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コリューカでの報告が終わってすぐのことだった
獣魔王に関する情報が入って来た
勇者である桃に真っ先に入るようギルドが手をまわしてくれていたようだ
報告によると、獣魔王の部下と名乗る魔人らしき男が王都に向かって進行しているらしい
すでに一つ街を破壊しているらしく、討伐隊が組まれることになった
そのリーダーとして勇者桃に白羽の矢が立った
討伐隊は勇者がいるというだけで士気が高まるだろう
「分かりました。任せてください!」
帰ってきてあまり休む間もなく討伐隊に加わる
討伐隊の冒険者は先の盗賊討伐に共に行った者たちもいるようだ
その中に盗賊討伐のときリーダーだった男の姿がある
「やぁ、また会ったね」
「まさか勇者様だったとは、あの実力も納得がいったよ」
男の名はクラップ・スプレッドと言い、4人パーティをくんで冒険をしているCランクでもトップクラスの実力者らしい
まもなくBランク昇格間違いなしと言われている
クラップは自分のパーティのメンツを紹介する
盗賊討伐にもいた三人だった
魔法使いのチル・マニシカ、回復もこなせるパラディンのキートン・モルシス、特殊な気を練って力を増強し、その気を飛ばしたりして攻撃する波導格闘家のシスカ・マルール、そして、リーダーでクレイモアを操るクラップだ
彼らは“野獣の牙 (ワイルドタスク)”という名前で活動しているらしい
軽く握手を交わすと討伐隊の中に加わる
桃は討伐隊の前に立つと挨拶を始めた
周りでは「あんな少女が?」「大丈夫なのか?」「不安」などといった声が上がる
「こ、こんにちは、立木桃と申します」
「この討伐隊のリーダーとして至らない点もあると思いますが、勇者として皆さんを率いていけるよう頑張ります!」
それが勇者の力なのかわからないが、皆が奮起し、桃のその力を感じ取ったようだ
全員が大きく声をあげて拳を突き上げた
それからそれぞれ旅立つ用意をすると、二時間後にはコリューカを発った
道中は増えた魔物や魔獣の相手をしながら急いで街道を行く
ルーナの力は追う税の前では見せられないので後方で待機させておいた
魔物たちが多い以外は特に問題なく首都へとついた
道中魔人と出会うこともない
首都にも話は行っていたのですでに騎士や冒険者、魔導士たちが守りを固めている
その中にはレノスとクノリリアの姿もあった
「来てくれたのですね!」
クノリリアが喜び勇んでこちらに向かってきた
レノスはルーナの毛をもふもふし始めている
顔はすっかり緩んでにやけており、いつものキリッとした表情が崩れきっていたため周りは少し動揺しているようだ
ルーナは困った顔はしているが、そんなに悪い気はしていないらしい
しばらくすると偵察に行っていた冒険者たちが戻って来た
魔人は魔物を率いて悠々とこちらにまっすぐ向かっている
中にはBランクの魔物もぞろぞろといるそうだ
魔人は本気でこちら側を滅ぼしにかかっている
まもなく両者がぶつかりあう
恐らく死傷者も多数出ることだろう
それでも、国民を守るため王都の騎士達、冒険者たちは自らを奮い立たせて来る敵を迎え撃つ準備をした
魔法使いもこの世界にはちゃんといます
魔導→詠唱無しである程度の魔法を使える
魔法→詠唱がいるが強力無比の魔法を使える
という認識でお願いします