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石野の異世界放浪記10-6

 数時間後、すっかり石野にべっとりと引っ付いたトコと共にもう一度七星たちを訪ねた。 トコがどうしても七星に会いたいと言ったからだ。 どうやらトコは彼女の正体について何かを知っているようだ


「アカシックレコードにもない記録なのにわかるのか?」


「分かるって程でもないっちけど、ちょっと耳に挟んだ程度だと思ってほしいっち」


 石野に抱っこしてもらい、その胸に頬ずりしながら答える。 石野に抱っこをされるのがよほど好きなのか、ずっと緊張していたかのような顔がほころび、猫のように喉を鳴らす

 数時間後に石野たちはようやくクエストから戻って来た七星と燐奈にトコを会わせる


「この子は?」


「ああ、神獣の一人、月兎のトコだ」


「あ、この前いたリュコちゃんの友達ですね?」


「リュコとは友達でも何でもないっち」


「え? そうなの?」


「我とは姉妹のような関係だな。 トコが妹だ」


「ち、ちがうっち! そういうならリュコの方が妹だっち!」


 どちらが姉かで言い争うあたりどうやらトコはリュコには心を開いていたようだ。 何かとかまっていたことも起因しているのだろう


「で、お前、見た感じ異放者じゃないっちか?」


 トコは異放者について自分のしっているかぎりのことを話した

 まずこの話は本当に偶然耳にしたものなので信憑性がないことと、憶測も入っていることを最初に伝えるトコ


 その話を聞いたのは月兎や天人が大虐殺されたその日だった。 大勢の仲間たちが殺されていく中、敵である者たちが言っていた異放者と言う人物。 それはこの様々ある世界の全て、大宇宙とも大世界とも言われる今いるところとは別の大宇宙や大世界。 そこから来た者を異放者と呼んでいるようだった

 敵はところどころで異放者と口にしており、その特徴をまとめると、絶対に死なない不老不死、特殊な能力をいくつか持っており、性格は残忍で利己的。 彼ら敵自身も異放者によってここを滅ぼすよう言われたそうだ


「残忍? 七星はそんな子じゃないです! こんなに優しい子他にはいませんよ!」


「まぁ聞くっちよ。 残忍なのはそいつらを操ってたやつだっち。 七星ちゃんも異放者だけど、そいつとはまた別の者って考えができるっち。 まぁあちきの考えではってことだっちけど」


 もし彼女が異放者だとすればアカシックレコードに一切の記録がないのもうなづける。 つまりこの大世界の者ではないから七星に記録がなかったのだ

 この大世界には不老の者はいても不死者はいない。 それがそのまま七星が別大世界から来たと示している


「そっか、だから私、お父さんもお母さんもいなかったんだ…」


 生まれてすぐくらいに彼女は施設の前に籠に入った状態で置かれていた。 その時には彼女は酷いやけどを負っていた状態で、死にかけていたという。 すぐに病院に運び込まれて治療が開始されたが、そのかいもなく彼女は一度死んでいる。 だが不思議なことが起きた。 彼女が遺体となって霊安室へ安置されている最中に彼女は蘇り、その鳴き声を上げた。 医者たちは奇跡だと言い、その体を調べたが特に変わった様子もなく、彼女が不死だと言うのは誰にも知られていない

 施設で成長した彼女は高校生となり、そこで燐奈と出会ったわけだ


「十中八九間違いないと思うっち。 あんたは異放者。 神様たちも知らない大世界から来た特殊な人間だっちよ」


 トコは幼いながらもその時聞いた言葉を全て理解していたようだ。 彼女はもともとかなり優秀な月兎だったらしく、将来は月兎のリーダーとなる未来もあった


「まぁでもお前はあちきの故郷を襲ったやつらとは関係ないのは視ればわかるっち。 あちきの眼は特別製っちからね」


 トコの狂気の眼はその心理描写までをも映し出し、正しく相手のことを読み解ける。 その結果七星のそのやさしさを、身の内に秘める強さを知った


「私は、ここの住人じゃなかったんだ…」


 うなだれながらも自分のことを少し知れて嬉しさもあるようだ


「気にするなっち。 お前のことはその子がよく分かってくれてるっちよ。 お互い支えあってればきっとうまくいくっち。 あちきみたいに、後悔のない生き方をするっち」


 七星と燐奈の心理を視てかつての友人たちを思い出す。 親しい友人たちはみんな目の前で死んだ。 それも残酷に殺された。 あの時自分が強ければと何度も後悔していたし、死のうと何度も思った。 そんな気持ちをこの二人には味わってほしくないというのがトコの願いだった


「なんにせよ私達は支えあって生きていきます。 七星と私なら、どんな山でも乗り越えれます」


 トコはうんうんとうなづいて満足そうに石野の腕の中に戻った

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