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石野の異世界放浪記11-9

 調査隊は商人として、石野たちはトコの眼で姿を変えてホロランド内に侵入した

 怪しまれないよう商人となった調査隊を先に行かせ、石野たちが旅人として数時間後に入国した

 相変わらず簡単な入国審査だけであっさりと入国できたうえに、やはりどこを見ても変わった様子がない


「あれだけのことがあったのに警戒態勢すらひかれていない。 どういうことなんだ?」


 石野はあたりを見渡し、商人となった調査隊を横目に地下へと続く階段の元へ歩みを進めた

 しかしどういうわけか、階段が一つも見つからなかった


「意味わかんないっす。 まるで狐につままれたような…」


「狐につままれるっちか? どこかにレコがいるっちか?」


「トコちゃん、狐につままれるって言うのは、意味の分からないことにぽかんとするって意味っす。 訳が分からないってことっすよ」


「確かに意味わからないっちね。 ここから地下に道が繋がってたはずなのに、あちきの眼で見てもその道の痕跡すらないとはどういうことっちかね?」


 しばらく周辺を調べてみるが、他の地下道への扉も全てがもともとなかったとでもいうかのようにちょっとした痕跡すら見つからなかった


「ここまで何も見つからないってのはおかしいっち。 何かが隠したに違いないんだっちけど、痕跡一切がないって言うのは人間の仕業とは思えないっち」


 街中を探し回ったがどうしても地下に通じる階段が見つからない

 仕方なく切り替えて怪しいものがないかを探すことにした


「調査隊の方は順調なんすかね?」


「集合の時間にはまだ早い。 まだ何か手掛かりがないかとことん探すぞ」


 一方の調査隊の方は商人としての仕事をしながら来る客来る客から情報を聞き出すが、全くと言っていいほど怪しい噂に関する情報を得ることはできなかった


「本当に魔物の死体なんか運ばれてきたのか? 噂の出所は正しいのか?」


「ええ、レッドさんの話ですから間違いはないかと。 彼には幻術と言った類は効かないですし」


 レッドというのはギルド間を走り回って情報を伝達する男で、本当の名前は分からないが、赤い帽子をいつもかぶっていることからレッドという名前で通っている


「魔物の死体を運んでどうするつもりだったんだ?」


「さぁ、情報があまりにないですからね」


 だがその数時間後自体は一変した

 ホロランド自体が急に石野、調査隊の視界から消えてなくなったのだ

 驚き混乱している石野と調査隊たちの目に飛び込んだのは、推定50万の人間の骨と魔物の骨

 そして瓦礫と化した街だった


「なんだこれは…。 何が起こった」


 全員が絶句してその場で何もかもが幻だったことにどうしていいかもわからず、ギルドへの報告のためにいったん戻ることにした

 恐ろしいほどの数の人間と魔物の死体。 ホロランドという国は既に滅んでいた

 そんな死体の山がひと際うずたかく積みあがった場所にトコが走っていった


「ここ、ここ何かがおかしいっち」


 骨の山をゆっくりと丁寧に取り除きながらその下を確認すると穴があり、その穴の中にテンコが閉じ込められていた部屋が見つかった


「やっぱりここがそうなんだっち。 ここにテンコがいたのは確実だっちよ」


 テンコは確かにここにいたのは間違いない。 その証拠はしっかりとこの部屋として残っている

 だがここには人が一切いない

 街の者はすでに死んでいる。 今まで話していた街の人々は幻だったが、魔物の死体がここにあると言うことはレッドという男が見たものは幻覚ではなかった

 だが幻覚や幻想の類が効かないはずの彼でもこのホロランドに掛かった幻術を見抜くことができていない

 それもまた何者かの仕業なのだとトコは考えていた

 

「石野、少し調べてもいいっちか?」


「ああ、頼む。 眼は大丈夫か?」


「そんなのとっくに大丈夫だっち。 あちきはすっかりパワーアップしてるんだっちよ」


 確かにこのところトコの眼からは出血もなく、探知も魔眼も非常に洗練されてきていた

 月兎本来の力がトコに宿り始めている


「さてと、あちきはこのテンコがいた小屋をもっと詳しく調べてみるっち」


 トコは眼を使って調べ始めた

 そんなトコの眼の色が赤から青に輝き始める


「トコ、眼が…。 大丈夫なのか?」


「ぬわわ! なんだっちかこの眼! 痕跡が、何もかも見えるっち! これは…。 過去が見えるっち」


 トコの眼の力、過去視。 過去の事象を視ることのできる眼だった


「視えるっち。 これはそんな…。」


 トコは下唇を噛む

 トコの眼に映ったのは、かつて殺されたはずの親友たち。 そして大好きだった天人の主の姿だった

 天人の指示でトコの親友たちは眼によってホロランドを破壊し、人々を混乱させて殺し合わせている

 それをトコの最愛の主が嬉々として指示している。 そんな光景が目に写った


「こんなの、こんなのってあんまりだっち…。 異放者! どこまであちきの大切な人たちを!」


 トコの眼が銀色に光り輝き始めた

 その目には異放者に対する怒りと大切な人々を使われた憎しみに満ちていた


「トコ!?」


「石野、あちきは許せないっち。 またあいつなんだっち!」


 石野がトコを優しく抱きしめるとトコの眼は元の金色に戻った

 トコは自らの力の完全覚醒を感じていた

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