大世界の勇者7
ともかくあのルーナちゃんが自分の意思で世界の破壊なんて非道なことは絶対にするはずがない
そんなことは分かりきっているし、ルーナちゃんのことは信じてる
だからあの子がもし何かに操られているのだとしたら、絶対に助けたい
それで、今私達はとてつもなく大きな人間が闊歩する世界に来ているんだけど
この巨人たちに比べたら私達はアリくらいに見えてると思う
で、ここには何をしに来たのかというと、サニーちゃんがここでルーナちゃんの気配を感じとったから来たの
サニーちゃんでも探れなかった気配がここ最近になって弱弱しく感じられるようになってるみたい
「私がお姉ちゃんの気配を間違うはずないもの、きっとこの世界に何か手掛かりがあるはずよ」
サニーちゃんはすぐにこの世界を飛び回ってルーナちゃんを探し始めた
当然私もパリケルさんもそれについて行こうとするんだけど、サニーちゃんはあまりにも速くて、私でもようやく追いつけるほど
パリケルさんが四号ちゃんをフルパワーで稼働してもその速さに追いつけることはない
だから私はパリケルさんを背負ってサニーちゃんに追いつこうと必死で走った
確かに私達は速い、速いんだけど、この世界は巨人に合わせて作られているみたいだからすっごく広い
それこそ街一つ分が一つの世界くらい広いの
巨人たちはこちらに気づきもしないし、下手に動くと踏みつぶされそうで怖いし、なんてやりにく、探索しにくい世界なのかしら
サニーちゃんはスピードを緩めないから追いつくのに必死
「お姉ちゃん! お姉ちゃんどこなの!?」
こっちが待って欲しいと言っても耳に入ってないから止まってくれない
時たま出て来る巨大な虫、私達からすれば巨大なんだけど、巨人にとってはただの虫
それが私達を襲って来るのでサニーちゃんが一撃で粉々に
もはやバーサーカーのような動きでとにかく巨人の世界を駆け抜けた
でも初日の移動距離はなんと街すら出ていなかったから驚き
そりゃこれだけ広いんだもの…。 街からすら出ていなかったのは驚いたけど、それでも一つの街の半分くらいは見て回れたんじゃないかしら?
これは、気が遠くなりそうね
「はぁ、はぁ、休憩なんて、こんなことしてる場合じゃないのに。 はやく、お姉ちゃんを見つけなきゃいけないのに」
「サニー、焦るのもわかるけど、体が壊れては元も子もないぜな。 今日は休んで明日また探す方が効率がいいぜな」
「それも、そうね」
パリケルさんはサニーちゃんとの付き合いも長いだけあって、この子の扱い方を分かってるみたい
サニーちゃんは素直に言うことを聞いて、巨人がいなさそうな裏路地に入って簡易式のテントを張って休み始めた
サニーちゃんは今日だけでかなり疲れてる
パリケルさんが止めなかったらまた倒れるまでルーナちゃんを探していたかもしれない
この子は、お姉ちゃんであるルーナちゃんのためとなると自分のことを後回しにしがち
だから私達でよく気を付けてあげないとね
ちなみに異形の二人、メロさんとフィフィさんはパリケルさんが背負う四号ちゃんの収納の中に入ってる
体を簡単に組み替えれる二人は狭い空間でも体積や大きさを変えて入り込むことができるらしいわ
なんて便利な体なのかしら
そして翌日、再びルーナちゃんの気配を探ってみるサニーちゃん
いまだに微かに感じると言ってまたすぐに走り始めた
私達も慌ててその後を追いかける
この世界にルーナちゃんがいるとは限らない、でもこうしてしらみつぶしにでもルーナちゃんを探さなきゃ
あの子を救ってあげなきゃ
私如きじゃルーナちゃんを助けることはできないかもしれない
でも、サニーちゃんならきっとルーナちゃんを元の優しいお姉ちゃんに戻せる
だって二人は双子で、仲良しの姉妹だから
「はぁはぁ、もうちょっとで、もうちょっとで何か掴めそうなのに、霧がかかってるみたいに何かが邪魔を…。 邪魔…。 そうよ! 邪魔なのよこれが!」
サニーちゃんは突然立ち止まると、いきなり自分のお腹を自分で抉った
「ちょ! サニーちゃんなにして! あわわわわわお腹がぁ! 血が、血がいっぱい!」
グチャグチャとなぜかお腹を掻きまわして、そこから黒い球を取り出した
「そっか、これのせいだったのね。 やってくれたわね異放者。 まさかあの時の一瞬でこんなものを仕込んでいたなんて。 確かに私はあいつにとって天敵みたいなものだものね。 でもこれで、お姉ちゃんを正確に探せる!」
サニーちゃんがお腹を破って取り出した黒い球は異放者の体の一部らしくて、それがジャミングのような力を発揮してサニーちゃんの探知を阻害していたみたい
ルーナちゃんの気配をしっかり辿れるようになったサニーちゃんは、この世界で最もルーナちゃんの気配を強く感じる場所、そこへ私達を連れて一気に転移した
たどり着いたその場所、そこにいたのは、まぎれもなくルーナちゃんだった
でもやっぱり雰囲気が違うし、なぜか右腕が無い上にその傷口は焼きつぶされて痛々しい
そしてルーナちゃんから漂う気配、それはまるで私に力をくれたあの人のような気配だった