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石野の異世界放浪記16-1

 大勇者、その気配を手繰ってひとまずとある世界にやって来たのだが、この世界には人間が一人もいなかった

 しかし動物は多く、まるで動物たちの楽園のようだった


「魔物みたいなものもいないので本当に動物だけみたいです。 わっちもこんな世界を見るのは初めてですよ」


 レコが探知した結果、知能ある生物はほとんどおらず、言葉を扱う生物に至っては皆無だった

 そんな中一匹の犬のような生き物がこちらに向かって走ってき、レコに飛びついた


「キャッ! 何ですか!? ワンちゃん?」


 レコはその犬にペロペロと嘗められてくすぐったがる

 犬はどうやらレコに懐いており、まるでいつも一緒にいたかのようだった


「このワンちゃん、なんでわっちにこんなに懐いているのでしょう?」


「犬のことは犬神に聞けばいいんじゃないっすか?」


「あ、そうですね」


 レコは石野に頼んでワコを召喚してもらった


「お呼びですワン!」


 飛び出してきたワコはさっそく犬の吠え声を聞き、その気持ちを読み取った


「あれ? おかしいですわん。 このこ、言葉をしゃべってるわん」


 通常動物は言葉ではなく鳴き声で気持ちを表すのだが、なぜかその犬はワンワンという吠え声であるにもかかわらず言葉として理解できたのだ


「ふむふむ、え!? そ、そうだったんですわん!? でもなぜそのような…。 なるほど、神々が…。 そんな、嘘ですよね? 嘘と言ってください! そんなこと、嘘です! 嘘ですよぉおお!」


 話しを聞いていたワコが語尾につけるわんという言葉も忘れ、大粒の涙を流しながら泣き叫び始めた


「わ、ワコ!? どうしたんですか? 一体何を聞いたのですか!?」


 ワコはしゃくりあげながらもゆっくりと犬の言っていた言葉を語りはじめた


「ヒック、じ、実はですわん、この方は神様、犬の神様オオカミ様です」


 確かに見た目は狼の子犬と言った感じで、首をかしげる姿が可愛らしい


「オオカミ様が言うには、神々のほぼすべてが亡くなったそうなのです。 あの、アマテラス様も、ぐすっ、ヒグゥ…」


 ワコの説明によると、オオカミを含むほとんどの戦える神々がレドとの戦いに参戦。 一瞬にして全滅させられた

 オオカミはその際力をごっそりと失いはしたが、ギリギリのところで子狼に化けて神の死体に隠れることで難を逃れた

 この時オオカミと同じように逃れた神々もいるらしく、オオカミと共にこの世界に逃れたのだそうだ


「なるほど、まさかあのアマテラス様まで失うとは…。 これから一体どうすれば…」


 石野が頭を抱える

 アマテラスは石野を神獣として見初めた神だ

 石野の今の体は神獣と化している。 その力を与えたのもアマテラスだ


「オオカミ様が少し力を分けて欲しいと言ってますわん」


 石野が分かったと自分の神力をオオカミに分け与える

 オオカミはその力を受けて段々と人型の姿に戻っていった


「なっ! テンコ! 早く服を!」


「はいはい~」


 石野が人型に戻ったオオカミを見て驚く

 その姿は犬耳の美少女だったのだ


「ふー、ありがとね! ちょっとだけ力、戻ったよ!」


 元気よく石野に飛びついて石野の顔を嘗め始めた


「ちょっと! 石野さんに何してるっすか!」


「離れるっち!」


 それを岸田とトコが慌てて引きはがして立たせた

 裸ではなくなったが、なぜかテンコが際どい服を着せたため、魅力的な太ももがあらわになっていた

 石野に懐いてじゃれようとするオオカミをとにかく止める二人


「おっと、こんなことしてる場合じゃないんだった。 他の神もよろしくしたいんだけど。 皆来てー!」


 そう言うとどこからともなく小さな動物たちが走って来た

 どの動物も子供の姿で、岸田とテンコはその愛らしさに悲鳴を上げていた


「えっと、全部で10柱ですか…。 岸田、アナサ、テンコ、すまないが手伝ってくれ」


 岸田とアナサは石野と共に神力を分け、テンコは裸の神々に服を着せていく流れ作業

 それにより神々は威風堂々としたたたずまいを取り戻した


「すまないよ、助かったよ。 僕は亀の神ミズハメノミコトだよ」


 カメの甲羅を背負った小学生くらいの男の子、あるいは女の子、どちらともとれる姿のミズハメは亀の神であり、水を守る水神でもある

 彼女もオオカミと同じように亀に化けて難を逃れていた


「君がアマテラスの言っていた石野君だね。 おかげで我らも本来の姿を取り戻せた。 礼を言う」


 石野に頭を下げたのは鳥の神カルラ、燃えるような翼が特徴的な力強い神様だ

 それぞれ神々が本来の力を取り戻したところで彼らは一斉に神界へと帰って行った

 無事の報告を伝えるためと、石野たちが出会ったンインスによって神々の魂も保護されているだろうということを教えるためだった


「じゃ、行くね。 本当にありがと、助けがいる時はいつでも私達を呼んで!」


 神々全員が石野と握手を交わして石野は彼女たちを召喚できるようになった

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