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 中心部で王都軍の悲鳴が上がった

 体調20メートルはあろうアークタイタンというAランクの巨人型魔物が迫ってきていたのだ

 アークタイタンは味方すら踏みつぶしながら進撃してくる

 その巨人の前にAランクパーティ数組が徒党を組んで立ちはだかった

 一人でAランクまで上り詰めた“槍聖”ジェイン・ドルフェイン

 Sランク入り間近と言われている全員が大きな槌を持った“大地の撃鉄”という4人パーティ

 強力な魔剣と聖剣を持つ二刀流の男をリーダーとした3人パーティの“天狼星”

 

 三組は即座に連携を取ると、“大地の撃鉄”が巨人の足元を崩す

 地面に脚を取られ、体勢を大きく崩した巨人の脇腹を“天狼星”リーダーのインが斬りつける

 魔剣オンドラにより腐食した肉体をさらに聖剣揺光星によってえぐり取る

 深く脇腹をえぐられた巨人は膝をついた

 その膝を駆け上がる“槍聖”ジェインは大きく飛び上がり、聖槍ノラヴァータを投擲した

 命中した相手を必ず地面に縫い付ける聖槍は巨人の背中から腹を突き破り地面に突き刺さった

 まだ生きてはいるものの動くことができない

 そこを“大地の撃鉄”リーダーのゴーンがマジックアイテム閻魔のジャッジガベルで頭を穿った

 この槌の効果は大破壊

 巨人の頭部はスイカのように砕け散った


 巨人を倒したことで周囲の士気は高まる


「くっ、ダメじゃん、ダメダメじゃん~」


 魔人は悔しそうに地団駄を踏む


「ほら、お前も行けっての!」


 横に控えさせていた眼玉が体中にある巨人アルゴスに命じる

 先の巨人ほど大きくはないものの、知能面は優れているため無駄に進撃したりはしない

 鎧は体の急所を隠す程度に着ており、巨大な剣を背に背負っている

 目はぎょろぎょろと動き、その目が襲い掛かる王都の兵や冒険者たちを捕らえ、見つめられた者は動けなくなった

 そこをアルゴスの剣が襲い、ある者は胴を叩き切られ、またある者は捕まれ握りつぶされた


「さっきのデカブツとは違うぞ!注意しろ!」


 ジェインがそう叫んで注意を促した

 しかしアルゴスは強く、犠牲者は積み重なっていった


「ニャハハハ!いいねいいね、もっともっと潰しちゃって~。死体は全部後でミートパイにしよう!」


 魔人アナサは爆笑と言っていいほど笑っている

 仮面で隠れて分からないが満面の笑みを浮かべているのだろう

 それこそ邪悪そのものの顔で…


 巨大な剣がいよいよ桃に迫り始めた


「私が止めます!」


 桃は盾を構えるとその力をさらに解放した

 兵たちに振り下ろされる巨剣を受け止める

 衝撃が突き抜け、足が地面にめり込む

 桃は力の限りその剣を押し返すと、神から与えられた大剣でアルゴスの腕を切り落とした

 アルゴスは巨剣を取り落とす

 

「いまよ!一斉攻撃お願い!」


 ひるんだアルゴスに魔導士たちが魔法を当てていく

 目をつぶしていくことでアルゴスの動きを封じた

 すべての目をつぶされ身動きのできなくなったアルゴスを桃が一刀両断し、無事撃破することができた


「キィイイイイ!!何なのよもう!!あれって勇者?絶対殺す!!」


 アルゴスを倒されたことでとうとう魔人アナサが前線に出てきた

 軽くジャンプして桃の前に降り立つ

 その衝撃で周囲の兵は吹き飛び、クレーターができるほどだった

 

「あんたはあたしが殺す!ぐっちゃぐちゃにして喰ってやる!」


 アナサが仮面を外すと下から少女の顔が出てきた

 ぎざぎざの牙に狂気に満ちた笑顔

 目は赤く光り、口からは涎をたらしている


「ジュルリ、ねぇ、あんたはどんな味なの?」


 そう聞かれ桃は少したじろいだ

 こいつは、人を喰う。そう認識した

 桃は大剣をアナサに向ける


「あんたはここで止める。絶対に!」


 桃は強化されたスピードで一瞬のうちにアナサの後ろに回り込み、大剣を振り下ろした

 だが後ろを見ることもせずアナサは剣撃を受け止めた

 大剣を掴まれ振りほどこうとするがびくともしない


「ニャハァ~、つーかまーえた!」


 アナサは大剣ごと桃を持ち上げ、地面に叩きつけた


「カフッ!」


 背中を思いっきり地面に打ち付け息ができない

 それでも立ち上がる

 これ以上犠牲者を出さないために


 ゆっくり近づくアナサに何かが投擲され、肩口を少し抉った

 それはジェインの聖槍だった


「勇者殿!下がってください!」


 ジェインに怒りをあらわにしたアナサが襲い掛かる

 しかしすでに手元に戻ってきていた槍でアナサの攻撃をさばく

 高速で繰り出される鋭い爪の一撃一撃を見事に槍で受けている

 ジェインは個対個の対決ならばSランクにも引けを取らない


「氷牙!」


 槍術による特殊攻撃でアナサは爪を凍らされる

 

「つめた!あたしの爪に何すんのよ!」


 さらに怒るアナサ

 牙を剥き出しにジェインを襲う

 実力は拮抗していた


 アナサの鋭い爪がジェインの皮膚を切り裂き、ジェインの流れるような槍さばきがアナサの手足を傷つけた


 数分は続いたであろうこの攻防にもついに決着の時が来た

 ガクッと体勢を崩すジェイン

 

「効いてきた効いてきた」


 ニタリと笑うアナサ


「あたしの爪には麻痺毒があんのよ。お馬鹿さん」


「く、ぬかったか…」


 アナサが拳に力を溜める

 膨大な量の力がその拳に集約され、ジェインの顔面に抉りこまれる

 

 ジェインは死を覚悟した

 が、そうはならなかった

 間一髪のところで桃が投げ込み地面に突き刺さった盾がその攻撃を防いでいた 


 盾の効果によって麻痺と傷が回復するジェイン


「勇者殿!助かりました!」


 再び槍を手にすると油断したアナサの腹部を刺し貫いた


「グブゥ!」


 腹から真っ黒な血を流し、口からも黒い血を吹き出す


「ニャァ、ダメダメ、グブッ、やーめた」


 自分で槍を引き抜くと、少し後ろに飛びのいた

 

「お前たち、時間稼ぎしておきなさい!」


 アナサは腹の傷口を抑えて大きく飛び上がると戦線から離脱

 あっという間に逃げてしまった


 指揮していた魔人が逃げたためか、魔物たちは連携が取れず、次々と撃破され、王都軍と冒険者による連合軍は辛くも勝利した


 多数の犠牲を出したものの、王都は無事守られたのだ

 

 その後、魔人の足取りは全くつかめていない

 煙のように消えてしまった


 この勝利により、“槍聖”ジェイクと“大地の撃鉄”はSランクに昇格、桃たちもBランクへと昇格を果たした


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