大世界の勇者2
あの人が誰なのかは分からないけど、まるでお母さんのような安心感をあの人から感じた
それに今までにないほどの力の波導も
あの力は多分神様よりも強くて優しいもの
そんな人から力を授かった
きっと私はやり遂げなきゃならない使命を得たんだと思う
まずはあの人の言ったようにルーナちゃんを探さなきゃ
世界を渡る力、それが私には備わった
これなら飛べる
オルファスの双子女神様が私を見つめる
「ここはもうあなたの世界」
「いつでも帰ってきていいのですよ」
事情を話した二人には理解してもらった
心配してくれているのは分かるけど、ルーナちゃんが助けを求めているなら行くしかない
私はあの子にお礼を全然返せてないもの
「行って来ます、アウラスタリア様、マルセタリア様」
双子女神さまはそれぞれで抱きしめてくれる
生まれた世界で私の居場所はなかったけど、この世界は私を受け入れ優しく迎え入れてくれた
あの人は今全ての世界が消滅する危機にあると言っていた
ルーナちゃんを助けることが世界を救うことに繋がるのなら私は、この力できっと成し遂げて見せる
右手に掲げるは神剣アラセナ、左手に携えるは神盾フィリナ
二つとも双子女神様からの贈り物
二柱が心血を注いで生み出してくれた力ある神具
ゲートをくぐり、私はルーナちゃんの力の波を追って渡りを開始した
周囲にたくさんのリングが重なり道を作っていき、そこを飛ぶように駆け抜けると急に真っ白な光が差し込み私を包み込んだ
「眩しっ」
目を開けると驚いた顔のパリケルさんと、不思議な姿をした二人の女の子が目の前に立っていた
「き、君は、立木桃…?」
パリケルさんは開いた口が塞がらないようで、そのままぽかんと口を開けていた
「お知合いですか主様?」
「う、うむ、俺様の故郷の勇者だぜな」
「主様を狙う輩ではなさそうですね」
二人の少女はパリケルさんを守るように私の前に立ちふさがった
「何か御用かな勇者? 僕らの主様は今お忙しいんだ」
「早々にお引き取り願いたいものね」
その言葉をパリケルさんが制止する
「この子は俺様の友人だぜな。 それにしても、君には転送装置は渡していなかったはずだぜな。 もしかして量産できたぜな?」
「いえ、私は私の力でここまできました」
「どういうことだぜな? 君からはあの女神たちの力しか感じないぜな」
私が事情を説明すると、パリケルさんは改めて驚いていた
「異放者? いや、ここで種をまいたとはどういうことだぜな? もしかして…。 世界を作り出した者、ということぜな?」
「恐らく、そうだと思います。 あの人は種をまいて以来久しぶりにここに来たと言っていました。 ここまで成長してくれて嬉しいとも」
パリケルさんは顎に指をあてて考え込んだ
「その方はルーナを助けることが世界崩壊を止める手立てだと言ったんだぜな?」
「そうですね、それに近いことは言っていました」
「なら、ちょうど俺様達もルーナの元へ向かうつもりだったんだぜな。 一緒に行くぜな」
「はい!」
「やはり、この子が映っていたのは見間違いじゃなかったか…」
最後の言葉はよく分からなかったけど、私はパリケルさんについてルーナちゃんの元へ急ぐ
パリケルさんも今すぐ駆け付けたいに違いない
あの子はみんなに愛されていた。 私と違って…
「そうですね、確かにあの子はこの世界でもかなり異質な存在です。 私の愛しい子、それでもみんな私の愛おしい大切な子らなのです」
突然またあの人の声が頭に響いた
「驚かないでそのまま。 私の愛しい子、ルーナとサニー、いえ、サニアとルニア姉妹はこの世界の大神が作り出し、試練を乗り越え続け、今やレドの力を受け止めれるほどになったわ。 レド、馬鹿な子…。 私はもう言葉でしか干渉できない。 ルーナを助け、レドを止めなさい愛しい子よ」
「待ってください! なんで…。 なぜ私を選んだんですか!」
「分かってるでしょう愛しい子。 私が与えた力はあなたの本当の強さを引き出しただけ。 覚醒出来るのはあなただけだった。 だから愛しい子、選ばれたのではないの。 あなただったの」
そうか、私は、あそこに居場所がなかったんじゃない。 あそこが私の場所じゃなかったんだ
もともと、あの世界に私の場所なんてないんだ
「でも愛しい子、貴方は大切な場所を、手に入れたでしょう? 守りなさい。 大切な場所を、人を」
「はい!」
彼女のおかげで私は勇気がどんどん溢れてきた
だからこそ勇者、溢れ出る勇気をみんなに届け、私とみんなで回すんだ
世界がなくなる未来なんて来させない
勇者は歯車となってみんなを回し、勇を与えて仲間と共に戦う存在
私はこれを乗り越えたとききっと本当の勇者に成れるんだ