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 僕は溶けて消えた

 もはや残るは僕の目的のみを達そうとする意志だけだ

 それでいい、それで、いい


 レドさんの心は完全に消えている

 この残滓だけで動く体をどうにかしなくちゃ、全部消えちゃう

 でも私は閉じ込められて体を動かすことができない

 私の体なのにもう私のものじゃない

 サニーはどうしてるかな?

 リゼラスさんやいなみさん、パリケルさんは無事?

 サニーに会いたい。 あの子に会って私じゃない私を消してもらいたい

 ここまで死を望んだのは未だかつてなかった

 でも死ねば、きっとお父さんとお母さんに会える

 私達を生んでくれた両親に会えるから

 サニーには悪いけど、私は先に逝くの

 あっちで両親と一緒にサニーを待って、幸せに暮らしたい


「サニー」


 その時気づいた

 私は私の口から自分の言葉を発することができた


「くっ、やめろ! お前に体は渡さない!」


 レドさんの残滓がまた私を抑え込もうとする

 でも口を半分取り戻した私は、自分の意思で口を動かせるようになっていた

 このまま私が体の主導権を奪い返せれば


「大丈夫、私も一緒に」


 そう言ったのは私が産んだもう一人の私

 彼女と私は一体となって、残滓レドを抑え込み始めた


「こざかしいよ! 僕の意志は絶対だ! お前に抑え込まれるようなやわな意志じゃないんだ!」


 私の引き裂かれた心が元に戻ろうとも、体から口と右腕を取り返すのが精いっぱいで、その全てを奪うことはできなかった


「はぁ、はぁ、右腕を…。 だが世界を消すくらい片手でも出来るさ。 もう少しなんだ、邪魔をするな!}


 残滓レドは左手を今いる世界の知識ある者がいる場所に向ける


「消えろ!」

「させない!」


 世界を消そうとする左手を、私は右手で抑え込む

 右手が焼き切れ始めるけど、痛みなんてお構いなしに、消させないと抑え込む

 痛い、痛い、でも、あそこにいる人々が味わう痛みに比べたらこのくらい!

 右手はほとんど骨だけになって、それでも意識をしっかりとその右手に込めて、なんとか左手を抑え込むことに成功した


「くそ! 仕切り直しだ!」

「そんなこと許さない!」


 私は再生し始める右手で無理やり転移を開始した


「やめろ! この世界を消すんだ!」

「ここは私が守る! 貴方にはもう二度と世界は消させない!」


 転移の方が早く、私達は無理やりこの世界を離れて別の世界へ飛んだ


「邪魔をするな!」

「ああ!」


 残滓レドが私の操れる右腕を引きちぎってその傷口を再生できないよう焼いた

 痛くて涙が出るけど、そんなことで私の意識をもう閉じ込めさせはしない

 肩口を動かして無理やり引っ張って、今来た世界にあった岩に思いっきりこすりつけて焼けた傷口を削り取った

 痛さで失禁しながらも削れた傷口からズルリとまた右腕を生やした

 

「クソがぁあ! お前の、お前の全てを奪ってやる! お前の心を壊してやるぞ! まずは仲間からだ。 最後にお前の妹を目の前で! ゆっくりと苦しめて殺してやる! ほかならぬお前自身の手でな!」


「そんなことさせない! 残滓レド! あなたの思い通りになんかならない!」


 残滓レドはその場の世界を消すこともせずにただ怒りに我を忘れて動き始めた

 私は右手で制止するも残滓レドは歯ぎしりしながら私の仲間を探して世界を転移する


「お前の力を辿れば簡単に見つけれそうだな! 僕の中でその仲間が殺されていく様をゆっくりと見るがいいさ!」


 残滓レドが最初にやってきた世界は様々な能力者と呼ばれる人々がいる世界

 いなみさんと出会った世界だった


「ここは」


「お前の記憶を読み取ったぞ。 ここは光の女神が育った世界だな? ほら見ろ、あれがその女神の育ての親だろう」


 残滓レドが見る方向には、いなみさんのお父さんがいた


「何をする気なの!?」


「見ていなよ。 あの男がどうなるかをね」


 残滓レドが上空からいなみさんのお父さんに近づいた


「あ、れ? 君は確かいなみの」


 残滓レドが彼の首根っこを掴む


「ぐ、あ、何を」


「死ね」


 掴んでいた首を握りつぶし、そこから大量の血が吹き出て体を真っ赤に染め上げた

 なんて、ことを…


「はは、ははは、ほら見なよ! これは君のせいだよ。 君が僕を怒らせたからこうなったんだ」


「やめて! お願い、こんなことやめ、て…」


「いいややめないね。 もっともっと君の知っている者全てを殺しつくしてあげるよ。 どこまで心が持つかな?」


 残滓レドは本当のレドさんとは違う

 彼には慈悲があって、残滓レドは殺しを楽しんでいる

 この二人は同じでありながら全く違うんだ

 私の声なんて届くはずがない

 その後も残滓レドは狂気に満ちた笑いを振りまきながら、その世界の住人を片っ端から残忍に殺していった

 私の右手で止めようにもその都度腕を引きちぎられて、止めることができなかった

 もう、もうやめて、お願い

 残滓レドの奥底で私はただずっと泣いていた

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