大世界の勇者6
私達はとにかくいろいろな世界を回ってルーナちゃんを探したけど、痕跡すら掴むことができないでいた
ただ、微かにだけど最近になって気配がまた掴めるようになってきたからそれを辿ってみてる
あまりにも小さな気配だから正確な居場所までは分からないし、当然のように痕跡はないからほとんど辿れてないのと同じね
「ぐぬぬぬ、お姉ちゃんはどこよ! パリケル、何かわかったの!?」
「う、うーむ、アカシックレコードでも引っかからないからなあ。 だけど少しおかしなことが分かったぜな」
「おかしなことですか?」
「うむ、今まではアカシックレコードを通して様々な世界の情景を見れたんだけど、どうもここ最近複数の世界からの情報が全く入らなくなってしまったんだぜな。 本当に急にだったぜな…。 世界で何かが起こっているのは間違いないけど、何が起こっているかまでは掴めないんだぜな。 でももしその何かが起こった世界に渡れるなら、分かることがあるかもしれないぜな」
パリケルさんのアカシックレコードはこの大世界ででの過去、現在、未来が記録されているらしいんだけど、この大世界の住人ではない存在、異放者と呼ばれる人たちのことは何一つわからないみたい
つまり世界から情報が遮断されているということは、その異放者が関わっている可能性が高いとパリケルさんはふんだらしいわ
異放者が何かをしているのなら、そこにはルーナちゃんがいる可能性が高いってわけね
ルーナちゃんなら世界を救おうとするはずだからなんだとか
確かにあの子の性格ならそうなることは間違いないわね
「それならすぐそこに行くわよ!」
サニーちゃんが早速パリケルさんの言う世界へとゲートを繋ぐ
ゲートは開いたけど、その先は真っ暗で何も見えなかった
「あれ? おかしいわね、先が見えないなんて今までなかったのに」
サニーちゃんは警戒しながらゆっくりと第一歩を踏み出す
するとその踏み出した足が空を切っていなみさんがゲートの中に落ちて行ってしまった
「サニー!」
「サニーちゃん!」
私とパリケルさんが慌ててゲートの中を見ると、サニーちゃんは宙に浮いて戻って来た
「もう何よこれ! なんで地面が無いのよ!」
幸いにもサニーちゃんはすぐに宙に浮いたから落ちて行ってしまうことはなかったけど、私が最初に入っていたらと思うとぞっとするわね
「むむむ、ちょっと俺様がみて来るぜな」
パリケルさんは背負っていた四号ちゃんを降ろして抱きかかえられる形でゲートに入る
四号ちゃんからジェット機のような翼がカションと飛び出してゲートの中を一気に飛んで行ってしまった
「ふん、速くしなさいよね。 それと何かわかったらすぐに教えなさいよ!」
「あ、私達も行ってまいります。 パリケル様は私達の主ですので」
「うん、大丈夫? 飛べる?」
「はい、僕達は本来二人で一人です。 合体すればフィフィが翼になってくれるので」
「そっか、じゃぁパリケルをしっかり守ってあげてよ」
「もちろんです」
パリケルさんを守るためについて来ている二人の異形
アカシックレコードの守護者たる彼女たちは常にアカシックレコード本人であるパリケルさんを守り付き従っている
戦闘力もかなり高いからちょっとやそっとじゃ倒されないだろうけど、もしここに異放者がいたなら彼女たちじゃ太刀打ちできないかも
それどころかいなみさんでも無理だっていう話
じゃぁ私なら? とも思ったけど、今はまだ私の力じゃ役には立てないというのが正直な感想
だってまだこの力は目覚めたばかりだから、本当の意味で使えてはいない
まだまだ私は強くない
しばらくサニーちゃんと話しながら待っているとパリケルさんの声がした
「うう、なんてことだぜな、なんてことだぜな、俺様はこのような事態になるまで気づけていなかったんだぜな。 アカシックレコードの未来にこうなる前兆はあったというのに、俺様はそれを結びつけることができていなかったんだぜな」
「何かわかったんですか?」
「う、うむ、まず初めにこの空間についてだぜな」
パリケルさんは言葉に閊えながらも説明をはじめた
それによるとここは今まで世界があった場所で、今はただ無という状態が広がっているだけ
さらにこの無空間でアカシックレコードを起動させたところ、微かに過去の映像が読み取れたらしい
断片的な映像だったけど、ルーナちゃんが世界を消している映像だった
パリケルさんは本当にショックを受けたようで、すっかり落ち込んでる
でも、それにしてもだよ
あの優しくてお人好しでおせっかい焼きのルーナちゃんが何で世界を消しちゃったの?
パリケルさんでもそこまでは分からないみたいだけど、余計にルーナちゃんを早く見つけなきゃって気持ちにはなった
それに今のを聞いてサニーちゃんは信じられないような表情で黙り込んでしまっている
何か言葉をかけてあげたいけど、何て言えばいいのか分からなかった