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一行はルーナがリゼラスに襲われた公園へと来ていた
「あの時は私も操られていたとはいえ、とんでもないことをした…。 サニーちゃんが止めてくれなければ私は罪もない人を…」
「襲われた人々は傷一つなく回復していましたよ。 サニーの中から見てましたから」
この公園でかつてルーナとリゼラスは対峙した
エイシャに操られていたリゼラスはその手で一般市民に手をかけたが、ルーナの中に眠っていたサニーが目覚めて彼女を止めたのだった
複雑な気持ちで公園で遊ぶ子供達を見ていると、声をかけられた
「ちょっといいかね?」
話しかけてきたのは白衣を着たおじいさんだった
「君はもしかして…。 やはりそうだ、間違いない。 この写真の子、ルーナちゃんじゃないのかね?」
おじいさんはルーナの顔を見て確信する
「は、はいそうです。 あなたは?」
「ああ、すまない。 私は赤井と言って、石野…。 君のお義父さんの友人だよ」
赤井はルーナに諸々の事情を話す
「なるほどぜな。 その無差別転移の原因、俺様なら突き止められるぜな」
「ほ、本当かいお嬢ちゃん!」
「お嬢ちゃんは止めるぜな。 これでも60歳は超えてるぜな」
「わ、私と同じくらいなのか…。 いやはや、異世界の技術? それともそういう種族なのか?」
「今はそんなことどうでもいいぜな。 あんたの研究のサンプル、資料をよこすぜな」
「あ、はい」
赤井は思わず敬語になり、自分の研究室へと案内した
彼の研究室はパリケルの研究室のように片付いておらず、ところどころに資料や機械が散乱していた
「すまないね、片付けは苦手なんだ」
がさがさと散らかったゴミを片付けようやくルーナ達が座る場所が確保された
赤井は散らかった書類から資料を取り出し、ノートパソコンを広げてとある動画を見せた
「すぐ見て解析するからちょっと待つぜな」
渡された資料にはこれまで世界中で行方不明となった少年少女のリストと、磁場の乱れに関する報告、空間のひずみがある個所、そして神域について書かれていた
「なるほど、これは…。 よくここまで調べたもんだぜな。 四号ちゃん、この資料をまとめてくれ」
人型に変形した四号に行方不明者のリストと磁場の乱れがあった場所のリストを渡す
それを取り込んでデータにし、解析と分析を始める四号
「あと数分で解析結果が出るはずだぜな。 いくつかの改造を経て四号ちゃんはどんどん進化しているぜな」
四号はしばらくするとチーンという音と共に資料を取り出した
「ご主人、これ」
「しゃべった!?」
今まで話したことのない四号に驚く一同
「ああ、少し前、タブのいた世界でAIの技術を組み込んだんだぜな。 自分の意思で色々出来るようになってるんだぜな」
「よく分からんが、すごいな」
「まぁうちの妹のマキナには負けるけどな」
レライアは妹を自慢するかのように横やりを入れた
「レライア様、今ちょっと真面目な話をしてるので」
「あ、そ、それは、ごめん」
パリケルに叱られてシュンとする
「さて、解析結果だけど、どうやらこれには世界の意思が関係しているみたいなんだぜな」
「世界の、意思ですか? それは一体…」
「まず初めに、この世界、地球という世界は完成された世界と言われているぜな」
「それはあたいも聞いたことがあるね。 兄さんがよく言ってたよ」
「そう、そしてこの世界に住む種族は人間族だけなんだけど、ここの人間は特殊なんだぜな。 最初に生まれた人間族たちで、神がこの世界で最初に生み出した五色人からここの人間たちは生まれたんだぜな」
「五色人?」
「うむ、五色の王と呼ばれる王様が最初の人間だぜな。 まぁそこは今割愛するぜな。 この五色の王は相当に力を持った人間たちだった。 神力が宿っていたってことだぜな。 それ故にその子孫たるこの世界の住人たちは恐ろしいほどの力を秘めている者たちが多いんだぜな。 ただ、この世界には力を発することができない。 自らに宿った力を使うためには体を再構築して使える体に変換しなきゃならないんだぜな」
パリケルの説明を真剣に聞く一同
「石野と岸田を覚えているかぜな?」
「な!? 二人に会ったのかね?」
「はい、お父さんたちはこの世界から飛ばされてしまった人たちを帰還させるためにいろいろな世界を回っているようでした」
「そうか、無事ならいいんだ」
「話、続けていいかぜな?」
「あ、ああ、すまない」
「あの二人、石野は少し違うけど、どちらも特殊な力を持っていたぜな。 石野は確か、地球から飛ばされた能力者と心を通わせることで彼らを召喚する力、岸田は、色々持ってたみたいだぜな。 これは彼らが世界を渡るときに得た力だと神獣の子が言ってたぜな。 つまり被害者たちも同じように別世界で体を再構築されて能力を得てるはずぜな」
皆その解釈にうなずいた
「そしてここからが本題だぜな。 彼らは力を持っている。 それも一人でその世界を救えるような。 ここで世界の意思。 俺様は大いなる意思と呼ぶぜな。 その大いなる意思は彼らを様々な世界へと飛ばし、力をつけさせていると考えるぜな」
「力を? それはなぜ?」
「これから大きな戦いがあるからだと思うぜな。 それも、全ての世界の存続が揺らぐような事態が起こる。 俺様はそう過程したぜな」
とんでもない話に一同は黙り込んだ
大いなる意思は世界を存続させるために力ある者を選び、その力を鍛えるために飛ばした
それが無差別転移の真相だったのだ