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石野の異世界放浪記13-2

 女神二人を加え、石野はこの平和すぎる世界でつかの間の休息を楽しんでいた

 ここにいるのは平和を愛する種族ばかりで、共に手を取り合って暮らしており、争いうなどという不毛をすることなく、トラブルは全て話し合いで解決されているとミナキは説明した


「ここは俺た…。 私達神々も一目置いている世界だ、です。 なんといっても異種族間での交流や恋愛の多さが素晴らしく多く、全ての世界の理想の形と言えます。 いずれどんな世界もこのようになってほしいものです」


「ああ、しかし腑に落ちない点があります。 俺たちは転移者のいる世界に来ているはずなんですよ。 俺の元居た世界から転移させられた者は必ずしも問題を抱えた世界へと飛ばされていました。 そしてここにも転移者がいるのは間違いないでしょう。 ということは」


「じゃ、じゃぁここにも何か問題が起きてるってことなのかよ!?」


 ミナキは素の自分で話していることに気づいていないが、誰もそれに違和感を感じる者はいない


「まぁそういうことになるでしょうね。 ミナキ様、この世界に何か違和感を感じることはありませんか?」


 ミナキは周りを見渡し、あることに気づいた


「動物が、何もいない? 鳥のさえずりも朝の羽ばたきもない。 風が吹いているだけだ…。 生物の気配が感じれない」


「そうです。 この辺りだけなのかもしれませんが、これだけの自然に生物がいないと言うのはあまりにも不自然です」


 石野の言う通り、この辺りには何の気配もなく、気味の悪いほどの静寂が流れている

 草花はあるが、それ以外に生命が全くと言っていいほどいないのだ


「と、とりあえず街に行ってみるしかないだろ。 俺は先に行ってるからあとからついて来てくれ」


 すっかり素に戻ったミナキは剛腕の力でその場から一気に街のある方角へと移動した

 剛腕の力は自分の我を押し通す力。 できないことはほぼないと言っていいだろう


「速いっすね。さすが女神様っす」


「のんきなこと言ってないで行くぞ。 リュコ、リコ、頼む」


「うむ、任せておくがよいぞ」


「主様、どうぞ!」


 リュコとリコは神獣型になって石野たちを背に乗せると走り出した

 ミナキのような空間移動はできないが、彼女らも神獣である。 神速を出すぐらいは造作もなかった


「ヒィイイ速いぃいいい」


 どうやら神速になれていなかったアナサはそのあまりのスピードに驚き、街に着くころには涙を流していた


「ごめん、ちょっと、先行ってて」


 アナサは股辺りを手で押さえている

 察したテンコは不思議に思っている石野と岸田を先に行かせてアナサを茂みに隠し、自分の力を使ってアナサを瞬時に着替えさせた


「あ、ありがとう。 テンコちゃん」


「いいのいいの、気にしないで」


 この事は二人だけの秘密にして石野たちの後を追った


 街に入ると人っ子一人いないゴーストタウンと化していた


「ば、馬鹿な…。 ここはいろんな人種が平和に暮らす賑やかな場所だったはずなのに、なんで誰もいないんだ!」


 家々を回り、店々を訪ねてみるが、やはりどこにも誰もいない

 荒らされたり争ったような痕跡はなく、少し出て行き、後で戻ってくるという名残しかなかった


「このスープも料理も、少し手を付けてあるな。 ついさっきまで誰かが食べていたかのようだ」


「こっちもっす。 暖炉に火がくべてあったすよ」


 人々はどこへ消えたのか? その謎を解くため石野たちは調査を始めた

 まずこの街の住人がどこへ消えたかを探りたいが、本当に忽然と姿を消したのか、どこかへ向かった足跡すらないのだ

 どこに行ったかはひとまず保留となった

 次に他の街の状況だ

 これはミナキが空間移動によって確認に行くことになった

 この国の街の様子だけでなく、隣国や他国の様子も見てきてもらうため、少し時間がかかりそうだ


「俺たちは何か少しでも手掛かりを探すんだ」


 ミナキに見てきてもらっている間、一柱と三人と三匹はまた街の探索へ戻る

 しばらくしてトコが何かを見つけてきた


「石野、これを見るっち」


 トコの手には真っ黒な石が握られていた


「これは?」


 トコがそれに神力を注ぐと、石は光り始めた


「これは神石だっち。 神が神力を行使したときにごくまれに生まれる力ある石だっち。 ここで、この世界で、神様が何らかの力を使った証拠だっち」


 トコが神石を見つけてから石野たちもそれを発見することができた

 それだけ大きな力が行使された証拠である

 それの他には何も見つからず、あとはミナキを待つばかりとなった

 しかしその日、いくら待ってもミナキは返ってこなかった

 胸騒ぎを覚えたアナサは探しに行くと立ち上がったが、石野の提案で翌朝まで待つことにしてみた

  

 そして次の日、その日もミナキは返ってこず、アナサとリコ、岸田でミナキを探しに行くことになった

 ミナキの神力はアナサの模倣の力の一つ、探知の力で探せるのだが、どういうわけかミナキの神力を一切感じない


「こんなことって…。 ミナキ、一体どこへ?」


「どういうことっすか?」


「ミナキはこの世界からいなくなった、もしくは、()()()()


 アナサは認めたくなかったが、ミナキが死んでしまった可能性も考慮した

 この世界から、忽然と、ミナキという力ある女神までもが消えてしまったのだった

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