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大世界の勇者4

 サニーちゃんとパリケルさんについてルーナちゃんを探し続けるけど、急に気配が全く辿れなくなったみたい

 あれだけ大きかったルーナちゃんの気配は今や糸のようにか細くて、姉妹であるサニーちゃんが見つけることができないほどになっていた

 今にも泣きだしそうなサニーちゃんは、それでも必死にルーナちゃんを探し続けている

 手当たり次第に世界を回って、人に尋ね、痕跡を探し、自らの足で駆け回った

 いくら力の強いサニーちゃんでも、もう限界に近づいているのがありありとわかった


「サニーちゃん、少し休もう」


「うるさい! 私に休憩なんて必要ないの! お姉ちゃんを見つけるまで休んでられな…」


 急にサニーちゃんが倒れた

 多分一か月以上飲まず食わず、一睡もしていない生活が続いたからだと思う

 通常の人間ならとっくに死んでいるような過酷な状況にもかかわらず、ここまでよく持ちこたえた方だよ

 私はパリケルさんと一緒に倒れたサニーちゃんを抱えて、四号ちゃんが変形した移動式ベッドに寝かせる

 このベッドは屋根や壁まで取り付けられた簡易式のカプセルホテルのようになっている

 布団はフカフカだからサニーちゃんもゆっくり休めるはず


「しかし厄介なことになったぜな。 俺様のアカシックレコードはルーナの状況を異放者による乗っ取りだと見ているぜな。 今まではルーナの意識が残っていたから追えていたにすぎないぜな。 だが異放者に意識が完全に乗っ取られた今、この世界の者じゃない異放者を負うことは難しいぜな」


 パリケルの言うように、アカシックレコードには限界があった

 この大世界で起きる全てのことが記録されるアカシックレコードだが、それは自分のいる大世界のみに絞られる

 もともと世界を作り出している一族の異放者レドのことに関しては、靄がかかり、情報を全く読み取れなかった


「いずれにしてもここにはいないぜな。 取り合えずは仲間と合流してみるぜな。 いなみとリゼラスが別世界で強力な力を持つ仲間を集めているはずだぜな」


 ひとまずの目標を定め、気絶して眠るサニーを抱えていなみのいる世界を目指すことにした

 だがその直後にパリケルのアカシックレコードにとんでもない情報が舞い込んだ

 神々が大軍団を率いてたった一人の何者かを取り囲み、挑んだ結果、一瞬で神々が消えたというのだ

 何者かの正体は掴めなかったが、十中八九異放者に乗っ取られたルーナに間違いなかった

 神々のほぼすべてがその戦いに導入されていたため、のこる神はほんの十数柱のみとなってしまった


「まさか、神々の総力とも言っていいほどの力を、全く意に介していないなんて…。 俺様はとんでもない計算違いをしているのかもしれない」


「どういうことなんですか?」


 私はパリケルさんの恐怖におののいているような顔を見て、体に震えが走るのを感じる


「異放者の仲間をルーナの父親、石野が連れていると言ったのは覚えているかぜな?」


「は、はい」


 確か石野さんって人が他大世界の住人、異放者の少女たち、彼女達を戦力に加えればそのルーナちゃんを乗っ取っている異放者に勝てるってパリケルさんはふんでいた

 でも計算違いってことは…。 それはつまり、私達は勝てないってことになる


「推測するに、奴は、ルーナの力を取り込んで数段力をつけているんだと思うぜな。 ルーナはこの世界ではイレギュラーもイレギュラー。 何せあの子は、大神が作り、神々の力を注がれ、原初に愛され、およそこの世界にある力という力を吸収しているんだぜな」


 そう、それがルーナとサニーがレドに狙われた理由でもあった

 彼女は大神によって生み出された時に神々の力が順応するよう手が加えられていた

 つまり、どんな力でも彼女は受け入れることができるのだ

 そして力ある者たちの力を吸収し続けた結果、ルーナは神々を超え、原初と同程度の力を持つに至った

 まさにレドが奪うにふさわしい器となったのだった


「く、一体どうすればいい…。 どうすれば…」


 パリケルさんは頭を抱えてうずくまってしまった

 私じゃ力になれないことなんて理解している。 でも、あきらめたくはない

 私に居場所をくれた双子女神様、友人たち、私を慕ってくれたルーナちゃん…。

 みんなを助けたいと心の底から思える。 今までの自分と違うんだ

 そう、私は勇者だから。 勇気を、みんなに!


 その時私の体がまばゆく光り始めた


「ななな何だぜな! 急にどうしたんだぜな!」


 何だろう、この心地よくてフワフワした感覚は

 あったかくて気持ちいい

 

「なになに!? どうしたのよこれ!」


 サニーちゃんまで起きだしてきて、さらに私達の後方を守っていたフィフィさんとメロさんも驚きながら走って来た


「分かんないです。 でもなんだか、すっごく気持ちよくて、力が底からどんどん溢れてくる感じが」


 パリケルさんが解析をし始めている。 目の前にモニターとキーボードのようなものが出現していて、こちらのデータを取っているみたい


「おい桃! お前一体、何があった」


「へ?」


「異常だぜな! お前から異放者の! この世界じゃない力があふれ出てるぜな!」


 分からない。 でも、この力はあの人が、あの女の人がくれたものなんだと思う

 だって、あの人と同じ優しい気配がしたから

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