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石野の異世界放浪記15-1

 蟲毒を物にし、自らの心の傷を乗り越えた健一は石野と再び握手を交わして別れを告げる

 彼の神力、“封印”は強力な力だ。 必ず石野の助けになるとレコは言う


「ありがとう石野さん、レコさん。 あなたたちのおかげで胸のつかえが落ちましたよ。 こんな僕の力でよければいつでも使ってください」


 ゲートをくぐって別世界へと旅立つ石野を見送る健一

 だが彼には石野の仲間にいるうちの一人、少し気がかりな少女を見た

 その少女はテンコと同じ気配がするのだが、あまりにも憔悴しきっていた

 何と声をかけても反応せず、目の下にクマを浮かべて今にも倒れそうな少女

 アナサと言う名前以外彼女のことは何もわからなかったが、どこか放っておけない気がした


「あの子も、誰か大切な人を失ったのだろうか? 何もしてあげれないのが悔しいけど、僕にはどうすることもできない…。 変な気を起こさなければいいけど」


 レコの力によって次なる世界への道を歩く。 ゲートの先は光の道で、その奥にひときわ輝く光の扉が見えた


「何でしょう? 今までと勝手が違うような…。 石野さん、ちょっと待っててください。 見てきますので」


 レコが光りの扉に歩いて行くと、トコもそれについて行く


「あちきも行くっち。 レコだけに任せておくのは心配だっち」


 レコの後をトコが歩き、扉の前まで来るとその扉を詳しく調べ始めた


「何だっちこれ、変な力を感じるっち」


「うむむ、トコ、これをみて下さい」


「こ、これは!」


「なんだかわかるんですか?」


「さっぱりわからないっち」


「もうトコ! ふざけないで下さいよ!」


「ニヒヒ、ごめんだっち。 でもこの力の感じ、悪い感じはしないっちね。 なんだか暖かいっち」


「確かに気持ちのいい力です。 わっちもこんな力は初めて感じましたよ」


 口々に話し合うレコとトコに追いついた石野はトコの頭を軽く撫でる


「何かわかったか?」


「何もわからないってことは分かったっち。 でもこれは悪いものじゃないっちね。 きっと扉を開けば分かるっち」


 トコの言葉に石野はうなずくと、扉に手を当てた


「気を付けてくださいっすよ石野さん。 レコちゃんたちにわからないってことは罠の可能性もあるっすよ」


 確かにそうかとレコとトコも見合ってうなずき、そこからトコの眼でしっかりと見はりながらレコが力の流れを感じ、石野がゆっくりと扉を開いた

 扉の隙間からはまばゆい光が漏れ出し、目を開けていられないほどの光に石野たちは顔をしかめた


「眩しい! あ、そうだ!」


 テンコは“神衣”によってサングラスを作り出し、全員にかけさせた

 何故か石野だけチンピラのような衣装まで着せられていたが、それでもこの眩しさは軽減できた

 中を見るとそこには数えるのも億劫になるほどのたくさんの種族、動物、植物などが浮かんでいた

 人族やエルフ、獣人、精霊、妖精、中には神や黒族、闇までもがいるのが見えた


「なんだこれは!? なぜこんな場所に…。 ここは一体何なんだ?」


 石野は驚きつつも宙に浮かぶ人々を見て回る。 その誰もが意識がなく、眠っているかのようだった


「これは、魂だっち。 肉体を失った魂のみがここに漂っているんだっち」


 この場にあるのは、どこからか流れてきた魂だということが分かった

 それで石野は理解する。 この場にある魂は、ルーナが消し去った世界の者だということが

 さらには上位の神々の姿もあった。 その中に、ミナキらしき魂が浮かんでいるのを見つける


「アナサちゃん! これ見て!」


 テンコが慌ててしゃがんでいたアナサを連れてきて見せる


「ミ、ナ、キ?」


 しばらく話していなかったためか、やっとの思いで声を絞り出すアナサ。 その目はミナキの魂に釘付けになっていた

 そしてミナキの魂に触れ、縋り付いて泣き始めた

 ミナキの魂はそんな状況でも目を覚ますことなくただ宙に浮かんでいた


「アナサ、その魂はどうやら保護されているみたいだっち。 それだけじゃないっち。 ここにある魂は全て何者かに保護されているんだっち」


 どの魂にもまるでカバーのような結界が張られており、肉体のない魂が霧散しないように処理されている

 誰かが丁寧に保護したのか、どの魂も非常にきれいな状態で保存されていた


「魂が消えないように誰かが保護してくれているってことですね。 輪廻の輪に帰らないように…。 まるで復活させようとしているみたいです。 わっちもこんなの初めて見ました」


 その復活という言葉にアナサがいち早く反応した


「復活、できる、の?」


「可能性はあるというだけですが、復活させるのでない限り、ここまで綺麗に保存する意味などないでしょうから」


 実際には魂を使う術は他にもあるのだが、レコはそれについては黙っていることにした

 何よりこの場所に邪気などは一切なく、ここにある魂に危害が加わることはないと断定できたからだ

 魂を見て回っていると、急にこの世界に何か力ある者が迫ってくる気配を全員が感じた


「レコ、トコ! この力は一体何なんだ!?」


「分からないです。 けど、やっぱり邪気は感じないです!」


 世界が揺れ、この場所を守る何かが顕現し始めた

 それはどこか懐かしさを感じるような気配を纏い、美しい女性の姿をしていた

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