4-49
ルーナたちが新たな世界に降り立ってすぐのことだった
すぐ近くにあるあの気配。 見過ごすにはその気配は危険すぎた
闇本体ではないが、その闇によって浸食されたであろう何かが近くにいる
「放っておけばこの世界の住人が危ない。 追って討伐すべきだろう」
「幸いまだ近くにいるみたいだよ」
いなみは気配を感じ、その何かがいる方向を見る
「うむ、俺様は闇化したモノが何なのか少し調べておくぜな。 あとで追いつくから先に行くといいぜな」
パリケルは通信機を配り、その場にとどまって四号を防衛モードで待機させ、この場に残された痕跡を調べ始めた
周囲はまるで爆撃でもあったかのように木々が散らされ、地面は焦げ、どういうわけか捻じれてなお成長している植物もあった
「パリケル、気をつけろよ」
ルーナを先頭に闇化したモノの気配を辿り、一同は岩場に開いた裂け目を見つけた
「この中、みたいですね」
「気を付けて、入り口付近に何体か気配があるよ」
裂け目に入るとすぐにその正体が分かった
二匹のネズミ型の魔物、それにカエル型の魔物が三匹いた
「早速だね」
いなみは手をその闇化した魔物たちに向け、光を放った
それにより魔物は灰となって消える
「浄化完了っと。 まだまだたくさん気配があるね。 奥の方か、放っておくわけにもいかないし、全部一応退治しておこう」
「そうですね。 何日かかるかわかりませんが食料はたくさんあるので奥へ行きましょう」
ルーナについて先に進むと今度はオークと呼ばれる魔物が何者かに引き裂かれ、殺されているのが見えた
「これは酷いな。 恐らく闇化した魔物にやられたんだろう」
この世界のオークは温厚で、植物や果物しか食べない。 人間とも友好的な関係を築いており、森ではその管理を行っている
そのオークたちが無残な殺され方をしていた
「奥に血が続いていますね」
その血痕を辿りつつ闇化した魔物を倒しながら奥へ奥へと進む
すると開けた場所に着いた
「何か、いるね」
その内部に響く息遣いと足音
カチカチと言う歯ぎしりのような音も聞こえた
「そこだ!」
いなみが閃光を潜む何かに向けて放った
「キシェェエエエエ!!」
闇化した魔物と思われるその何かは蜘蛛のように壁を這う化け物で、顔は人のようだが目も鼻もなく、あるのは大きく開いた口、手足は長く鋭くとがった爪が生えている
「うわ、気持ち悪っ」
ゆっくりとこちらに迫ってくる化け物は口をさらに大きく開くと頭部が裂けて耳のような器官がむき出しになった
そこから超音波のようなものを発してルーナ達を探している
いなみの声を聞きつけてすぐに向かってきた
「光の力、トワイライトレイ」
いなみが指で線を描くように地面と水平に動かした
一瞬でその化け物の首が転がり落ち、胴体が床へと倒れ込んだ
「何だったんだこの化け物は」
「魔物じゃないことは確かだ。 あたいもこんなのは見たことがないよ」
闇化しているだけではなく、この世界には明らかにいないであろう化け物
闇はこの世界で何らかの実験をしていたのではないかと思われた
化け物を倒してから二日後、ルーナ達は洞窟の中間あたりまで来ていた
「どれだけ広いんだ。 もうなん十体と化け物を倒したぞ?」
「さすがに疲れてきたね」
「そっか? あたいはまだまだいけるけど」
話しながら進んでいると、後ろから迫る気配を感じた
「やっと追いついたぜな! どれだけ奥まで行ってるんだぜな!」
プリプリと怒りながらもパリケルは仲間たちに会えてホッとしているようだ
「さて、合流もできたことだし、面白いことが分かったから話しておくぜな」
パリケルは自分が調査した結果を四人に話して聞かせた
まず闇化したこの世界の魔物は弱い魔物ばかりで、この世界の銀級と呼ばれる冒険者でも倒せるレベルだという
しかしながら得体のしれない化け物はこの世界どころか、地球での空想の産物、ホラー映画に出て来る化け物だということが分かった
つまり世界のどこにも存在しないはずの化け物だった
「それって一体どういうこと? 闇が生み出したってことなの?」
「俺様のアカシックレコードによると、闇と協力している中位の創造主が作り出したと記録しているぜな」
中位の創造主とは自分の世界でならいかなるものでも創り出せるある意味神より厄介な存在だ
それが闇と通じているとわかった
「ならその創造主を倒せばいいんじゃないか? あたいやいなみ、ルーナなら倒せると思うけど?」
「うむ、そいつと出会った時は頼むぜな」
パリケルと合流し、洞窟のさらに奥へ進みつつ、恐悪に凶悪な化け物を滅ぼしていった
奥に行くにつれ醜悪極まりない、人を恐れさせ、残虐に殺すことしか考えていないような化け物が増える
いつしかルーナは黙り込み、その恐怖に飲み込まれるかのように震え始めていた
「あたいらはともかく、この子にはちょっとばかし刺激が強いみたいだね。 ルーナ、こわかったら目つぶってなよ。 あたいらで倒しとくからさ」
「で、でも」
「いいからいいから」
ルーナがギュッと目をつぶると、突如サニーがシフトして出てきた
「お姉ちゃん、休ませたいから私が戦うわ。 中から見てたけど、あんな怖がらせるしか能のない化け物何てどうってことないわよ」
それからも化け物を消し飛ばしつつ進み続け、三日後にようやく最奥へとたどり着いた