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石野の異世界放浪記13-3

 ミナキを探していた二人だが、どこにもその痕跡がない

 一旦石野の元へ戻ることにし、リコの背に乗って駆けだした


「ミナキ、一体どこに行っちゃったの?」


 心配に胸が押しつぶされそうなアナサを岸田が支える

 数分ほどで石野の元へ戻って来た三人はいなくなったミナキをどう探すか話し合った


「私の模倣の力じゃあんまり探知できないわ。 所詮劣化版だもの。 ミナキの力ならよく分かってるし、気配さえつかめればすぐに見つけられるのに」


「何者かに攫われた、あるいはもう殺られた、という可能性は?」


 石野にそう言われ、アナサは少しムッとしながら首を横に振る


「あの子の力、剛腕は、その有無を言わせなさにあるの。 ほとんど何でもできるって言っていいわ。 それこそ星一つを簡単に消したり、死んですぐの者を甦らせたり。 要するに究極のわがままが通る力ね。 あの子に勝てる奴なんていない、はずよ」


「そうとも言い切れないっち。 異放者ならこの世界の力が通用しない奴がいるっち」


「また、異放者…。 ミナキは私もそうなんじゃないかって言ってたわ」


 その言葉に石野たちは驚いた

 石野は今まで異放者に二人出会っている

 今いるテンコ、そしてとある世界にいる燐奈だ

 この二人は死ぬことがなく、死強という死ぬごとに強くなるという力を持っていた

 それに加えて転移した際に力を得ている

 二人とも強力な力だった


「じゃ、じゃぁあなたもなの!?」


「そうみたいなんですよ。 私は、人間だって思ってましたが…。 でもいいんです。 帰ったらお父さんがいますし」


「私はね、神様として迎えてくれるってミナキが言ってたの。 あの子が私の家族になってくれるって。 それにね、女神様が二人もお母さんになってくれるって」


 二人は異放者としてのそれぞれの境遇に盛り上がり始め、二人は一気に距離を詰めた

 そんななか、突然石野の前に石野のよく知る顔の少女が現れた

 何の前触れもなく、気配もなく、余韻もなく唐突に


「ルーナ!」


 石野が声をかけると少女は首を傾げた


「石野さん、なんだか様子がおかしいっす」


 岸田の指摘通り、石野の養子となっていたルーナは石野を見ても笑うことなく、ただ無表情にこちらを見つめていた

 だが突如その表情が崩れ、苦しみ始める


「ルーナ! 大丈夫か? 一体どうしたって言うんだ!」


 ルーナの姿は今までと違い、もともとあった翼や角は異様にねじ曲がり、白銀の髪は今では白と黒の半々となっている

 長い尾には黒い炎のようなものがまとわりつき、目は瞳が赤く、白目の部分が真っ黒に染まっていた


「消さなきゃ」


 ルーナらしき少女は手を地面にかざす

 あまりにも強すぎる力を出したため、周囲の空間が歪み始めた


「まずいっち、世界の崩壊が始まってるっち!」


 トコが叫び、リュコは慌てて次元の扉を開いた


「早く飛び込め! 巻き込まれたら魂すらのこらんぞ!」


 石野はテンコを抱え、岸田の首根っこを掴んで扉に飛び込むとリュコはすぐに扉を閉じた


「ルーナ、どうしたって言うんだ」


 石野はこの訳の分からない状況に頭を抱える

 彼女に何があったのかは分からないが、苦悶の表情を浮かべた彼女からは苦しみが伝わって来た

 石野はすぐにルーナを救うことを決め、それに向けて動き始める

 一方のアナサは、親友のミナキがルーナに消されたことを理解し、泣いていた

 三人でなだめるが、アナサの悲しみは癒えることがなかった


「もう、ミナキに会えない。 魂ごと消えちゃったんだもの。 あの時私がついて行ってれば」


 後悔があとからあとから口をついて出て来る

 そうでもしないとアナサは心が壊れそうになっていた


「見えてきたぞ、次の世界だ」


 視界いっぱいに光が差し込み、次なる世界へとたどり着いたのだが、目の前にあったのは人々が逃げ惑う猛火だった

 街は燃え、ところどころに死体が転がっている


「すごい死臭っすね…」


 ルーナのことを考えていた石野は、今は人々を助けるのが先決だと考え、火を消し始めた

 リュコの神力で水を召喚し、空から雨のように振りまいて何とか鎮火することができた


「ふぅ、我は疲れたから少し休むぞ」


「ああ、ありがとうリュコ」


 玉に戻ったリュコの代わりにトコが飛び出し、今のこの状況を眼で分析してくれた


「うぬぅ、これは、魔物に襲われたみたいだっちね。 しかも世界の脅威クラスのヤバい奴だっち」


 ひとまずは救出した街の住人達を落ち着かせると、その魔物がどこに向かったかを聞いた


「あいつは、伝説に語られるエンドっつぅ魔物だ。 間違いねぇ。 俺たちはもう、終わりなんだ」


 比較的怪我の軽い男に話を聞くとそう説明してくれた

 どうやらこの世界には古くから語られる世界を終わらせる魔物というものが存在し、それの封印が解かれるのを皆恐れていたようだ

 その魔物は今、たった一人の少年によって抑えられているという

 彼は数ヵ月前に突如この世界に現れた異世界人なのだそうだ


「なるほど、ここもやはり転移者がいるということか」


 石野と岸田、そしてテンコは未だ落ち込むアナサをトコに任せて走り出す

 その転移者を助けるために

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