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石野たちが同じ世界にいたのは驚いたが、彼らが探していたのが燐奈と七星だとわかった。 石野たちは地球から無差別に異世界に飛ばされた者を元の世界へと返す役割を担っている。 人間たちの王の皇祖神であるアマテラスは自分の子らが異世界に飛ばされている事実を知って嘆き、石野に彼らの手助けをするよう頼んだのだ。 地球の人間は他世界の人間とは違う。 様々な神とアマテラスによって生まれた人間の祖王、五色人。 彼らは絶大な力を持って世界を人で満たした。 その力が地球の人間には受け継がれているのだ。 それ故に彼らは他世界に来ると強力な力を有する
「お義父さん、この子は、その」
石野が無差別転移被害者である二人に近づくとルーナがためらうように話しかけてきた
「その子は不死の力を持った子ぜな」
「不死? 死なないということか?」
目を伏せてうつむく七星、石野は気遣うように「そうか、臨んだ力でもないものな…」と肩に手を置いた
「君たち二人を元の世界に返すことはできるが…。 さて、どうしたものか」
七星に定着した不死の力は、魔力のあるなしに関係がなく、地球に戻ろうとも不死の体が元に戻ることはない。 彼女は他の転移者と根本的に何かが違っているのだった
突然現れたのはルーナちゃんのお義父さんであるという石野さんと言う若い男の人。 かなりかっこいい人で、思わず顔も赤くなった。 その人の横には綺麗な女性。 話し方が男の人みたいで、石野さんにすごくべったりだからきっと恋人かな? 旦那さんをさん付けであまり呼ばないと思うし。 と思っていたら、岸田さんも私たちと同じ被害者で、なんとその際に性別が変わってしまったらしい。 それは何というか、大変なんだろうなぁ
私が不死になったと聞いて石野さんたちは困ったような優しい顔を向けてくれる。 石野さんがかっこよくて顔を背けちゃった。 でも私はもう吹っ切れた。 不死だと言うならそれを受け入れて、死なない体で燐奈を守れればそれでいいじゃない。 どんな攻撃にでも私は耐えれると女神レライア様は言っていた。 それなら盾になればいい。 大切な燐奈の盾に
「私は、この世界に残ろうと思います」
やっぱり、燐奈ならそう言うと思ってた。 彼女には両親がいない。 唯一いた肉親のおじいちゃんもつい最近亡くなったばかり。 私も、同じようなもので、地球に未練はなかった。 燐奈と一緒なら、どんな世界だろうときっと大丈夫
七星は大丈夫だろうか? もしかして、何とかして死のうなどと考えてはいないだろうか? 私の頭の中は悪い想像で満たされている。 七星は優しい。 誰よりも、何よりも守りたい存在。 愛おしくて仕方がない。 いつか七星も私と同じ気持ちだと言ってくれた。 私達はどちらも両親がいない。 今はもう、二人とも天涯孤独だった。 だからこそ地球に戻るという選択肢はもはやなかった
「私も残ります! 燐奈と一緒に!」
やっぱり、七星ならそう言うと思った。 だから私はこの子を守らなきゃいけない。 たとえ不死となっても彼女は私の一番大切な親友だもの。 幸い私の力は守ることに特化していると言ってもいい。 私達を迎えに来てくれたという石野さんたちには悪いけど、戻る気などなかった
「そうか、アマテラス様からはなるべく転移者の気持ちを汲んでくれと言われている。 残ると言うならば俺たちは無理に君たちを返せないからな」
石野さんはそう言うと一つの光る宝石のようなものをくれた
「これは地球に君たちを返してくれる神の力が込められた宝石だ。 願えばいつでも帰ることができる。 もしここに永住するつもりであろうと、ひょんなことから帰りたいと思うかもしれない。 持っておいて損はないと思うぞ」
確かに…。 七星が帰りたいと思った時に帰れなければ、それは七星を傷つけてしまうことに繋がる。 そうならないためにもこれは必要だと思う
「ありがとうございます。 ありがたく貰っておきますね」
宝石をしまうと次は闇と呼ばれるあの化け物を生み出した存在の話へと移った
パリケルは考え、レライアに探知してもらい足跡を追うと言う提案をした。 今のレライアならば簡単にこなせるだろう
「分かった。 だけどあたいには創造主の方をどうやって追えばいいかが分からないんだよね。 パリケル、何か手はないか?」
「ふむ、アカシックレコードに記録があるぜな。 この世界の創造主が何をたくらんでいるのかまでは分からないけど、何をしているかは分かったぜな」
パリケルは四号を起動すると、目からホログラムで出来た地図を表示する。 正確に書かれた地図で、さらには居場所までの道のりまでもが表示されていた
「一目瞭然だな。 いつも思うが反則級だなお前は」
「羨ましいかぜな? 俺様ってば天才なんだぜな。 脳筋の誰かさんとは違って」
「誰が脳筋だ誰が。 私だって考えることはできる」
あまりにもパリケルに馬鹿にされ続けてきたので、最近ではリゼラスもその返しがスムーズになっていた
「じゃぁここに向かえばいいってことだね? 僕とレライアさんで行ってこようか?」
女神二人ならばこの世界の創造主程度ならば簡単に倒せるだろうが、仮にもこの世界の創造主だ。 倒したときに出るこの世界への影響は未知である。 そのためパリケルは拘束を目的とするように促した
「オッケー、任せといてよ」
こうしてレライアといなみはすぐにその創造主のいる場所へ飛んだ