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5-12

 お姉ちゃんが攫われた。 私の大好きなお姉ちゃんが…

 もうどうすればいいのか分からない

 憎んでいたけど仲間だったエイシャも死んだ

 あの男は一体何? お姉ちゃんはどうなっちゃうの?

 なんで、どうしてまた私を守ったの?

 どうしてかなんてわかり切ってる。 お姉ちゃんだからだ

 あの人はいつも私優先で考えてくれた

 ずっと私のことを愛してくれたたった一人の肉親

 私は頭を抱えて考えた。 どうにかしてお姉ちゃんを救いたいけど私一人じゃ何もできない

 どんな理も破壊できるはずの私の力。 でも、私は本当に無力で自分自身に嫌気がさす


 ひとまず私は立ち上がった

 落ち込んでいる場合じゃない。 お姉ちゃんが助けを求めてるんだからしっかりしなきゃ

 もう私にはお姉ちゃんしかいない


「待っててお姉ちゃん」


 まずは足取りを掴まなきゃ

 気配もないあいつをどうやってとらえればいいのか分からないけど、あいつは絶対に見つけ出してお姉ちゃんから引きはがしてやる


 私は破壊の力で無理やりゲートをこじ開けた

 狭間の世界へと繋がる門。 お姉ちゃんなら能力で開けるんだけど、私にはこれしかできない

 それが破壊の力だから


 私は亀裂の隙間から体を入れ込み、狭間の世界へと入り込んだ


 それから数刻後、先ほどまでルーナがいた場所で花のようなものが芽吹いた

 それは急速に成長し、やがて果実となった

 その果実は熟れてたれ落ち地面へ落下する

 果実は割れ、そこから裸の小さな少女が這い出てきた


「う、くぅ、ハァハァ、危なかったわ。 復活の力がなかったら確実(かくじちゅ)()んでたわ」


 ずいぶんと幼く小さくなってしまったが、その幼女はエイシャだった

 様々な力を使える力の女神である彼女だからこそ出来た芸当だ

 魂のいくつかを分裂させ、ストックしておいたそれを死ぬ直前に放つことで魂を保護したのだ


「とにかく、サニーに合流ちないと!」


 たどたどしいながらもエイシャはサニーを追うためにゲートを開いた


「くぅ、こんなに弱まるなんて…。 でもぐじゅぐじゅしてはいられないわ。 あんなのがいるなんて…。 みんなに伝えないと」


 開いたゲートによって直接仲間の元へ

 まずは愛の女神アズリアやマキナだ


「エイシャ、なの?」


 案の定その姿に二人は驚いた


「どうしたのその姿!」


 二人とも駆け寄ってエイシャを抱きしめた


()にかけたの。 異放者(いほうちゃ)がいたわ。 あいつ、この大世界をどうにかちようとちてる。 でもあたちじゃどうにもできないわ。 見ての通り、ほとんど何もできない。 わたちじゃなにも、出来ない」


 泣きだすエイシャを慰めると二柱はすぐに行動を開始した

 マキナの力で伝達の神ルフェインにこのことを通達、その情報の全てが神々にいきわたった

 

「ラシュア兄さんにも伝達しておいたよ。 マキナ、エイシャ、僕はてっきりもう君たちには会えないかと…」


「ルフェイン兄(ちゃま)、ありがとうございます」


「それにしても…。 小っちゃいエイシャは可愛いね。 よしよし」


 ルフェインは雷の女神レライアと同じように中立の神だった

 どちらに着くこともなかったが、下の妹弟たちが慕う優しい神だ


「子供あちゅかいちないでくだちゃい! とにかく今大変なときなんでちゅ! ああもう呂律が回らない!」


 エイシャは見た目通りの幼女らしく地団太を踏んで怒っている

 体が幼くなったことで精神年齢まで幼女化してきているようだ


「ルフェイン兄ちゃま、もう一ちゅ伝えてほちいことがあるのでちゅ」


 エイシャは自らの力を小さなカプセルに閉じ込めてルフェインに渡す

 ルフェインはうなづくとラシュアの元へ急いだ


「エイシャ、あれは何なのです?」


「アズリア姉しゃま、あれがルーナちゃんを救うカギになるはじゅでしゅ。 わたちの魂を込めまちた」


 エイシャは死ぬ直前、もう一つ仕事をしていた

 分裂させた魂の一つをカプセルに閉じ込めておいたのだ


「そんな、あなたそんなに魂をすり減らしたら死んじゃうじゃない!」


 アズリアが怒るがエイシャは首を横に振った


「いいの、それであの子が助かるならそれでいい。 わたちはあの子たちにひどいことをちたんだから、その報いを受けなきゃだめなの」


 エイシャは気丈にアズリアたちを見つめる

 その目に迷いはない


「分かったわ。 行きましょうエイシャ、ルーナちゃんの元へ。 救うために」



 ルーナは暗闇の中にいた

 何も見えず聞こえず香らず、何もない場所でただ一人うずくまっていた

 寂しく、耐えず襲ってくる息苦しさに押しつぶされそうになる

 何度も転生して苦しみを味わってきたが、今この状況はこれまで経験したことがないほどに苦しい

 彼女は死にたいと思うようになっていた


「ようやく、君の意識も溶け込んで消える。 体をありがとう、感謝だけはしておこう、君に」


 褐色の肌を持ったルーナの体に指を添わせる

 愛おしそうに、艶めかしく…

 やがてルーナの意識は深く深く溶け込んでいった

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