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5-21

 残滓レドは目の前に来た少女たちを見、うすら笑う


「まさかあの状況で生きていたなんてね! だが好都合、君も取り込んで一気に世界を壊してやる」


 少女の一人にそう言い放つと左手を突き出した


「まずは君の魂を消してやる。 こいつみたいに鬱陶しくなると困るからね」


 左手に力を集約、残滓レドは魂を破壊しつくす力をその少女に向かって放った


「こんなもの!」


 少女はその力を容易く弾くと残滓レドとの間合いを一気に詰めた


「破壊ってのはこうやるのよ! お姉ちゃんの体、返してもらうから!」


 少女が残滓レドの体に手を振れる

 そこから破壊の力を流し込んで残留思念である残滓レドを破壊しようとした

 だがその思念は内部に閉じ込められているルーナの魂と結びついてしまっていたため、思念を破壊しようとするとルーナの魂までもを破壊しかねない

 それに気づいた少女はためらった

 その一瞬の隙をついて残滓レドが動き、少女を弾き飛ばした


「サニーちゃん!」


 サニーと呼ばれた少女はその一撃で体の右半分を千切りとばされた

 臓物や脳がこぼれ出るが、サニーはすぐに体勢を立て直すと一瞬で体を再生させた


「死という理を破壊した私は殺せない。 魂を破壊されない限りね!」


 再生した体で残滓レド、自分の姉の体を殴りとばした


「お姉ちゃんを返せ!」


 サニーの攻撃が激しさを増し、残滓レドが自ら千切った右腕、その焼きつぶした傷口をえぐる

 その瞬間右腕が生え、残滓レドの左腕を抑え込んだ


「サニー! 私ごと殺して! 早く!」


 それは紛れもないサニーの姉であるルーナの言葉だった

 しかし理解はできてもサニーにはルーナを殺すことなどできるはずもなく、動きが止まった


「ためらわないで! 私が抑えれているうちに早く殺しなさい!」


 ルーナは必死にそう叫び、サニーに自分ごと残滓レドを破壊させようとした

 そうなれば当然ルーナの魂も壊れ、二度と復活することはできないだろう

 サニーはそれが分かっているからこそ攻撃をためらった


「サニー、お願い、お姉ちゃんからの、最後の、お願い、だか、ら」


 ルーナが抑えておくのも限界のようで、体ががたがたと震えていた

 それを見てサニーは何かを悟ったようにルーナにゆっくりと近づく


「お姉ちゃん、お姉ちゃん、助けれなくてごめんね…。 ずっと大好きだよ」


「うん、ありが、とう、ルニア…」


 ルーナが最後にサニーに向けて言った名前、それはサニーが人として生まれたときの名前

 サニアとルニア姉妹、それが彼女たち姉妹の本来の名前

 サニーは懐かしいその名前を姉に呼ばれ涙を流した

 

「絶対また会うから! お姉ちゃんを見つけ出すから!」


 サニーは力を込め、ルーナに放った

 

「くそ! こんな! たかがこの程度の姉妹ごときに!」


 残滓レドは最後の気力を振り絞ってルーナが操る右腕をへし折り、左手でサニーに力を放ったが、一瞬遅く残滓レドとルーナの宿る体は崩れ去った

 その魂と共に


「お姉ちゃん、お姉ちゃん…。 ごめんね、ごめんね」


 サニーは泣きに泣き、大声をあげた

 共にいた大勇者の桃はその胸を貸して泣くがままにさせた


 しばらくして落ち着いたサニーは姉のいない世界を見る


「サニーちゃん」


「私、お姉ちゃんの意思を継ぐわ。 神になって世界を守るの」


 その言葉に桃もうなずく

 

 残滓レドの脅威は去った

 そう思えたが、この時は誰も気づけてはいなかった

 残滓レドは完全に消えたのは間違いなかったが、ルーナ自体は魂の一部がまだ残っていた

 それは漂いながら自己の体を再生させていく

 その姿はルーナと同じ姿だったが、体色が黒く染まっていた


「あ、ああ」


 言葉を発せず、思考しているのかもわからないルーナらしき何か

 それはサニーの後を追うように巨人の世界から転移を始めた

 今までのすんなりとした転移ではなく、ゆっくりと辺りに黒い靄がかかり、それに包み込まれるようにして彼女は消えた

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