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 翌朝、私は沈み込む七星を支えながらキャンプを去った。 色々あったけどオークたちが殺されていたこと、得体のしれない化け物や偶然出会った女神様のことを報告しなければならない。 女神様は自分達のことは報告しても構わないと言ってくれた。 その方が説明しやすいだろうとの配慮だ。 ただし七星の力は絶対に秘密にしないと。 それは私もその通りだと思う。 もしこの子の力が知れた場合、化け物として処理、出来なければ封印もあり得るし、力を求められて使いつぶされ心が壊れると言った最悪の未来がいくつも浮かんでくる。 だらか私が守らなきゃ


「もう大丈夫。 ありがとう」


 七星は私の支えなしで大丈夫と言い、歩き始めた。 その肩を落として明らかに落ち込んでいるのが分かった。 でもその足取りはしっかりしていて、何かを決意しているようにも感じた


「さて、報告はわしらの方でしておくからお前さんたちはゆっくり休むとええよ」


 ボルクドさんはひげをさすりながらニコリと微笑んだ。 その笑顔に救われる気持ち。 きっと私たちを安心させようとしてるんだと思う。 同じように銀級冒険者たちも私たちのことを思って良くしてくれた。 感謝してもしきれない


「え? 女神さ、え? ちょちょ一寸待ってください! そんな、えええ、私に言われてもそんな」


 混乱する受付嬢さんは席を立つと奥にあるギルドマスターの元へ走った。 確かに急に女神さまが来ましたと言っても信じれるものではないし、さらにその女神さまがこの事件の犯人を知っているうえに追っていると言われれば驚くわね


「女神が来たと言ったか? それは本当なのか?」


 女神の降臨などいまだかつてない事態にギルドは慌ただしくなる。 それにあの女神さまが言うにはこの世界の神より高位の神。 最高位の中でもさらに上位と呼ばれる雷の女神様らしいし、ギルドマスターですら話の大きさについていけていないみたいだわ


「でだ、人間のギルドマスターとやら、あたいらがちゃっちゃとこの事件の犯人を倒してくっからさ、あんたらは手を出さないで欲しいんだよね」


 レライア様がそう言うと冒険者の一人が声をあげて突っかかっていった


「何を勝手なことを! 何が女神だ! 嘘に決まっているではないか!」


 偶然ギルドに居合わせたこの支部唯一のミスリル級、生ける伝説と呼ばれる拳王カラドさんだった。 その拳は竜を一撃で沈めたなど数多くの逸話があるけど、実力は確かなもので、さらに優しいことから人気も高い獣人族の男性。 虎の獣人らしく、耳と尻尾には縞模様があって少し可愛いとも思ってしまう


「もしお前たちが本当に女神だと言うならその実力を見せてみろ!」


 拳をレライア様に向けるからカラドさん。 その目は本気だった。 きっと詐欺師だと思っているんでしょうね。 でもカラドさんはあの強さを見ていないから分からないんだと思う。 私だってあの化け物との戦いを見ていなかったら信じていなかったと思う


「よかろう、その相手、女神の従者たるこの私が勤めよう」


「あの、リゼラスさん? いつから女神の従者になったんだぜな?」


「い、いいだろう別に! 騎士として女神に仕えるなど夢のようではないか!」


 この二人はいつもこういうやり取りをやっているのだろうか? やけに板についていて、仲がいいのがうかがえる。 ちょっと毛色が違うけど私と七星みたい


「やはり女神と言うのは嘘なのだろうな。 こんな道化のような従者を連れているのだからな」


「ほら見ろ、言われているぜな」


「うるさい!」


 カラドさんとリゼラスさんはこのギルドの地下にある演習場で戦うことになった。 あのミスリル級が戦うとあって観客は超満員のようで、入り切れずに地団駄を踏む人もいる


「初手は譲ってやろう。 当てることができるのならば当てて見せるがいい」


 馬鹿にされて顔を真っ赤にし、一瞬で間合いを詰めて拳を撃ちだした。 周囲にもその衝撃が走って演習場を揺らしている。でもそんな拳をリゼラスさんは片手で防いでいた。 見ていた観客たちもどよめいているけど、それ以上にカラドさんが驚いていた


「俺の、神速の一撃が…」


「この程度で神速? 精々風速がいいところだぞ? 神速とはこう出すのだ」


 突然カラドさんが倒れ、おなかを抑えて痛がり始めた。 そのすぐ後にパーンと言う音が聞こえて…。 リゼラスさんの方を見ると彼女が二人いた。 どういうことか困惑していると二人のうちの一人がぶれて消え、一人に戻った。 これは、多分だけど速すぎた? あまりにも速くて残像を残したんだと思う


「ぐ、がはっ。 ハァハァ、嘘だろ…。 俺が一撃、で…。 くそっ!」


 独自の呼吸法で体力を回復すると立ち上がってまた構えた。 あれだけの力の差を見せつけられてもカラドさんの目はやる気に満ちていた。 と言うより笑っている。 相手を好敵手と見て火が付いたんだと周りの人たちは言っていた


「背水の陣!」


 今度は身体能力を大きく向上し、防御をかなぐり捨てた


「すまなかったな。 最初のは本気じゃなかったんだ。 今度は全力を出させてもらおう」


 怒りはどこへやら、冷静さを取り戻して次々に身体能力と速さを底上げしていくカラドさん。 その目には本気でぶつかれる相手への敬意と嬉しさがうかがえる


「真なる一撃、破塵!」


「ちょ、ちょっと! こんなところでその技はだめですよー!!」


 受付嬢さんが制止するのも聞かずに撃ちだされた一撃は、演習場を大きく揺らしたのちに壁に大穴を開けた。 それは山をも砕く一撃だった、らしいんだけど、リゼラスさんはそれを剣で少し逸らしただけで回避していた


「今のはなかなかだったぞ。 神速までは程遠いが、音速は軽く超えていたな」


「ハハ、ハハハ、俺の乾坤一擲の一撃まで簡単に…。 俺の、完全に負けだな。 あんたはまさしく女神の従者ってわけだ…。 てことはそちらの方は本当に」


「そういうわけだ。 あの方は雷の女神レライア様、そしてその隣にいる白い子は光の女神さまだ」


 もはや言葉もなく倒れ込むカラドさんは世界は広いと言って笑った



 どうやら信じてもらえたようで、ルーナも一安心した。 そこにふと見知った顔が現れた。 彼らはルーナを見つけると嬉しそうに駆け寄って来た

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