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石野の異世界放浪記12-2

 樹木の精霊ペリシモはこの森の中心にいるのだと言う

 植物全般を管理している彼女は他の精霊と違って様々な場所に赴くことが多い


「歩きにくいっすね。 数歩歩くごとに木が絡みついてくるし、イタズラ妖精の数がホントに比じゃないっす」


 かなりの数のイタズラ妖精がとにかく細かくイタズラを仕掛けてくるため、なかなか前に進めない

 しかしそのどれもが可愛い他愛もない悪戯であるのがせめてもの救いだった


「この匂い袋あんまり聞いてないみたいですね」


 テンコはエリオにもらった匂い袋を眺める

 その中には妖精の嫌いな匂いを発する花を乾燥させて粉にしたものが入っている


「多少なりとも嫌がってる妖精もいるみたいだから、全然効果がないってことはないみたいだっち」


 トコはくすぐってきた妖精を捕まえてくすぐり返している

 妖精は喜び、またイタズラをしようと近寄って来たが、トコが匂い袋を近づけると驚いて逃げて行った


「これ、懐に入れてるだけじゃ意味ないみたいだっち。 ちゃんと嗅がせないとだめだっちね」


 それからは匂い袋をしっかり持って歩いたことにより、妖精たちはおずおずと逃げ出していく


「効果覿面(てきめん)ってやつっすね」


 妨害もかなり少なくなり歩きやすくなったため、森の中央には数時間で到着することができた

 だが樹木の精霊ペリシモの姿が見えない。 妖精や下級精霊はそこかしこを飛んでいるが、肝心のペリシモは不在だった


「どこへ行ったんですかね? 私、探してきましょうか?」


「いや、待ってればそのうち帰ってくるだろう」


 石野たちはそのまま広場で待たせてもらうことにした

 そこにペリシモ配下の精霊たちが集まって来た


「何者ですか? ここはペリシモお姉さまの…。 まぁ、何と綺麗な方なのでしょうか。 ぺ、ペリシモお姉さまに何か御用ですか?」


 またしても岸田は精霊を魅了してしまったようだ

 精霊たちは岸田の周りを飛び、歩き、観察している


「ねぇ、この子私達の輪に加えましょうよ。 きっとお姉さまもお喜びになるわ」


「そうね、それがいいわね」


 突如岸田は精霊達に囲み込まれ、服を脱がされ始めた


「ちょ、何するっすか! 助けて石野さ~ん」


 あっという間の出来事で、岸田は精霊たちの来ている服と同じ霊衣に着替えさせられてしまった

 それもかなりあちこちが出ている際どい服である


「ちょっと! それ返してくださいっすよ! これは、恥ずかしいっす」


 石野もその姿を見て顔を赤くして後ろを向いた


「あーあーあー、酷い恰好っちね。 ぷぷぷ」


 精霊たちは口々に褒めているが、岸田は恥ずかしさで逃げ出したくなっていた

 そこに強大な力が迫ってくる気配がした


「来たみたいだな」


「お姉さま!」


 岸田を取り囲んでいた精霊たちは岸田の手を引きつつペリシモの元へ駆けていく


「あら~、お客様がいるみたいですね~」


 トロンとした眠たげな表情におっとりとした雰囲気の女性

 彼女は岸田を見て目を大きく開けた


「まぁまぁまぁ、新しい精霊が生まれたのですか? なんとも美しいわね~」


「いや、俺は精霊じゃないんすけど」


「あら~? そうなのですか? でも魂が精霊や神霊と同じですよ~?」


 どういうわけだか、岸田の魂は既に精霊や神霊と同じ高潔な魂を秘めてた


「もう少し力をつければあなたはすぐに精霊、いえ、神霊になれるかもしれませんよ~」


 岸田はその話について行けずに目を回す


「やっぱりだっちか。 石野は神獣、岸田は精霊としての命を得たわけっちね」


 二人には神の加護がついている。 そのためその力が魂に影響を及ぼして種族を変換させていたようだ

 二人とも自分の体の異変には気づいていたが、まさか種族自体までもが変わっているとは思わず、その言葉に大いに驚いた


「それで、あなた方は何をしにここまできたのですか~?」


 口元に指をあてて首をかしげるペリシモ

 彼女に事情を説明すると、喜んで協力してくれると申し出てくれた


「実はそれらしき者を見たのですよ~。 私の姿を見て逃げてしまいましたが~」


 彼女が見たのは人間と思われる人影で、気になって話しかけようとしたところ、精霊でも追いつけないほどのスピードで逃げられてしまったそうだ

 その人影を見たのが数日前のことで、自分の管理しているこの領域ではなく、雷鳴の精霊が管理している領域だった


「そこは雷鳴の精霊エフィルダが管理している土地で~、いつも雷が落ちてる場所よ~」


 雷は妖精や精霊にあたらないように管理されており、雷が落ちた場所からはたくさんのキノコが生えるキノコまみれな領域だそうだ

 山一つ丸々がキノコの菌床という場所まであるらしい


「とにかく~、そこまではかなり遠いから~、今日は泊まっていきなさいな~。 明日私が送ってあげるから~」


 その言葉に甘えさせてもらい、石野たちはペリシモの歓迎を受けた

 特に岸田に対する態度は露骨で、何としても彼女を手に入れたいと必死なようだったが、岸田が頑として拒否したためペリシモもそれ以上は何も言わなかった

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