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石野の異世界放浪記10-2

 この世界に唐揚げはなかったが、どうやらフリット(揚げ物)はあるようで、街の屋台にはメサ鳥という鶏のような鳥の胸肉を使ったフリットが売ってあった


「これはっはぁあ!! 唐揚げじゃないのか? 唐揚げだろ? よし、おい石野、これを買うといいぞ」


「待ちなさい。 お金がないんだ」


「そんなこともあろうかと、さっきのチンピラどもからもらっておいてやったぞ。 ほれ」


 リュコは手に持った小袋を石野に見せる


「うわ、スリじゃないっすか。 こらリュコちゃん! スリなんてしちゃだめっす! いくら相手が犯罪者とはいえ、同じことしちゃだめなんすよ!」


 岸田はリュコの手をパチンと叩いて叱った


「え? だって…。 お金、無いって…。 グスン、ひっぐ。 お金ないもんグズッ、我、良かれと思って、うぐぅ、うえーーん」


 リュコは叱られたことがなかったため、初めての経験に大泣きしてしまった


「お嬢ちゃん、そんなにフリットが食べたいのかい? よし、お嬢ちゃん可愛いからこれをあげよう。 フリットだけにね」


 店主のシャレには反応しなかったが、フリットが五個入った器をリュコに渡すと、リュコは泣き止んで目を輝かせた


「いいのか! 我にくれるのか!」


「ああ、食べてみな」


 リュコは一つをつまんで口に頬張った


「んーーーーー! んまいぞ! 店主! 最高だぞこれ! ありがとう!」


 元気にお礼を言って次を頬張る


「ちゃんとお礼は言えるんすね」


「基本はいい子なんだろう。 だが幼いゆえに善悪の区別がはっきりとはしていないみたいだな」


「そこはおいおい教えて行けばいいっすよ。 店主、どうもありがとうございました」


「いいよいいよ。 また寄って買ってくんな」


 気前のいい店主の店を後にし、この世界での転移被害者の捜索に従事することにした


「リュコ、君は探知なんてできないのかな?」


「我は人間がどこにいるかくらいしかわからんぞ。 一番得意なのはリコなのだ」


 リコは麒麟の少女だが、彼女は主と認めるまでは力を貸さないと言っていた

 石野たちは頭を抱える


「なぁリュコ、あの子はどうやったら認めてくれるんだ?」


「そんなの簡単だぞ。 力を示せばいい。 我ほどではないにしろ、リコも相当に強いぞ。 戦うなら人のいない場所でやるといいぞ」


 フリットを食べて機嫌がよくなったのか、スラスラと答えてくれた


「それならまず彼女に俺たちを認めさせる必要があるっすね。 石野さん、街に来る途中にあった平原、あそこならいいんじゃないっすか?」


「そうだな、そこでいいだろう」

 

 石野は岸田に馬の玉を渡す


「この子はお前が面倒を見た方がいいかもな。 見た感じこの子は力が入りすぎている」


「そうっすね。 やれるだけやってみますよ」


 平原は大きく広く、ところどころに爆撃の後のようなクレーターがあることから、魔法の試し打ちや訓練の場所としても使われていることが分かる

 現に数名が新たに覚えたであろう魔法を行使している様子がうかがえる


「じゃぁ呼ぶっすよ」


 馬と書かれた玉を掲げると、リコが現れて岸田を睨んだ


「拙を従えようとしているようでござるな。 しかし拙より弱い者に従う気はない故、この場で戦っていただこう。 拙に勝てれば貴様を我が主と認めてやろうではないか」


 腰元から短刀を抜き、岸田に向ける


「神刀、雷角(らいかく)


 短刀は雷を帯びており、少しかすっただけで相手を痺れさせる能力があった

 さらにこの雷自体はリコのものであり、短刀の能力は別にある


「さぁかかってくるがいいでござる。 拙の速さに追いつけるものなし!」


 雷で反応速度を強化し、地面をける

 恐るべき速さで移動するが、岸田の目はそれを追っていた


「遅いっすねぇ」


 同じように岸田は走り出し、リコの速さに追いついた


「な! 拙の速さに追いついただと!?」


 お互い音速を超え、それでもなお加速を続けるが、段々とリコの速度は落ちていき、逆に岸田の速度は上がっていった


「馬鹿な! 拙が、追い抜かれるなど…」


 それでもリコはあきらめずに短刀で岸田を斬ろうと迫った


「いよっと」


 岸田は楽に神剣レイメイデンでその短刀をはじいた

 手から飛ばされた短刀を雷によって得た磁力でその手に戻し再び切りつけるが、それもやすやす防がれてリコは驚愕の表情を浮かべる


「まだまだ! 神術、雷王魔手(らいおうのましゅ)


 リコの背中から雷で出来た四本の腕が生えて岸田につかみかかった

 慌ててバックステップで躱すも光の速さで追いかけるその手に掴まってしまった


「神術、麒麟慈牙(きりんのじが)!」


 麒麟そのものの形を現した雷が岸田に噛みつくと、高圧力の電流を体に流した


「あっがぁああああ!!」


 体は痺れ、岸田は倒れる


「あ、やりす、ぎて…。 拙は…。 ただ…」


 相当な電圧で感電した岸田を見てやりすぎたと思ったのか、リコはへたり込む


「う、ふぅ、はぁはぁ、危なかったっすよ。 いやぁうまく表面を流れてくれてよかったっす」


「え? ぶ、無事なのでござるか?」


「危なかったすけどね。 体を絶縁性にしてたおかげで何とかなったすよ。 ちょっと火傷しちゃったっすけどね」


 岸田の腕、そして頬には少しただれた跡があったのだが


「まぁこのくらいの火傷なら」


 岸田は体の治癒力を高めてあっという間に治してしまった


「で、でたらめでござるよ!」


 リコはへたり込んだままの姿勢で岸田の能力の高さに驚いた


「ほい、チェックメイトっすか?」


 岸田のレイメイデンを首元に着きつけられ、リコは負けを認めた


「貴殿を主と認めるでござる。 拙はリコ、神獣にして雷電の支配者でござる」


 リコは雷の神レライアの加護を受けていた

 雷と電流の扱いはお手の物だ

 その力を使って探知もできるという


「ふむ、その転移被害者とやらの居場所を調べればいいでござるか? たやすいことでござる」


 リコは空気中に微弱の電気を網のように放って世界中に張り巡らせた


「ワコやニャコほど正確ではないが、大体の居場所は分かるでござるよ。 主殿、拙に任せて休んでるといいでござる」


 リコは本来主に仕える侍や忍気質の少女であるため、主の役に立つのが嬉しくて仕方ないようだった

 

 ちなみに彼女の神刀の能力は雷を当てることで色が白から赤、赤から黄色、黄色から蒼に変わる

 赤い時は大幅に攻撃力が上がり、また、刀で斬りつけれる範囲が増える

 黄色の時は半径100メートルに大量の雷を降らせる

 青い時はどこにいようと必ず当たる雷をいくらでも落とすことができるようになるというものだ

7月7日の7時投稿

777でスリーセブン

いや特に意味はないです

七夕なので願い事でもしましょう

信じていれば必ずかなうはずです

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