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石野の異世界放浪記10-4

 やることもなく寝ている折にギルド内が騒がしくなっていることにようやく気付いた。 起き上がって下に降り、何やら騒がしい地下への階段を降りて適当に捕まえた冒険者に話を聞くと、女神と名乗る少女の従者と、ほぼ世界の最高峰のミスリル級冒険者との戦いが、地下演習場でおこなわれるとのことだった


「女神、どう思うっすか石野さん?」


「ふむ、別の女神かもしれないが、一見してみる価値はあるだろう」


「なんだ? 我も見てみたいぞ!」


 突然飛び出したリュコに周りの冒険者は少し驚いたようだが、それよりも戦いの方が気になるようで、地下は押し合いへし合いの喧噪状態だった


「見えぬではないか! よし石野。 我を抱えて見えるようにするのだ!」


 石野はリュコの言う通り肩車で試合を見せた。 リュコにはその様子を伝えてもらうつもりでいたが、何やら様子が変だった


「これは! この神力、アマテラス様と同じなのだ!」


 どうやら自分の主であるアマテラスに似た神力を感じて喜んでいるようだ。 尻尾をちぎれんばかりに振るため後ろにいた冒険者たちを何人か気絶させてしまった


「アマテラス様と同じ神力って、上位の神様がここにいるってことっすかね?」


「そうだろうな。 どうだリュコちゃん。 誰が戦っているか見えるかい?」


「うーん、アマテラス様じゃないみたいなのだ…。 会いたかったのに」


 アマテラスは神獣たちにとって主であり母でもある。 名前も直接つけてもらっている。 名前のセンスはともかくリュコたちにとって大切な女神なのだ


「戦っている人の姿は見えるかい?」


「うむ、男と女が戦っているな。 男は獣人族の拳闘士、女はエルフの騎士のようだぞ。 エルフの方から神力を感じるから神の加護がついているのは間違いないな」


 的確な観察眼で石野にしっかりと伝える。 そうこうしていると部屋全体が大きく揺れた。 リュコの報告によると、男の方が大したことない技を放っただけだそうだ。 その後すぐに男はエルフの攻撃によって倒れる。 エルフの方は神速を出せるほどの実力の持ち主だとリュコは感心していた


「決着がついたようだぞ。 男の方も最後の一撃は少しだけよかったな」


 ようやく冒険者の塊が開け、演習場の様子が石野たちにも確認できた。 そこにいたのは見知った顔と、愛しい顔だった


「ルーナ!」


 石野はその愛しい顔の少女に走って抱き上げた


「お、お義父さん!?」


 養子として迎えた娘、ルーナは石野の顔を見てかなり驚いているようだった。 以前に再開して別れてからそこまで時間は経っていないが、ルーナは再開を大いに喜んでいた。 それは石野も同じで、ルーナのことをずっと離さないのではないかと思うほどだった

 それから冒険者に取り囲まれ始めたのでギルドに頼んで部屋を一室借りた


「どうしてここに? いつ来たんだ?」


「二週間ほど前です。 どうやらここには闇が来ていたようで、この世界の創造主と何かをたくらんでいたようなんです。 お義父さん、何か変わったことはなかったですか?」


「いや、俺は特には見ていないな…。 岸田、リコに聞いてみてくれないか?」


「はいっす」


 岸田はリコの玉を取り出して召喚した


「主殿! リコ、推参いたしました!」


 やはり忍のように現れるリコ。 岸田に呼び出されて嬉しそうに尻尾を振って耳をピコピコと動かしている


「なんと! 闇が来ていたんですと!? それは許せませぬな。 主殿! 拙らで闇を討ち果たしましょうぞ!」


「待って待ってリコちゃん。 もうこの世界に闇はいないってレライア様が確認してるから」


「レライア様…?」


 そこでリコはようやく気付いた。 ルーナの横にいるのが自分の大切な本当の主人、雷の女神レライアであることに


「本当に、レライア様ですか…?」


 リコはわなわなと震えて質問をする


「すまなかったねリコ。 アマテラスからお前を託された時、絶対に離れないと誓ったのに、あたいは」


「そんなの良いんです! レライア様が無事ならそれで!」


 リコはレライアに抱き着いて泣きじゃくった。 死んだと思っていた主人が突如として現れ、今まで張っていた緊張の糸が崩れ、見た目相応の少女らしさでレライアの胸で泣き続ける


「なるほど、本来のリコちゃんはあんな喋り方じゃないんすね。 まぁあっちも可愛らしくていいっすけど」


 ひとしきり泣いて満足するとレライアの手から離れる


「レライア様! 拙はこの岸田様と必ずやアマテラス様に出された指令を完遂して見せます! そして、それが終わった暁には、また」


「ああ、わかっているよ。 また一緒に暮らそう」


 それを聞いて飛び跳ねて喜び、リコは玉へ戻って行った


「やっぱりリコちゃんも普通の女の子と変わりなかったっすね。 気を張っていたんすね」


 リュコとリコ、二人の神獣のことはよく分かり、懐かれもしたが、問題は最後の一人、トコだった。 悪戯兎でその悪さゆえに一度は全身の皮をはがれて殺されかけた月兎の少女。 それを助けたのは大黒天、オオクニヌシノミコトという国造りの神様だ。 彼女は大恩あるオオクニヌシとその大叔母であるアマテラスやツクヨミ、スサノオの三神の言うことしか聞かない。 それ以外のものには相も変わらず悪戯を仕掛け続けているのだ。 今はまだ玉の中で鳴りをひそめてはいるが、彼女を従えるとなると相当に骨の折れることとなるだろう

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