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石野の異世界放浪記11-5

 ホロランド教国は神の教えに従って来る者を拒まない。 石野たちも意外なほどあっさりと国内に入ることができた

 人々は幸せそうに笑い、とても怪しい噂が流れているようには見えなかった

 この国の首都ホロヴァナはかなり大きな街で、それであるにもかかわらずスラムなどが全く存在しない。 全ての住人が神の教えの元犯罪を犯さず暮らしている

 また、貧困も存在しない。 働けない者は働ける者が手助けすると言う理念があるからだ


「どう見ても平和そのものっすよねぇ」


「ああ、だがこういういかにも素晴らしく見えるものって言うのが意外に裏を孕んでたりするんだ」


「昔っから石野さんそう言ってますよね。 まぁ確かにあの頃もそんなことが多かったっすけど」


 石野はさっそく聞き込みを始めた

 岸田の方はトコ共に探知で痕跡を探すことになった


「なんであちきがお前と一緒なんだっちか。 石野と一緒がよかったっち。 お前はあちきのライバルなんだからなれなれしくしないで欲しいっち」


「ライバル? なんのっすか?」


「恋のだっち! 石野は渡さないっちよ!」


 岸田は少し驚いた顔をして、すぐに顔を真っ赤にした


「俺とあの人が!? ないない、ないっすよ。 石野さんは俺の先生で師匠で、頼れる兄貴なんす。 それに俺もともと男だし…」


「え…? えええええ!?」


 トコはどうやら岸田がもともと男だったことを知らなかったようだ。 彼女は異世界に渡る際に体の再構築が行われ、岸田が得た能力の一番合う体となっていた。 それがたまたま女性の体だったというわけだ


「そんなら心配ないっちね。 仲良くするっち」


「おうよ! 何なら俺がその恋の手助けしてやるっすよ」


 二人はガッチリと握手を交わす

 しかし岸田は気づいていなかった。 女性となったことで芽生えた石野に対する感情を

 それはまだとても小さいが、少しずつ膨れ上がっていくだろう


 聞き込みを開始した石野は様々な人から話を聞き、怪しい噂がないか確かめるが、誰に聞いてもそんな怪しい噂は知らないと言うばかりだ

 緘口令(かんこうれい)も引かれている様子はなく、嘘をついている風でもない


「参ったねどうも…。 仕方ない岸田を待つか」


 石野は通りにあるベンチに腰掛けると行き交う人々の観察を始めた。 何かヒントでもつかめればいいと始めたが、ごく普通の市民ばかりで何の変化もなかった


 岸田とリコは痕跡を見つけようと、トコの能力を手掛かりに歩く

 トコの眼は赤く輝き、能力をフルに活用しているのが分かる


「どうっすかトコちゃん」


「むむむ、ここに来てから全く痕跡が見えなくなったっち。 何かに隠されているのかもしれないっちよ」


 トコの眼を欺けるのは神かそれと同程度の力を持つものくらいだ

 今まで国の外からは見えていたはずの痕跡が全く見えないのは、つまり彼女の眼に気づいて隠した者がいると言うことだった


「まぁ何かがいるってことが分かっただけでも成果だっち。 石野の元へ戻るっちよ」


 トコはそう言うと走って石野の元へと行ってしまった


「恋する乙女は盲目と言うけど、あの子に限ってそれはないっすね」


 石野に早く会いたいがため適当にやったかもしれないと思ったが、一緒にいてそれはないことがよく分かった

 彼女は石野の役に立とうと必死に真面目に探知を行っていた。 鼻血を出すほどに


「さて、俺も石野さんのとこに行くっすかね」


 岸田はトコの後を追うように走って戻る

 その後ろを黒い影が追っているのも気づかずに


 合流した三人はひとまず宿をとって次の日の調査に供えることにした

 その夜のこと、トコは石野の横で丸まって寝ていた

 大好きな石野に寄り添い幸せそうに眠るトコ。 過去の記憶はまだまだ薄れない。 それでも石野といることで彼女は癒されていく

 そんな彼女は突然起き上がり、辺りを見回した


「誰っちか! あちきに話しかけてるのは誰なんだっちか!」


 その声で石野も起きだす


「どうしたんだトコ?」


「石野、声がするっち。 助けてって、弱弱しい声がしてるっち」


「俺には聞こえないが? どんな声なんだ?」


「なんだかすごく弱ってるみたいだっち。 今にも死にそうな声、女の子みたいだっち」


 石野はすぐに上着を羽織ると部屋を出て、岸田のいる部屋をノックした

 しばらくして眠い目をこすりながら、胸元のはだけた岸田が現れる


「何すか石野さん。 まだ夜中っすよ」


 石野はその胸を見て慌てて後ろを向き、服を着るよう促した


「お待たせっす」


 着替えた岸田はトコの聞いた声について話を聞いた


「その声ってどこから聞こえるんすか?」


「詳しくは分からないっちけど、この国の地下? 下から聞こえるんだっち」


 三人はすぐに身支度を整えると宿を飛び出した

 この国には下水があり、街中の地下に張り巡らされている

 トコの耳を頼りにその声を追うことにした


「まだ聞こえてるか?」


「聞こえてるっち。 でも、さっきより小さくなってるっち」


「急ごう」


 地下道へと通じる道は複数あり、そこの一つから地下へと降りた


「こっちだっち!」


 トコの案内で石野と岸田は走った


この話が続いてますが、もう少し続けます

主人公は少しお休み

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