石野の異世界放浪記11-3
石野が来たのは街の中心にあるハンターズギルドという場所だった。 ここにはハンターと呼ばれる魔物を狩る専門の職を持った人々が出入りしており、転移者もどうやらここに所属しているようだった
「さて、どうやって探すかな」
現在リュコ、リコ、トコの三人は体にかなりの負荷がかかったために動けない状況にある。 玉の中で休息中のため、転移者は石野一人で探さなければならない
元刑事のためその辺りの聞き込みは得意とするところだ
「さて、まずはここ何年かで頭角を現したハンターをピックアップしてみるか。 日本人なら簡単なんだがなぁ」
石野の不安は的中し、ピックアップしたハンターの中に日本人の名前はなかった
目星をつけたのは5人。 その誰もが1年ほど前にふらりとここに流れ着いた流浪人達だ
同時期に来たにもかかわらず、その5人は友人でも知り合いでもなく、それでも意気投合したのかパーティを組んでいるらしいことが分かった
「この中にいる可能性が高いな。 それにしても一年前か…。 その頃からすでに始まっていたということなのか」
ひとまずその5人を探し建物内を聞いて回った。 どうやら少し前から周辺の村を見て回っているようだ
一番遠い村から順に回っているようなので、最後は石野のいた村を見ることになるようだ
「あの村にいた方がよかったか…。 仕方ない、帰ってくるのを待つか」
石野はギルド横にあった宿で一宿することにし、岸田と合流することにした
岸田はすでに村長の娘であるリタの前にいた。 偶然にも通行人に宿屋の近道である路地裏を教えてもらった岸田は、そこで男どもに襲われかけているリタと遭遇していた
「女の子一人に男五人掛かりとは情けないっすね。 馬鹿じゃないっすか?」
「何言ってんだ? 今二人になったじゃねぇか。 お前にも相手してもらおうか」
「はぁ、下品っすね。 男はもっとスマートじゃなきゃだめっすよ」
五人組の男たちは岸田に狙いをつけるとゆっくりと近づきその手を掴んだ
「あーあ、手まで出してくれちゃって。 痛い目見ないとだめっすね」
襲い掛かって来た男どもを持ち前の格闘センスでいともたやすく気絶させていった
「ふぅ、大丈夫っすか? えっと」
「リタ、です」
リタは岸田を見てポーッとしていた。 顔は赤く染まり、岸田に熱の上がった目を向けている
「リタ? もしかして外れにある村の村長さんの」
「は、はい、そうです! アルタ村のリタです」
「いやぁよかった。 お父さんに頼まれて君の無事を確認しに来てたんだよ」
「あの、村はどうですか? お父さんは大丈夫ですか?」
「君のお父さんはまぁ少し栄養状態が悪かったけど、今は回復して元気になってるよ」
リタはほっとしたように座り込んだ
それからリタの勤める宿屋に彼女を送り届ける。 その間リタはべっとりと岸田に引っ付いていた
「岸田様が助けて下さらなかったらどうなっていたか。 感謝しています」
艶っぽい声を出しながら岸田に迫る。 可愛らしい顔立ちをしたリタに岸田も頬を染めるが、今はそんな場合ではないので押しのけた
数十分後、石野が合流した。 リタは見つかっていたため岸田を連れて再びギルドに戻ろうとしたところ、リタに引き留められた
「待ってください岸田様。 もう少し、いてくれませんか? まだ先ほどの出来事が頭に焼き付いてて怖いのです」
石野はそんな岸田を見てため息をつく
「はぁ、お前はまた女の子をたぶらかしていたのか?」
「ち、違うっすよ石野さん! 別にそんなつもりじゃなくてですね。 てか俺今女っすよ!? リタちゃんも俺なんかに惚れてるわけないじゃないっすか」
「いえ、岸田様がいいなら私は」
ヒシと抱き着くリタは本当に岸田に惚れているようだ
「むぅ、恋愛は自由と言ってもいざ自分の立場となるとどうにも…。 リタちゃん。 俺は旅人だからあちこち行かないといけない。 危険だし、それにリタちゃんにはきっといい男性が見つかるっすよ」
リタにあきらめてもらおうとしたが一向にあきらめそうにないので、また会う約束をして逃げるように宿を後にした
「そうっすか、その5人のうちの誰かが転移者って事っすね」
「ああ、それか、5人供って可能性もあるな」
数日後、件の5人はギルドに戻って来た
ハンターの中でも指折りの実力者である彼らは、サンライトクルセイダーズと名乗って活動している。 この世界の魔物を倒し、人々を守ることを目的としている
リーダーのマイズ・ロットナーを筆頭に、ディエゴ・ホス・アマンドス、カレン・マッケンジー、レナ・マース、キーファ・メイナットーという
マイズはかなりしっかりとした男で、キリッとした精悍な顔立ちにしまった体をしている。 扱うのは剣と盾で、典型的な戦士と言った出で立ちだ
ディエゴは陽気な男で、このパーティのムードメーカー。 昔の映画スターであるブロンソンのような口ひげが特徴的だが、17歳と若い。 メンバーの盾役を担う守りの要
カレンはいつもニコニコしている少女で、笑顔を絶やさない彼女に人々は癒しを得る。 性格も穏やかで、メンバーのヒーラーとしての役割を果たしているようだ
レナは元気な娘で、小太刀に似たナイフを所持している。 ショートヘアがよく似合い、レンジャーという職業で罠の解除や敵の探知に活躍している
最後にキーファ。 彼女は魔導士という魔法使いの上位職で、メンバーの火力を担っている。 眼の色が赤と黄色というオッドアイで、落ち着いたお姉さんと言った雰囲気の少女だ
そして、彼ら全員が転移者だった
石野が今後重要になって来るのでしばらくこの話が続くかもしれません
(本編に追いついていないワケジャナイヨ)