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光りと従者終

 衝撃が僕の心に走った

 ルーナちゃんが自らを犠牲に世界を救った

 僕はその事実をみんなに伝えた

 むせび泣く人、号泣する神獣、顔を伏せる女神、そして膝をつく彼女の父親

 それぞれが彼女の消失を悲しんだ

 悲しんだ末に人々は彼女の意思を継ぐため動き始めた


「では僕は光の女神として、神界へ向かいます。 リゼラスさん、今までありがとうございました」


「何を言っているのですかいなみ様、私は貴女について行くに決まってるではないですか。 私はあなたの神聖騎士ですよ? その御身をお守りするのが私の役目」


「でも、いいの? 故郷に戻るんじゃ」


「いえいいのです、あそこには確かに数多くの思い出が詰まっていますが、私が今見るべきなのは過去よりも未来、この壊れた世界の復興、私も微力ながらお手伝いいたします」


「ありがとうリゼラスさん。 それじゃあ行こうか。 あ、でもその前に一つ言っておきたいことが」


「なんでしょうか?」


「僕とリゼラスさんは友達なんだから、敬語は止めて。 前みたいに対等に話してほしいんだ」


「分かりました! いや、分かった。 これからもよろしく頼む」


 僕はリゼラスさんの手を取ると神界に向けての扉を開いて狭間の世界へ渡った

 神界では神々のまとめ役である天の神、ラシュアさんが待っている

 僕の叔父に当たる人だ

 神界に行けば僕は正式に光りの女神として向かい入れられることになっていた

 その前に、合わなくちゃいけない人がいるんだ


 僕は扉を再び開いて狭間の世界から出た

 そこに広がるのは懐かしい光景

 僕が生まれ育った世界だ

 父さんに会いに行かなきゃ

 この世界はレドに一度破壊されてなくなっていた

 当然そのときに父さんも殺されたんだけど、ンインスさんが魂の保護をしてくれていたおかげで元通り戻ることができた

 僕は自分の家までの道をゆっくり歩きながら、そして景色を見ながら帰った

 僕の生まれ育った世界はこんなにも綺麗だったんだ

 様々な能力を持つ人間がいるこの世界にいた頃の僕は、ただの少年だった

 何もできない非力な人間、それが元の僕だ

 いや、少し違うかな? 性別が無かったんだから

 それが神の幼体だった僕

 まるで蝶の羽化のように僕は女神へと覚醒した

 

「よういなみ! 無事だったんだな!」


 物思いにふけっていると、後ろから聞き覚えのある声がした

 信じられないけど、その声はかつて僕を守って死んだ友達の声だった


「加藤、君…? え、だって、え? なんで?」


「ハハ、その顔を見たかった。 確かに俺はあの時死んだんだけどよ、どういうわけか気づいたら見たこともない場所にいてな、そこにいた女が俺の魂を保護したとか何とか、言われてよ」


「え、でも加藤君はこの世界が消えるより前に死んで」


「そこなんだよ。 俺もさ、見てたんだよその光景をよ。 したら一気に俺の近くに魂が集められて、その女、確かンインスってのが俺含めてすべての魂を保護してくれてよ、で、俺もなんか蘇った」


「ハハ、分からないよそんな説明じゃ」


 僕は思わず彼を抱きしめていた


「ちょ、いなみ、胸当たって」


「良かった。 よかったよ加藤君」


 涙で加藤君の服を濡らしてしまったけど、彼はバツの悪そうな顔で少し笑った


「聞いたぜいなみ、お前女神なんだってな。 これからその、神様としてやっていくんだよな?」


「う、うん、だからお別れを言いに来たんだ」


「そうか、まあ頑張れや、お前ならぜってぇいい神様になれるって。 お前、優しいからな」


 加藤君は僕に背を向けて空を仰いだ

 僕はかつて彼に壮絶ないじめを受けていた

 でもこの世界で起こった事件で僕は女神へと覚醒して、敵となって僕の前にたちはだかった加藤君と対峙した

 彼も色々抱えていて、僕に負けたことでその思いをすべて吐き出した

 だからこそ僕は彼を許して、良き友人になったんだ

 でも、彼は僕を守って死んでしまった

 またここで会えるなんて思わなかったけど、思わぬサプライズで僕は嬉しかった


「じゃあないなみ、この世界は俺たちに任せとけ、お前がいない分俺、頑張るからよ」


「うん、ありがとう加藤君」


 僕は加藤君の頬にそっとキスをすると恥ずかしさで走ってその場を後にした


「フフフ、いなみ、今のはなかなかよかったぞ、ほらあの少年、固まってしまっているではないか」


「う、うるさいなぁ、僕だって何であんなことしたのか分からないんだよ」


 ほんとに、なんでキスなんて…

 まあ気を取り直して家に帰ろう

 父さんの待つ家に


「いなみ!」


 家に帰った瞬間僕は父さんに抱きしめられた


「と、父さん、痛いよ」


「良かったいなみ、お前が無事で」


 この人は僕の本当のお父さんってわけじゃない

 育ての親なんだけど、母さん含め僕をずっと可愛がって愛してくれていた

 でも、母さんはもう…

 ルーナちゃんが初めてこの世界に来た時に母さんは悪人に殺された

 母さんもまた僕を守ったんんだ


「いなみ、こっちに来なさい」


 父さんは僕の手を引いていつも家族でご飯を食べていたリビングへと連れて来た

 その椅子には、僕の最愛の人が座っていたんだ


「いなみ!」


 その女性、母さんは、僕を抱きしめた


「か、母さん!?」


 母さんの死は目の前で確認している

 それでもここにいるってことはやっぱり


「ンインス様という方がね、私を甦らせてくださったの」


 そっか、ンインスさん、母さんも一緒に蘇らせてくれたんだ

 加藤君には悪いけど、彼の比じゃないくらいに僕は嬉しかった


「母さん、よかった、よかったよ」


 僕は泣きながら母さんの香りを胸いっぱいに吸い込んだ

 二人とも僕の大事な家族

 でも僕は二人と別れなくちゃならない

 神様である僕と人間である両親は生きる世界、時間が違うんだ

 それに、僕にはやるべきことがある

 光の女神として

 その決意を二人に告げると、二人は涙を流しながらもその決意を応援してくれた


「いなみ、いつでも帰っておいで。 ここはお前の帰る場所なんだから」


「ありがとう、父さん、母さん、僕、いくね」


 二人に見送られながら、僕はの扉を開いて神界への一歩を踏み出した

 少し落ち着いたら、父さんと母さんにまた会いに来よう

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