想像で創造する女神終
気づいたら何もかもが終わっていた
何もできないままルーナちゃんという一人の英雄が自らを犠牲にして全ての世界を救ったと聞いた
その妹であるサニーちゃんはルーナちゃんの体を乗っ取ったレドという男を消すために、大好きだったお姉ちゃんを殺すしかなかったと言っていた
今一番つらいのはサニーちゃんなんだと思う
それでも彼女はなるべく明るくふるまい、新米女神としての仕事をこなしている
私も同じ新米女神、見習わなくちゃ
それに私には眷属、いえもうこの子も新米女神としても道を歩いてる
ミーラ、この子を育てるという役目もある
「ミーラ、行きましょう神界へ。あなたのこともお披露目しなくちゃ」
実は私も神界には行ったことが無い
だって私は神界じゃなくて、小さな世界生まれだから
もともと下位世界を創っていた創造主二人から私は生まれた
その二人は兄妹にして夫婦、そして私の両親だった
たくさんの愛をくれたけど、私に全ての力を託して消滅してしまった
だから、上位の女神であるメシア様が私を受け入れてくれて、娘にしてくれたのがうれしかった
本当の両親の愛とメシア様の愛で私は上位の女神になるに至った
私はたくさんもらった愛を今ミーラに返している
愛の力は非常に強い
一の力を百にも千にも増幅させる力がある
サニーちゃんもそのおかげで強大な力を持ったレドに対抗出来たんだと思う
「お姉ちゃん、私なんかが神様のとこに行ってもいいのかな?神様ってすっごくえらい人たちでしょ?」
「えらい、のかな?ミーラ、分かってる?私もそうだし、あなたももう女神なのよ?」
「はえ?」
この子はよく分かってなかったのか…
確かに最初に言ってなかったけど、この子を眷属にしたときに少し違和感を感じてた
この子は私の神力を驚くほどすんなりと吸収したから
眷属にする程度ならそこまでの吸収率はない
にもかかわらずこの子は、私が注いだ全てをその身に宿してしまった
まるで女神になることが運命づけられていたみたいに
「まあ、大丈夫よミーラ、きっとみんなあなたのこと気に入るわ」
ミーラは元々奴隷だったけど、ちゃんと綺麗にしてれば驚くほど可愛い
成長はここで止まっちゃったから小さな女の子にしか見えないけど、女神としての神々しさは備わってる
威厳は、なさそうだけど、それでもこの神々しさで女神だと人間も分かるはず
これでわからないなら信仰心のない者か愚か者ね
二人でようやくたどり着いた神界では、今もたくさんの神々が忙しそうに走り回っていた
それはそうよ、だってつい先日までほとんどの世界は消され、神々も消えていたんだもの
ンインス様という神より上位に位置する方のおかげで何とかなったんだけど、もしンインス様がいなかったらと思うとぞっとしないわね
「む、来たか。おいラシュア、ガキどもが来たぞ」
「こらシンガ、言葉遣いに気をつけなさいといつも…。すいませんね新女神のプリシラ、ミーラ。君たちが来るのを待っていましたよ」
「お、お待たせして申し訳ございません!」
「ハッハ!そう緊張するな。こいつはそんな玉じゃねぇからリラックスしな」
「はぁ、いくら言っても治ってくれませんねこの愚弟は。しかしまあ、彼の言う通りです。私は神々のまとめ役という立場ではありますが、あなた達と対等な神の一人でしかありません。気を楽にして、おのれのやるべきことをやりなさい。歓迎しますよ、“想像の女神”プリシラ、“連想の女神”ミーラ」
ラシュア様は優しく微笑んでくれた
まるでメシア様のように優しい笑顔
「確かプリシラはメシアの娘となったのでしたね」
「は、はい!」
「その、メシアは、元気でしょうか?ずっと心配はしていたのですが、世界がこのありさまでしたから会いに行くこともできず」
「母様は、メシア様は元気です!世界のことを憂いて救世界をお創りになって、私や様々な神様、英雄、聖人に聖女、救世主や創造主をスカウトしていろんな世界を裏から支えているんです」
「そうですか、実にあの子らしい。昔から、優しい子でしたから」
ラシュア様は母様の昔の話をたくさん教えて下さったわ
今まで聞いたことのなかった母様のお話に聞き惚れて、時間がたつのも忘れてた
「おっと、少し長く語りすぎましたね。続きはまた今度にしましょうか」
いつの間にか語り手と観客のようになってしまっていた私達に手を振ってラシュア様は業務にお戻りになった
あの方が、神々のまとめ役。柔和な雰囲気に引き込まれるような優しい声
なるほど、確かにリーダーね
あの方の元で働けるなら、女神でよかったと思える
それに、ミーラもラシュア様のことが好きになったみたい
うっとりとした顔でラシュア様の背中を見ていた
これから始まるんだ
私達の神様としての第一歩が踏み出された
でもこのすぐ後にあのような事態が起こるとは、誰が思っただろう