力の女神
確かに私はあの時死んでいた
ルーナの姿が見え、その力の大きさに絶句した直後、私は首から下を焼かれて自分の体が一瞬で蒸発したのを確認してから、白目をむいて意識が消えた
そのはずだったのに…。私の魂は保護され、体を再生することができた
それもこれもンインス様という方が私達神々を含め、全ての世界の人々の魂を保護してくれていたおかげ
感謝してもしきれないほどの恩を私達は受けた
でも彼女はより良い世界の運営を私達に願っただけで帰ってしまわれた。まだまだ感謝を伝えきれていないのに
でも確かにそうね、私達は神。世界を導くのが私達の使命だもの
もう神どうしの確執もわだかまりもない
そして私はアズリア姉様、マキナ姉様と一緒に神界へと帰って来た
ラシュア兄様が温かく迎え入れてくれる
「ありがとうエイシャ、帰って来てくれたのですね」
「う、うん、ごめんなさい、ラシュア兄様。私は、兄様の様子が変だったと気づいていたのに、それを見ないふりをして、全部兄様のせいだって決めつけて…。本当は、大好きな兄様と争いたくなんてなかったのに」
「いいんですよエイシャ。私が操られたのは私の不徳。お前が気に病むことではないのです」
兄様は優しく私を撫でてくれた。昔と同じように。あの優しかったころの兄様で間違いないんだ。これからは私も、兄様の手伝いをしなくちゃ
それに、新たに私の妹たちも増えたみたいだし
私は新たにこの世界に迎えられた三柱の女神を見つける
その中の一人は私も知っている女神だった
「いなみ、さん? だったよね」
「君は…。そっか、無事戻れたんだね」
いなみさん、いえ、今は新米女神なんだから、いなみは私を見て微笑んでいる
光の女神、世界に光をもたらす女神で、恐らく世界を支えていく上で要になると思う
で、後ろの二柱は知らない顔ね
「そっちは、えっと」
「初めまして、“想像の女神”プリシラと、こっちは“連想の女神”ミーラです」
プリシラと名乗った子はかなり強い力を感じる
そのプリシラの後ろに隠れている小さな女神は、恐らくプリシラの眷属から女神に覚醒したのね。まだ少し人の気配が残ってて初々しい感じ
「よ、よろしくお願いします。ミーラと言います」
礼儀正しいその子はプリシラがよく教え込んでいるんだと思う
お互い自己紹介を済ませた後はラシュア兄様を交えつつ色々なことを話した
そこでわかったのが、プリシラはメシア姉様の元にいたということ
メシア姉様は私達が争っていた時にそれを悲しんで神界を離れた
どこに行ったのかも何をしているのかも不明だったけど、ここに来てプリシラのおかげで元気だと分かって私達は安心した
メシア姉様も裏から世界を見守ってくれるみたいで、たまにここに帰ってくるという言質ももらったし、早く会いたいものね
メシア姉様はアズリア姉様と同じくらい優しい女神。まさに救世の名にふさわしい女神
「そう、やはりあの子は自分を犠牲にしたのね…。初めてであった時からあの子は他者のために自分を投げだす子だった。本当は、あの子には幸せになってほしかったのに…」
あの子の幸せを奪ってしまった私の言えた義理じゃないけど、ルーナのおかげで私達は今ここにあると言ってもいい
それに、妹のサニーも、姉を殺すというのはどんなにつらかっただろう
私にはその気持ちが分かる。同じだったから
サニーも今ここに来ているらしいけど、まだ会えていない
かなり広いこの世界で一柱の神を探すのは困難だけど、そのうち会えると思う
その時は、サニーに謝罪を
許してもらえるかは別としても、誠心誠意謝らなければ
その結果殺されることになろうとも、それは私の犯した罪に対する当然の報いだから
「さて、僕はそろそろ行かなきゃ。 光の女神として頑張るよ」
「それなのですが、貴方に神としての名付けをしてもいいでしょうか?」
「名づけ?」
「私達のような神が名付けをすることで本当の神としての力を定着させることができます。これはプリシラにはすでに施されているようですね」
「はい、私の名前はメシアかあさ、メシア様につけてもらいました」
「それならミーラにも名前を付けてあげなさい。それでこの子も完全な女神となります」
「お姉ちゃん! つけて! お姉ちゃんがつけてくれる名前なら何でも嬉しい!」
というわけでいなみにはラシュア兄様が、ミーラにはプリシラが名付けをすることになった。とはいってもいなみの名前は既に決めていたみたいで、育ての親からもらった名前であるいなみというのを残したイナミリアという名前を付けてもらっていた
なんでもいなみの本当の母親、前光の女神がリュミリアという名前を考えていたから、その名前と合わせてイナミリアという名前にしたみたい
これにはいなみも喜んでいたわ
そしてミーラも元の名前を残しつつ、ミーラーナという名前に変わった
それによって二柱は完全な女神へと覚醒し、晴れて神々の末妹として迎え入れられた
あとはサニーの名前も名付ける必要があるけど、彼女の姿はラシュア兄様も見つけられていないのでひとまず置いておくことに
これからはラシュア兄様と一緒に、世界を正しく導くんだ