光りと従者5
メシアのおかげで想像の女神プリシラの居場所は判明している
偶然にもそこには仲間である石野もいるようで、合流することで決定した
プリシラの様子を見ることができる小型モニター、これはメシアがプリシラを心配して眺めていたモニターと同一のものであり、当然その行動も全て見ていた
何をしているのか、危ない目に遭っていないかなどの他に眷属を作り出したことも知られていた
それはメシアにとっても喜ばしいことだったようだ
「それにしても石野さんと合流してるのは好都合だね」
「そうだな、石野君と共にいる神獣たちならルーナを探し出すのに協力してくれることだろう」
石野の神獣の中には気配察知や探知に優れた者、見抜く目や調べる目を持った者がいる
彼女たちの力を借りればよりルーナ探しをしやすくなるだろうと考えたのだ
「ひとまず、合流しようよ。 向こうも何か情報を掴んでいるかもしれないしね」
いなみがプリシラや石野の気配を探り、転移を開始する
この救世界からお別れとなるといなみは少し寂しく思った
救世界は神々にとって非常に居心地の良い場所であり、それは当然いなみも同じことだった
いつかまた訪れようと思ういなみだが、この現状をどうにかしない限りはそれもかなわぬ夢だと理解している
新たな目的も増えたことでいなみとリゼラスは決意を固め、必ずルーナを救い、世界に平和を
それだけが今のいなみの願いであった
新たに来た世界
そこは近代的な建築物が立ち並び、平和そうな光景が広がっている世界だった
どことなく地球に似ているのだが、少し違った
人間があくせくと動き回っているように見えるのだが、その中には獣人やエルフ、ゴブリンやオークやオーガと言った魔族までいるようだ
彼らはそれぞれが平和に暮らし、多種族間でのカップルまで存在し、ハーフは当然のようにそこかしこにいた
「なんかずいぶんと平和な世界だね。 魔物の気配もあるけど、おおむね人々は互いを認め合ってるみたいだし、もしかして種族間での脅威よりも大きな脅威がこの世界にはあるってことなのかな?」
「ふーむ、そうだとしてもこのまとまり、一体感は素晴らしいと私は思うぞ。 他世界で種族同士で協力し合っている世界などなかなかないしな。 それも異種族カップルとはまたなんとも素敵ではないか」
いなみの予想はおおむねその通りで、この世界の魔物はまさしく人類が一丸となって手を取り合いながら戦わなければならないほど強力で危険だ
それこそほんの数体で街を滅ぼすことができるほどにだ
そのためこの世界では魔法よりも科学が発達した
魔法で倒せない魔物でも科学や兵器によってその攻略法が確立された為だ
近代的な風景もその一環であり、そこかしこに様々な会社制の武器が売られている武器屋、防具屋が建っている
「なるほどなるほど、魔物を近代兵器で倒す。 魔法が効かない種に対する対策ってことか。 うわ、これなんてリゼラスにいいんじゃない?」
数ある武器屋の一つに入るとそこは刀や剣を扱っている武器屋で、リゼラスに似合いそうな剣が飾ってあった
そのうちの一振り、まるで宝珠のような美しい石が剣の束にハマっており、そこから魔力を感じる
「それは魔力を流すことで様々なスキルを発動できる優れものですよ」
店主が剣を手に取ったリゼラスに説明する
「ほほお、それは便利だな」
「どうです? エルフの方なら扱いも簡単だと思いますよ? あ、それとこちらもご覧ください」
店主は奥から大剣を持ちだしてくる
その剣の束には先ほどよりも大きな宝珠がはまっており、より多くのスキルを発動できるようだ
「これは、素晴らしいな」
「そうでしょう、これほどのものはそこいらの店では扱ってませんよ。 当店自慢の逸品です」
そう言われるとリゼラスは増々その剣が欲しくなった
「ふーむ、だが持ち合わせが…」
リゼラスが袋から黄金塊を取り出す
「これしかないのだが」
あまりに大きな黄金に店主の口が開いたまま閉じなくなった
しばらくあんぐりと黄金を見ていたが、慌ててその黄金を手に取ってみてみた
「これは、間違いなく本物、それも純度も申し分ない。 しかしその剣をお買い上げいただいてもこの金塊とは釣り合いません、どうでしょうか、そちらのお嬢さんにも見繕いますよ?」
「うん、じゃあお願いするよ」
店主は再び奥に引っ込むと、今度は刀を持って出て来た
つばの部分に宝珠はなく、宝珠は見えないよう持ち手の中に内包されているらしい
これは素早く動けるいなみにちょうどいい武器で、彼女の手にもがっちりフィットする
一気に気に入ったためリゼラスの大剣とともに購入を決意した
武器屋を出るとすぐにプリシラたちの気配を探知し、彼女たちがいる場所へ走った