ンインス
私も動かなきゃ。 そうしなきゃ一つの世界が、母様と父様が作り出した世界が亡くなってしまう
この世界には妹がいる。 彼女はこの世界に様々な小さな世界を作り出して数多くの生命を生み出していた
私はまだあの子に会った事はないけれど、これまで見た世界から彼女がいかにより良い世界作りに苦悩していたかが分かる
私には世界を作るような大それたことはできないけれど、何か役に立てることがあるかもしれない
弟のレド、母様が悲しい顔で教えてくれた彼の目的
私じゃ彼を止めることはできない
でも今彼が消した世界の住人、彼らの魂を保護して肉体を再生することなら、それしかできないけどそれなら役に立てる
エメ…。 母様と父様や私を含めた兄姉たちが目をかけた末妹。 世界を作り出す力を持った子
私達はいずれも種蒔く者である母様と父様の補佐として生み出された
でもその世代交代が行われる時期が来たと父様は行っていた
その新世代がエメ。 この世界全てを完成させた暁には彼女が新しい種蒔く者として選ばれるはずだった
なのにレドは…
弟のしでかしたことは姉である私達がけじめをつけなければ
「ンインス、準備ができましたよ。 本当にあなた達だけで行くのですか?」
「はい、姉様。 シュオとレボレバがいればどうにかなると思います。 それよりも姉様」
「ええ、分かっているわ。 レドを狂わせた何者かを、必ず探し出すと約束します」
パラネラ姉様は探すことに長けた方。 レドにも会った事があるそうなのだけど、その時のレドは私達と同じ志を持っていた
おかしくなったのはパラネラ姉様が二度目に会った時
姉様は前に会った時と変わらない様子を演じていたのを見破り、レドの心が壊れ始めているのを知った
しかしその時の彼女にはどうすることもできずあの悲劇が起こった
レドが妹であるレメを殺し、その力を奪った
許されないことを彼はした
私達は両親から同族殺しを固く禁じられ、手を取り合って世界をより良く導く使命を帯びている
それをレドは壊した
幸いレメは自ら魂を転生させることでエメとして蘇ることはできたけれど、それによってほとんどの力を失った
それなのに彼女は健気にも世界を作り続けた
作り出した生命同士が争うこともあったけど、それでも彼女は見守り、時には導き助言を与えてここまでの世界を作った
しかしまたしても彼女の努力をレドは打ち砕こうとしている
多くの世界を滅ぼし、生命を奪って
「シュオ、あなたには魂の保護をお願いするわ。 急いでね」
「分かりましたん姉様! シュオ行ってまいりますん!」
「それからレボレバ、あなたは世界崩壊から起こる影響を計測してその終息に務めなさい」
「ういっす。 りょうかーい」
シュオは魂をほぼ完全な形で保護できる力、“魂璧”を持っているのだけれど、彼女の力は時間の経ちすぎた魂では保護するのが難しくなる
たとえ保護できたとしても記憶が欠落したり、知能がなくなったりと影響が出てしまう。 そのため急いでもらったわ
そしてレボレバ。 彼の力は“力の安定”
どのような力でも彼ならば安定させて元通りの流れに戻したり、かためて消し去ることも増幅して放つことも思うまま
だからこの妹と弟を連れてきた
「さて、私は肉体の再生を」
私にはそれしかできない
でも魂があれば、そこから完全に再生させることができる。 それが私の力、“再生”だから
それしか、できないから、それだけは完全に、どんなことがあろうともやり遂げて見せる
決意してから私は新しく作られかけていた世界に入り込んだ
そこを少し改良してレドに見つからないよう工夫してからシュオの集めた魂を溜めていった
その後私は一人ずつ丁寧に肉体の再生を始めていき、経過を見守った
途中どうやったのかここに紛れ込んだどこかの世界の住人たちがいたけれども、彼らもこの事態を終わらせようと奮闘しているのが見受けられて、私はエールを送って送り出したわ
でも、その直後だった。 彼らを見送った直後だったの
あの子が、エメが消滅したとはっきりと感じたのは
エメは、レドにまた殺された…
私達は魂自体が本体。 消されれば、二度と、再生することはない
だからこそ両親は私達の争いを硬く禁じていたというのに
素手に一度力を使って転生していたエメはもう戻ってこない
私は人間のようにその場に泣き崩れて、自分の視界が真っ白に染まっていくのを感じた