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石野の異世界放浪記13-4

 エンドという魔物はいるだけで周囲の生命力を奪い、その瘴気に触れた生物はたちまち生命力を吸い取られて砂となって消えた

 そんな中一人だけその瘴気に耐え、エンドに立ち向かう少年がいた

 彼の名はカルラ・ストラーナ

 出身はインドで、幼いころからカラリパヤットやシラッドと言った武術を習い、自分の中の正義をしっかりと持った少年だった

 そんなカルラは聖剣ラクシューミャという曲刀を握りしめて恐るべき速さでエンドを斬りつけている

 まるで猫を思わせるようなその動きは幾度となくエンドの体を切り裂くが、ダメージは少ないようだ


「く、ここまでとは…。 僕の力が通じないなんて参ったね」


 それでも彼は一切攻撃の手を抜くことなくその速度をどんどん増していった

 彼の力は“速度”。 攻撃が当たればあたるほどその速度を増していく

 彼の速さは今や音速を超え、エンドの動きでは捕らえることができない

 だがカルラも全くダメージを与えることができていない


「スピードこそが何者にも勝る力だと思っていたのに、ここまで力の差があると何もできないのか」


 カルラは理解し、攻撃の手を止めてエンドから距離を取った

 

「いいさ、僕にだってとっておきってのがあるんだ」


 カルラはラクシューミャを地面に突き刺すと拳を打ち鳴らして力を込めた


「仙力解放…。 神に近しいこの力、使いこなすのは難しいけど、さて、どうなるかね」


 カルラの体には仙力がみなぎり、先ほどとは比べ物にならないほどの力を得た

 彼は今人間という種族から進化を果たしたのだ

 人間が行きつく先は仙人。 さらにその先には神仙というものがある

 カルラは人間という器から仙人へと至り、殻を破って圧倒的な力を手に入れた

 いつでも進化することはできたが、体に力がなじむのを待っていたのだ

 まだ不安は残るが、これならばエンドを倒せるとカルラは確信していた


「エンド、決着をつけようか」


 カルラは足を地面に踏み込み、独特の呼吸法で一歩ずつ前進する

 踏み込みが強いほどその技の威力が増す歩行法でエンドの目前へと迫ると、渾身の力で拳を撃ち込んだ

 エンドの足を撃ち抜くと、そこからカルラの仙力が流れ込んでいき、右足を完全に破壊した

 悲鳴を上げるエンドは片膝をついてカルラを睨み、手を振り下ろした

 だがその手はたやすくカルラに止められ、さらにカウンターの拳を叩き込まれた


「ふぅ、やっぱり制御が大変だ。 でもコツは掴んだぞ」


 拳を打ち上げて行き、カルラの右手を肩口まで破壊し、そのまま飛び上がってエンドの顔面を蹴り込んだ

 グシャリという感触とともにエンドの頭がちぎれ飛んで噴水のように血が噴き出す


「もう、人間には戻れないんだね…。 まぁいいさ、僕はもっと高みを目指す。 神仙へ、そうなればもっと多くの人を守れるんだ」


 砂となって消えていくエンドの死体を一瞥し、その死体に頭を下げた


「君のおかげで僕は殻を破れた。 その強さに感謝と敬意を」


 カルラは自身の纏った仙力を内側へ収束させ、深呼吸をした


「さて、戻るかな」


 カルラは地面に刺していた神剣ラクシューミャを引き抜いて腰に帯刀すると歩き出した

 そこにとてつもない速さで男が乗った龍が現れる


「ふむ、お前がそうだな? 転移者よ」


 カルラは眉をひそめ、腰からラクシューミャを抜き放って龍に向けた


「一難去ってまた一難ってこういうことを言うんだよね?」


「まてまて、俺たちは敵じゃない。 俺は石野。 日本人だ」


 カルラはそれを聞いて剣を収めた


「まさか僕以外にもこの世界に来た人がいたなんて」


 そこから石野は今までの経緯や、転移者について全てを語った

 その話を興味深く聞いていたカルラは首を横に振った


「何の否定なんだそれは」


 人型になったリュコが首をかしげてカルラに問う


「あ、ああ、インドでは首を横に振るのが肯定なんだよ。 否定に見えた? 少し斜めに振るからまどろっこしいよね」


 リュコはなるほどと納得して話に戻った

 

「では君は帰らなくていいと言うんだね?」


「うん、僕はもう人間じゃないし、それにこの世界も気に入ってるんだ。 どうせ元の世界に家族もいないし、ここで気楽に生活させてもらうよ」


 カルラはこの世界に転移させられる数日前、両親を事故で亡くしていた

 兄弟はいたが、生まれてすぐに死んでしまっている

 祖父母もすでに他界しており、天涯孤独の身だった


「あ、でも君たち、力ある人を集めてるって言ってたね。 僕でいいなら力になりたい。 この世界や地球だけじゃなくて、いろんな世界の危機なんだろう? いつでも呼び出してよ」


 カルラは手を石野に差し出した

 固い握手を交わすと、カルラの体が光り、石野の力と共鳴していつでも召喚が可能となった


「これで僕は君の仲間になれたってことなのかな?」


 カルラは満足そうに笑い、岸田達とも握手を交わした


「じゃ、僕は街に戻るよ。 またね、石野」


 仙人カルラを新たな仲間として迎え、石野はすぐに次の世界へと飛んだ

 世界のためにも急ぎ仲間を集める必要がある

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