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5-14

 なんて心地いいんだろう

 全部が壊れて、消えて

 そうだ、私はこのために生きてきたんだ

 あまり思い出せることはないけど、私は昔同じことをしていたって言うのは覚えてる

 人を、街を、国を、星を、世界を、破壊して、消して、全てが無になった空間に一人立つ

 あの子に見つけてもらわなきゃ。 誰かは分からないけど、私の大切なあの子に

 きっとあの子は喜んでくれる。 だって私の半身だもの


「名前も覚えてないけれど、分かる。 私とあの子は二人で一人だったから」


 私は人々を消し去った世界を見つめ、恍惚としていた

 そこにいくつかの力ある者の気配を感じたから、私はそのうちの一つ、一人だけ離れてる気配の所へ向かった

 その場から、一瞬で相手の前に

 この時の相手が驚く顔も好き。 そこから私を見て絶望している顔も好き


「誰? あなた」


 相手は驚きで声が出なくなってるみたい。 可愛いわぁ


「な、んだ…。 お前、は」


 ようやく絞り出した答えはあまりにもつまらない質問。 もういいや、消しちゃおっと


「神? いや、それにしては、力が全く感じれない? 違う、な…。 何なんだよお前、強大すぎる力を感じるのに、何も力が無いように見える。 参ったな、今までこんなに得体のしれないものに会った事がねぇ。 おま」


 うるさいから消した

 多分神なんだろうけど、あまりにも弱弱しくてくだらない

 今の奴の仲間はどうしようかしら…。 どうせこの世界に人間はもういないし、消しちゃおっかな

 思い立ったが吉日とばかりに私はその残ったやつらの目の前にいきなり表れて驚かせた

 何度見ても、この間抜けな顔が面白くて仕方がない

 違う…

 その中の二人ほどが私の顔を見ている。 何かしら、この二人には、見覚えがある気がする

 お義父さん!

 なんだろう、とても懐かしいような…。 胸の奥がざわついて、なんでかな、勝手に涙が出てきてる

 こいつは誰?


「ルーナ!」


 何を言ってるんだろう? 誰のこと? 私は、誰だったのかな?

 お義父さん! お義父さん!

 頭の中で、声がする


「ルーナ、一体何が…。 その姿は何なんだ…」


「石野さん、なんだか様子がおかしいっす」


 石野? なんで? 知らないはずなのに、覚えてないのに、私の頭が、心が、彼を知っている

 なんで、やめて、こいつらは私が消すのに!

 駄目! その人たちは私の大切な人なのに!


「ルーナ、どうしたんだ? 俺だ! 石野だ! おいで、ほら」


 お義父さん、私の大切なお義父さん

 違う! 消えろ!消えろ!消えろ!


 私と、私がせめぎあう

 体が爆発しそうな感覚が苦しい。 早くこいつらを消さなきゃ、私が私じゃなくなっちゃう

 そうなれば、あの子に見つけてもらえない

 違う、本当の私に戻るだけ、あの子は本当の私を知っている

 お前は誰だ! 私は、私だけ


「ルーナちゃん、俺もいるっすよ! 岸田っす」


 知らない女が岸田と言っている

 お兄ちゃんみたいだった岸田さん。 私と遊んでくれたお兄さん

 知らない知らない知らない! 消えて! 私の前から全部、全部!

 私は力をありったけ込めて、世界の破壊に掛かった


「まずいっち、世界の崩壊が始まってるっち!」


 兎が叫んで、奴らは私の視界からどこかへと転移していった

 最後に、あの男が私に向かって何か叫んでいたけど、どうでもいい、今は早くこの不快な感情をどうにかしたい

 私の中にいるもう一人の私、こいつをどうにかしないと、私は自分を失ってしまう

 そんなのやだ

 消えたくない。 あの子に会うまでは絶対に消えたりしない

 お前が、消えればいいんだ

 

 いまだ心の中で悲しいと言う感情を私に与え続けてるこいつを、私は無理やり押し込んで、そして

 悲しみは消えた

 でも、すっきりなんかしなかった

 それでも私は次の世界を破壊するためにまた転移する

 頭が、痛い。 あいつはまだ私の中で騒いでいる

 ぐるぐるとした不快感を今は気にしてなんていられない

 ああ、私の大事な、名前の分からないあの子を、私はきっと抱きしめて、そして永遠に二人で一人の世界を眠ろう

 全ての世界が消えた何もない場所で、二人っきりで

 世界なんていらない

今回は世界を全部否定するお話です

だからこその破壊なんです

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