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5-3

 エイシャの城は悲惨なありさまだった。 殺されてはいないが、ここにいた神々は全員手足をもがれて磔にされている。 神の生命力は強く、粉々になっても魂さえ傷つかなければ死ぬことはない。 だが当然痛みはある

 神々の中でも最も状態がひどいのがアズリアとマキナだった

 アズリアの方は手足をもがれた上に上半身と下半身を分けられて転がされており、その頭を男が踏んでいる

 マキナは目をくりぬかれ、男が投げるダーツの的になっていた


「あ、ああ、アズリア姉様! マキナ姉様!」


「その声、エイシャ、ちゃん? 私達はいいから、逃げ、て」


 目の見えないマキナはそれでも妹を心配し、逃げるよう声をかけた


「きたきた。 お前が必要だったんだよ。 力の女神。 お前の力をもらう。 そうすれば僕は完璧になれるんだよ」


「お前は何なんだ? 闇にしては力が強すぎる。 ルワイルはどうしたんだよ」


「あいつのことは言うな! 闇の面汚しめ! なにが戦わない選択だ。 僕たち闇がどれだけ神々に虐げられたと思っている!」


 神々との戦いに敗れた闇はほとんどが封印された。 それを恨んでいるのだろうが、先に仕掛けたのは闇だった。 闇のリーダーであったルワイルの話も聞かず、混沌に操られた幾人かの闇に同調して神々に戦争を仕掛けたのだ。 当然混沌は敗れることも見越していた。 闇と言う邪魔者を消すために操ったのだった。 ただ闇は封印されたのみで消されることはなく、そこだけは混沌の意図するところではなかった。 そのため闇に悪心と復讐心を植え付けた

 中でもこの男、ルディオンは一番汚染されてしまった。 ルワイルの弟にして闇の副リーダーである彼は復讐心ですでに本来の心を失っていた

 

「神々とルワイルを殺す。 それでようやく僕の彼岸は達成されるんだ! そのあとは古の支配者と大神、そして原初、お前もだ! 先に娘を殺してやるよ! お前の目の前で」


 原初は突然動き、ルディオンを蹴り飛ばした。 光を超え、神速をも凌駕する速さにルディオンは反応できず、まともに腹を蹴られた


「ぐぶっ、ハァハァ、速いねぇ原初は。 でもこの程度。 僕には及ばな」


 今度は頭部を蹴り込まれ、ルディオンの頭は弾け飛ぶ


「それ以上その口を開くなら本当に殺しますよ? 混沌に操られていようと関係なくね。 私の娘に危害を加えるのなら容赦しないわよ?」


 すぐに頭の再生が始まるルディオン。 その隙に何人かの神々を助け出すことができた。 しかしマキナとアズリアは未だルディオンの後ろにいるためルディオンに阻まれた


「おっと、こいつらはまだ返せないな」


 ルディオンは素手でマキナの腹部に穴をあけていく


「ああああ!! 痛い! イタイイタイイタイ!! やめっ、あがぁああああ!!」


「姉様! やめて! 姉様をこれ以上傷つけないで!」


 泣きながらルディオンに向かって走り出すが、それをルーナが止めた


「放して! 姉様を助けなきゃ!」


「待ってください。 既に原初さんが動いています」


 どういうことかと訳も分からず見ていると、原初が二人に増えていた。 それも一人はアズリアをすでに助けだしている

 さらにもう一人が増え、その肩に弱り切ったマキナを抱えていた


「ルーナちゃん、治療してあげてね」


 いつの間にか原初は一人に戻り、ルーナの前に二柱の女神をそっと降ろしていた


「なんだよ今の…。 何が起こってんだよ。 原初! 何をしたんだ!」


 ルディオンはたった今起こったことを理解できずに焦っている


「理解する必要はありません。 あなたを、混沌の呪縛から救ってあげます」


 原初が視界から消え、ルディオンの後ろに現れると彼を掴み、自分の体内へ吸収した


「混沌の呪縛とあの時奪っていった力、もらいますね」


「やめろ! 僕はまだ復讐を、全部壊すんだ! 神々を創った世界も! 僕を裏切ったやつらも! お前も! 壊し、て」


 完全に原初に取り込まれるとしばらくして気を失ったルディオンが出てきた

 それとほぼ同時にルーナによる治療が終わる


「どいて! そいつは私が消し飛ばす! 姉様たちをこんな目に合わせるなんて許さない! 二人とも、戦わない、優しい女神なのに…」


 既に手足も目も再生しているが、二柱とも気を失っている。 他の神々もひどいありさまだったが、こちらの方は既に意識も取り戻し始めていた


「ダメよ。 この子も混沌に心を操られた被害者。 本当に恨むべきは混沌その者。 とにかくこの子は私が預かるわ。 ルワイルのことなら知っているから、ルディオンはあの子の元へ返します」


 原初にそう言われ、エイシャは黙った。 混沌の行方は分からないが、ルディオンの回復を待って話を聞くことにした

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