるわ。特別にね」


 ルーナは気絶している石野を尻目にサニーに向かう

 だがその前に立ちはだかる者がいた


「ルーナちゃん!」


 イナミリアとエイシャの二柱

 強力な光の女神と力の女神の二柱はルーナの進撃を止め、爪による攻撃を弾き飛ばした


「クッ! お前らも私の邪魔をするって言うの?」


「そうだね、そうさせてもらうよ」


 いなみは光で作り出した剣を構える


「あなたには謝りたいことがいっぱいあるのに、そんな状況じゃ伝えたいことも伝えれないじゃない!」


 エイシャは光と闇を纏った剣を両手に持った


「ルーナちゃんごめん! 今から君を止めるけど、きっと元に戻して見せるから!」


 二柱による激しい攻撃が開始されたが、またもや煙のように揺らぐルーナ

 攻撃はただただ空を斬って当たることが無かった


「邪魔を! するな!」


 ルーナの力に二柱は別世界へと無理やり飛ばされてしまった


「魔物たち、もっともっと増えなさい!」


 ルーナは何もなかった空間から次から次へと魔物を召喚して立ちはだかる神々にあてていく

 その進撃を止めることのできる者はいなかった

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