プロローグ3
切り立った崖を見たためか、ルーナはここを絶海の孤島だと思っていた
しかし実態は崖の近くに建てられた大きな城だった
この城は封印の城と呼ばれ、管理しているザスティンたちの団体以外人は立ち寄らない
皆ここがどのような場所なのかを幼いころから言い聞かせられ恐怖していたからだ
今からおよそ数百年ほど前、世界中を恐怖に陥れた存在
それがこの城に封じられた破壊神
名前は知られておらず、ただただ破壊の限りを尽くしていたためそう呼ばれていた
破壊神はかつて急に現れ、次から次へと街を襲い、国を壊し
好き勝手に暴れるだけ暴れ眠りについた
その眠りについた場所に最大級の封印術を施し、そこに城を建てた
封印術を施した一団はその後城の近くに街を作り、エイストラハイムという国を作る
そして子孫たちが代々城を管理してきた
もちろんザスティンもミシュハもその一人である
「さて、ルーナ」
「ここまでは分かりましたね?」
うなずくルーナ
ルーナが連れてこられた場所はエイストラハイム、城の管理者たちが住む管理棟と呼ばれる建物
そこを取り仕切るリーダーのクリアという老女が破壊神について説明した
「では、今度はあなたのことを説明してもらいます」
「私、私は…」
ルーナはこれまでの自分の置かれた環境、車にひき逃げされたこと、気づいたらあの場所にいたこと
姿が変わっていたことなどゆっくりと休み休み語った
クリア含め、管理者たちは絶句した
車という単語は分からなかったものの、馬車と同じようなものと認識し
さらにルーナがこの世界の者ではないことがその会話の節々から読み取れた
「異世界から来た…?」
「いや、転生?恐らくそのクルマとやらに轢かれた時の状況から察するに」
「この子は、一度死んでいますね」
「そのようですね」
「あまりにも描写がはっきりとしています」
「とてもこのくらいの歳の子が考えるような話とは思えません」
クリアは優しくルーナを撫でる
少しビクッと体を震わせたが、そのまま気持ちよさそうにうっとりとしていた
「とにかく、あなた自身には危険はなさそうです」
「ただ、少し力を使うだけでこの街ごと周辺一帯が消えるくらいあなたの力は強いの」
「だから、私たちがあなたに力の使い方を教えます」
「力が制御できるようになるまでかなり窮屈な生活になるでしょうが…」
「もちろん教える時以外に力を使わなければ自由にしていて構いません」
ルーナは恐る恐るクリアに聞く
「あ、あの、お掃除や、ご飯の、支度は?」
「な、何でもやります!」
「だから、だから、殴らないで…」
「ちゃんと皆さんのお役に立ちます!」
クリア達は悲しそうな顔でそう言うルーナを見る
たかだか10歳そこらの少女にこのようなことを言わせた環境
それに悲しみを覚えたから
クリアは再び優しくルーナを撫でる
「ここではそんなことはしなくていいのよ」
「あなたはこれから力の使い方を覚えて」
「そしてしっかり幸せになりなさい」
クリアのその言葉にルーナはあふれる涙を止めることができない
人目もはばからず大声で泣いた
一通り泣き続け、ルーナは泣き止んだ
「ではミシュハ」
呼ばれてクリアの方を見る
「はい」
「あなたはドルレリッサと共にこの子に力の使い方を教えなさい」
「それと、あなたにはこの子の親代わりを務めてもらうわ」
「お、親代わりですか!?」
「私、まだ独身なのですが…」
「ハハ、いいじゃんミシュハママ」
笑うザスティンを睨む
「了解しましたクリア様」
クリアに頭を下げるとルーナに向き直る
「ルーナ、今日から私があなたの母親代わりです」
「遠慮なく甘えていいですからね」
ルーナはそう言われて首を傾げた
彼女は今までずっと愛情というものを与えられずに育ったため甘えるという行為を知らない
「私を頼っていいと言うことです」
「そ、それじゃぁ」
少女のただ一つの願い
それは、抱きしめてもらうことだった
どんな願いよりも優しい願い
ルーナをそっと抱きしめながらミシュハはこの子を破壊神としてではなく
ただ一人の少女として育てる決意をした
小分けにして投稿してるのは長文書くと頭痛くなるからです