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石野の異世界放浪記11-7

 その少女は自らを“神山(かみやま)テンコ”と名乗った

 神社の神主の娘で、自身も巫女として家業の手伝いをしていた

 彼女の日常は学校に行き、友達と楽しく過ごし、家に帰れば巫女としての仕事をこなす

 巫女という以外にはごく普通の少女だった


「気が付いたら、この世界にいて、突然まわりを男の人達に囲まれて、それ以来ずっとこの国の地下に閉じ込められていました。 つかまって閉じ込められたのが多分一年くらい前です。 どうして閉じ込められたのかは分からないんです」


 この国では何かが行われているのは間違いなく、それが何かもわからなかったが、この少女は間違いなく転移者であることは分かった

 少女を保護してそのままこの国を脱出して安全なマイズの元へ連れて行くことにした


「我がこの子を隠匿しておくから、素早く脱出するぞ」


 リュコは結界を張ったまま動き出す

 すでに周りは明るくなっており、追っていた男たちも目立った行動はできないだろう

 注意深く周囲を確認すると走って裏路地を飛び出た


「さて、結界で姿は見えないようにはなってるけど、人にあたればばれちゃうから気を付けるんだぞ」


 リュコの言うとおりに人にあたらぬよう細心の注意を払って人々の間を通り抜けていく

 その後ろを影のようなものが付けているのだが、やはりトコもリュコも気づいていないようだった


「よし、無事国を出れたみたいだっち」


 ホロランドから脱出したとたん周りを影のように揺らめく男たちに囲まれてしまった


「何なんだっちかこいつら! なんであちきの探知に掛からないんだっちか! こいつら気配がないっち。 人間じゃないっちよ」


 男たちはゆらゆらと纏っていた影を脱ぎ捨てる

 その顔は真っ白な能面のような顔で表情が全くない。 手は左右二本ずつあり、不気味にウネウネと動いていた


「き、気持ち悪いっち。 あんなの見たことないっち」


 長い年月を生きたトコですら知らない生物。 これらは新種と言っていいモノたちだった


「とにかくこいつらを蹴散らさないと帰れそうにないぞ! 我に任せるといい」


 リュコが力を開放した

 高まる神力に不気味なモノ達は少したじろいている


「いくぞ! 煉獄~! 銀龍覇劫(ぎんりゅうはごう)!」


 銀色の炎が周囲を覆い、蠢くモノを覆った


「焼き尽くせ!」


 銀色の業火は灰となるまで相手を燃やす。 いくら新種で対処法が分からなくても、リュコの炎は大概の者に防ぐことができない

 

「ふぅ、倒せてよかった」


 まわりには黒焦げになった死体が転がる


「それにしてもこれ何だったんだっちか?」


 焦げた死体を木の棒でつんつんしながらトコが確認しているが、正体は分からない


「しいて言うなら…」


 トコが顔を暗くして石野を見る


「こいつらの気配、異放者ににてるっち…」


 トコが震えている

 異放者はかつてトコの家族、友人、主を殺した者達の元凶。 トコはどうしてもその時のことを思い出してしまった

 そんな彼女を石野が優しく抱き上げる


「大丈夫だトコ。 異放者とやらが来ても俺が守るからな」


 それを聞いて安心したのか、トコは石野に縋り付いて安心し、その胸に顔をうずめる


「戻るっすよ。 早いとここの子をマイズ君のとこへ連れて行くっす」


 岸田はテンコを背負ってそのまま走った

 石野たちが去ったその場では死体となったモノ達がぐちゃぐちゃと蠢き、一つになった

 焼けていたはずの体は再生し、再び人型になったが、やはり異質で不気味な姿

 能面のような顔に20対の腕、それらはぐにょぐにょと蠢く

 そして、能面のような顔はグニャリと歪み、笑った


「ぎゅぎ、レドざま、命令、果たず」


 さらに異形となった化け物は、グチャグチャと這いずるように石野たちの後を追って行った


 マイズの元へ戻るとギルド全体に通達が渡った

 ホロランドが何をたくらんでいるのか分からないが、ギルドの調査が入ることになった

 ギルドには調査に長けたハンターがたくさんいる。 彼らに任せればすぐに情報が集まるだろうとの判断だった


「それにしても不気味ですね。 その得体のしれない化け物もそうですが、ホロランドの様子もおかしい。 一体何をたくらんでいるのやら」


 確かに怪しい噂はたくさんあったが、住民の一切が認知できていない。 認知どころか何もあやしいと思っていないのが不気味さを増している


「僕らも調査に加わろうと思います。 石野さんはどうしますか?」


「俺たちも行こう。 俺の力は君らにも役立つと思うしな」


 石野の能力の一つは味方の力を底上げすることができる

 仲間が増えれば増えるほどその能力も二倍三倍と倍々に増えていくと言う強力な能力だ


「それは頼もしい限りです。 では明朝、調査班に合流してホロランドへ入国しましょう」


 マイズ達五人と共に再びホロランドへ向かうことが決まったが、その日の深夜、最悪の事態が石野たちを襲った

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