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石野の異世界放浪記終

(俺は、一体何をしていたのだろうか)

(本当に守りたかった者も守れずただ彷徨っていただけ)

(何が神獣だ。娘一人も守れないようなひ弱な人間じゃないか)


「石野さん…。やっぱりルーナちゃんのことを」


「今はそっとしておくっちよ岸田」


 岸田とトコは石野の背中を見つめる

 今まで旅をして来たのはアマテラスからの、地球から別世界に散らばってしまった地球人たちを集めるという依頼を受けたためだったが、それはいつしか自分の目的にもなっていた

 石野はそんな彼らを召喚する力を持っていたが、今となってはその力も使うことはないだろうと考える

 一番救いたかった娘はもういない

 石野はもはや生きる目的すらも見失いかけていた


「石野さんは強い人です。きっと立ち直ってくれると信じています」


 そんな石野の様子を見ながら神獣レコは彼の心の強さを信じる。いつもその背中を見ていたからこそ仲間の神獣たちは全員が彼が立ち直れると確信していた

 そして神獣たちはそっと石野の持つ玉の中へと戻って行った


「ねね、岸田さん、もうすぐ地球に戻れるんだよね? 早くお父さんに会いたくなっちゃった」


 こんな中でもテンコは元気にはしゃいでいる

 この雰囲気を払拭しようと彼女もまた頑張っているのだった


「そうっすね、もう少しで着くはずっす。しかしそれにしてもっすよ。俺、この先どうしたらいいんすかね? こんな姿じゃ元の職場にも戻れないし、精霊になっちゃってるからまともな生活もできそうにないっすし」


 岸田は世界を渡ったことでその体を能力に見合ったものに変換されている

 それがたまたま精霊だったのだが、その体は精神生命体となっており、食事も睡眠も必要のない体に成っているうえ、絶世と言ってもいいほどの美女になっている

 そのためもし地球上でその姿を現せば騒がれることは間違いないだろう


「ま、その辺りはアマテラス様に聞いてみるしかないっすね」


 それぞれの帰る場所は決まった

 そんな中一人姿が見えないものがいる

 アナサという少女

 彼女は既に自分の元居た世界へと帰っていた

 彼女は人として育てられ、魔人として成長し、神力を得て神となった異色だが、その(じつ)レドと同じく異放者だということが分かっている

 しかし彼女は両親となってくれた双子女神の元へ帰ることを決めたのだった

 既に上位である死の女神として覚醒してはいたが、それでも双子女神への恩を忘れることなくその元へ戻り、生涯を双子女神の娘として過ごすことにしたのだ


「着いたっすよ。我らが故郷、地球っす」


 そこには見慣れた景色と匂いが広がり、懐かしさを覚えた

 石野と岸田はアマテラスの元へ、テンコは自分の育った神社へと戻る

 また会うことを誓い、それぞれ歩みを進めた


「石野さん…」


 肩を落としている石野に何と声をかければいいのか分からないが、岸田はそのままそっと石野の肩に手を置いて寄り添いながら歩いた

 岸田は既に心を決めている

 自分は女性としてこの先を生きていかなければならない。ならばこの気持ちはいつか伝えるべきなのだと

 だが今はその時ではない。きっと石野が立ち直り、共に歩める日が来る

 その時まで待てばいいのだ

 石野も岸田もすでに人ではなく、悠久の時を生きる存在。それならば時間はいくらでもある


「ほら石野さん、神社が見えてきたっすよ」


 その神社は人では見ることすら叶わない隠された場所、神域と呼ばれる場所にあった

 その鳥居をくぐるとレコたちは玉から飛び出して勢ぞろいし、境内にある本殿へと走る

 久しぶりの我が家に喜びはしゃいでいるようだ


「アマテラス様ぁあ!」


 その本殿ではすでにアマテラスが両手を広げて待っていた

 自分の神獣たちが帰って来たことで彼女も嬉しい表情をあらわにしている


「よく頑張ったな。わらわはお前たちを誇りに思うぞ」


 一人一人を大切に受け止め、抱え上げ、その健闘を称えてほめあげる

 アマテラスは本当にこの神獣たちを大切に思っているのがよく分かった


「あの、アマテラス様」


「おお、そうじゃった、お前たちのことはいつも見ていたぞ。戦いに参加して死したときは見れなんだがな。しかし、お前たちもよく頑張った。ほれ、こちへ来りゃれ」


 アマテラスは石野の胸に手を当てる


「お前に問う。これから完全に神獣となって私の元で生きるか、人として生涯を全うするか選ぶがよい。わらわはお前の意思を尊重する」


 石野はそれを聞いて少し考えたのちに答えた


「俺は、神獣として生きる道を選ばせてもらいます。人として生きても娘がいなくなった今虚しい。だが神獣としてアマテラス様の元で働けば考えなくて済みます」


 もはや何も考えたくないのか、石野はアマテラスの命令のみを聞いて暮らすことを考えていた


「ふむ、お前の気持ちは分かる。失ったものの大きさもな。だが自暴自棄は許さぬ。しばらくそこで頭を冷やせ。そして落ち着いたならもう一度問おうぞ」


 アマテラスは優しく石野を諭して神界へと神獣たちと共に帰っていった

 神獣たちが共について行った理由は、この戦いの功績から神へと覚醒させるためだ

 

 石野は考え自問自答を繰り返す

 そして岸田はそばでそれを見守り続けた

 トコもその様子を見て付け入る隙なしと考えたのか、何も言わず神界からその様子を見守る

 そんなさなか事は起こった

 神界も、世界も動かざるを得ない事態が…

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