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石野の異世界放浪記11-11

 トコは少しうれしそうな顔をしていた

 死んだはずの仲間が蘇り、トコの帰りを待っている

 その点だけは不謹慎な話しだが、トコにとってはよかったと言える

 一番好きだったリミが生きている。 それがトコに活力を与えた


「あちき、絶対にあの異放者を倒すっち。 そしてリミ様の元へ帰るんだっち」


「ああ、そうだなトコ。 俺たちとお前でやり遂げるんだ。 もちろんルーナも協力してくれるさ」


 トコはうなずく


「あとは私達に任せてください」


 まわりにいたハンターたちに事後処理を任せて石野はひとまずマイズと合流することにした

 この世界にいた転移者はすでに全員見つかっている

 マイズ達5人はここに残ることが決まっていたが、問題はテンコだ

 彼女には当然帰るべき場所があり、そこでは彼女唯一の肉親である父親が待っている 

 ただ、彼女には父親に再会しても自分と認識されないかもしれないという怖さがあった

 彼女は世界を渡ったことで姿が少し変わっている

 黒くきれいな長い髪の毛は白銀に輝き、爪が鋭く伸びていた

 眼の色は黒から青みがかった銀色となった

 テンコは自分が戻るべきかどうかを悩んでいるようだった


「それなら一緒に行くっち。 テンコなら百人力だっちよ」


 マイズ達の元へと戻り、テンコの話を聞いたトコは開口一番そう言った

 テンコはその言葉にキラキラと顔をほころばせて喜ぶ


「私なんかでいいの?」


「いいっちよ。 テンコの力は多分あいつと戦うために必要だっち。 この際お前が何者かなんてどうでもいいっち。 同じ地球に育ったなら、石野と仲間だっち。 石野の仲間ってことはあちきの仲間でもあるっち」


 テンコとトコが握手を交わすと、テンコの体が光った


「む、なぜトコと通じ合って召喚できるようになったんだ?」


「分かんないっち。 石野の力が強くなってるんじゃないっちか?」


 もともと石野の力の一つに転移者と心を通わせることで召喚できるようになる能力があったが、今では彼のこの能力は仲間となることでも発揮できるようになっていた


「とにかく、ぼくたちはこの世界でまだやることがあるんだ。 それが済んでから君たちに合流すると約束しよう」


 マイズ達5人は石野にうなづいて約束した


「行こうか、リュコ、ゲートを頼む」


「任せるがいいぞ!」


 リュコが転移用の門を開き、新たにテンコを連れてその門をくぐった

 テンコは恐れながらもワクワクして石野の後ろをついて行く


 通り抜けた先は巨大樹がそびえ立つ幻想的な世界

 透き通る体を持った妖精や精霊のような生物がそこかしこに漂っている美しい世界だった


「綺麗なとこっすね。 それにこの妖精? なんてかわいいんすか」


 岸田は宝石を見るような目でその妖精?たちを見ている


「ツンツン。 こいつらちゃんと意思があるみたいだぞ。 ホレホレ」


 リュコが妖精たちをつついているとそこにいきなり氷の槍が降り注いだ


「のわわ! 危ないじゃないか!」


 氷の槍を降らせた相手がリュコの前に降り立つ

 雪のように白い肌を持ち、その手に銀白色の槍を持った美しい女性だ


「あなた達、妖精に危害を加えるならただでは置きませんよ」


「ちょ、ちょっと触っただけだぞ! ほら、喜んでるじゃないか!」


 確かにリュコにくすぐられた妖精たちはそれに喜び、もっともっととせがんでいる


「た、確かに…。 妖精がここまで懐くのなら悪い者ではないのですね。 早とちりしてすみませんでした」


「ふん、謝るくらいならもっと確認するんだぞ!」


 リュコはそう言うと再び妖精をくすぐって可愛がり始めた


「お、俺にも触らせて欲しいっす」


 岸田も我慢できなくなり、妖精に触れる


「や、柔らかいっす。 フワフワしてるっすよ」


 岸田が触っている妖精は小さな少女のような姿で、蝶のような羽を持ったいわゆるピクシーやドクシーと呼ばれる一般的な妖精だ


「やめろ岸田、何か犯罪的なニュアンスだぞぞれ」


「でも石野さん、こんなかわいいんすよ? やばいっす」


「やばいのはお前だろう。 ほどほどにしておけ」


 石野はため息をつくと白い女性を見た


「あなた方はどこから来られたのでしょう? 見たところこの世界の住人ではないようですが?」


「見て分かるのか?」


「ええ、ここには妖精と精霊しかおりません。 あなた方のような人間がここに来るのは実に数百万年ぶりのことです。 はるか昔に黄金人という人間の始祖が修行のため来た時以来ですね」


「人間の始祖っすか? それってアウストラロピテクスみたいな? いやホモサピエンスだったかな?」


「それはよく分かりませんが、あなた方のような男の方でしたよ?」


「そんなに前に俺たちと同じ姿をした人間か。 地球人ではなさそうだな」


「あ、そうです、その地球という場所から来たと言っていました」


 まるでその人物に会ったかのように話す彼女の年齢を尋ねたかったが、さすがにそれは無粋だと岸田は口を閉じる


「まさか、数百万年も前に人間がいるはずないだろう」


「でもそう言ってましたし、現に私が出会ったのもその時です」


 訳が分からないが、今はその話は置いておき、ひとまずこの世界に転移した者がいないかを尋ねた


「さぁ? 私はこの辺りを任されている上位精霊ですから、他の場所は関知しておりません。 私の姉妹である他の上位精霊達なら何か知っているかもしれません。 場所を教えましょうか? あなた達なら心配なさそうですし」


 お言葉に甘えさせてもらい、場所を教わって紹介状までもらった

 石野は氷の精霊に礼を言うと他の姉妹精霊の元へ急いだ

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