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4-44

 闇を止めなければ全ての世界がめちゃくちゃにされるだろう

 そこに生きる生命は闇に染まり、やがて世界は崩壊する

 そうさせないためにも、蠢く闇を止めなければならない

 一旦ベクトの指針に従うのをやめ、闇の気配を辿ることにした


「母様のおかげで闇の気配がどこにあるのか手に取るようにわかるようになったよ。 気配を探るのはあたいに任せてルーナちゃんは転移に集中して」


 レライアはさっそくマナリシアから受け取った力を使って気配を探り始める


「へぇ、こんな感じなのか。 なるほどねぇ。 お、掴んだ! ルーナちゃん、転移お願いね!」


「は、はい!」


 レライアの手を握り、その気配を共有して転移を開始した

 辺りに磁場嵐が発生し世界を渡った


 ビル群立ち並ぶ大都会のど真ん中

 突如現れた少女たちに周りにいた人間たちは驚きを隠せないでいた


「ここは…。 この懐かしい匂い、気配。 もしかしてここは」


 そこはよく見知った世界だった

 ルーナが最後の転生を果たし、元の世界へ戻るきっかけを与えた場所

 地球、ルーナが住んでいた東京だった


「あれ? 僕らの姿が…」


「人間になってるぜな! なるほど…。 これがこの世界にあるという秩序の力。 アカシックレコードの通りだぜな」


 この地球という世界には魔力がほとんどない。 神力も神域にしか届かない

 そのため、別世界の住人が紛れ込み、人間と違う姿ならば人間へと自動で変えてしまう

 この世界の住人を混乱させないためだ

 ここはいわば完成された世界。 人間同士で未だ争うものの、いずれ世界ごと進化する可能性がある

 そのため神々は目をかけ、守っている

 そして、この世界の住人には特性があった

 別世界へ渡ると体を一度分解し、再構築して何らかの力を手に入れることだ

 それが神々がこの世界を守っているもう一つの理由でもある


「周りの人たちが…。 見てるね」


「見てますね」


「警察が! すぐ逃げましょう!」


 騒ぎを聞きつけて警察が集まり始めていた

 野次馬に向かって走ると人垣が割れて道ができた

 得体のしれない少女たちを恐れているようだ


「すいません! どいてください!」


 ルーナは日本語で人々に話しかけ、そのまま走り抜けた


 数十分後、人気のない路地裏で話し合う


「確かにここに闇の気配がある。 それも強力な。 あたいで勝てるかどうかってとこだね」


「大丈夫だよ。 いざとなれば僕とサニーちゃんもいるし。 協力すれば何とかなるよ」


 ここには確かに闇の気配があった

 それも今まで出会った闇よりもはるかに強力な気配が


「どうする? 行ってみる? 場所なら大体の位置は掴めてるよ」


 レライアは任せろとばかりにルーナに聞いてみる


「はい。 ここは私の第二のお父さんの故郷です。 絶対に壊させたりしません!」


「よっしゃ。 任せときなさい!」


 彼女の案内で闇の気配が最も濃い場所、京都へと向かった

 人間の姿になったものの、力は十分発揮できる

 魔力はさほど必要ない。 彼女らには体内に莫大な神力があるから

 転移の力で簡易の転移を果たし、あっという間に京都へと飛んだ


「濃い気配。 この街全体に広がってるみたいだ。 しかも封印が解けかかってる」


 地面に手を突けたレライアは今の闇の状況を伝えた


「いつ解けてもおかしくない。 封印が解ける前にあたいらで奴らを消滅させる。 できるかい? ルーナちゃん」


「はい。 サニーが使える消滅の力を使えば倒せると思います」


「ああそうか、兄さんの力も使えるんだっけ? 頼もしいな」


 レライアは地面につけた手に神力と雷の力を流した


「封印は解けた。 解けたばかりならまだ力も弱いはず。 でも気を抜かないでね!」


 町全体が軽い揺れに包まれる


「来るよ! 備えて!」


 吹きあがる闇。 それは一点に集まると二人の人型となった


「ふぅ~。 ようやくお目覚めって感じ」


「何で神が俺たちの封印を解いたかは知らねぇが。 まぁいい。 俺の話を聞く気はあるか? 神ども」


 それは予想外の言葉だった

 二人は争いではなく対話を望んでいた


「あちきはテナ。 こっちは相棒のゼットだよ」


 二人は今まで出会った闇よりも明らかに強いのだが、まるで敵意を感じなかった


「あなたたちは本当に闇なのですか?」


「ん? あー、やっぱりそう来るよな。 ま、闇にもいろいろあるわけよ。 俺たちは争いたくないんだ。 平和にのんびりと暮らしたいのよ。 昔みたいにな」


「そそ、神と戦うなんて馬鹿げてるっての。 戦いたくないからあたいらはおとなしくここに封じられてたってわけ。 まぁここのところ封印が弱まってたみたいだけどね」


 二人はのどかにお茶をすすり上げる


「あー、いいねぇ。 俺たちゃこういうのんびりした生活が好きなわけよ」


「でも下手に力なんて持っちゃってるから戦わされてたって感じかな」


 闇らしくない二人は平和主義を貫いたらしいが、神々に和平を申し込もうとした矢先に他の闇たちにはめられてここに封じられてしまったそうだ


「ま、あちきらはここで人間っぽくのんびりと暮らさせてもらうよ。 なんなら何か悪いもんが来たらあちきらで退治してやるって」


「ああ、俺たちを放っておいてくれるならそのくらいは役に立たせてもらう。 どうだ?」


 二人の話を信じたわけではないが、ルーナ達はこの二人から全く邪悪な気配を感じなかった


「信じたわけじゃないけど、もしこの世界を壊すつもりならとっくにやってるよね。 なんせ封印はいつでも破れるほど力を持ってたみたいだしね」


 この二人からは封印の力とは比べ物にならないほどの闇の力を感じた

 つまりその気になればいつでも自由の身に成れたということだ

 それでもそれをしなかったのは、二人とも他の闇のやったことに対して責任を感じていたからだ

 生来のお人好し、それがこの闇たちの正体だった


「ま、ここは俺たちに任せときなって。 俺たちは闇の中で浮いた存在だった。 どうせあいつらのとこに俺らの居場所なんてないんだよ」


 そう言って二人は、一瞬確かに悲しそうに笑った


「闇の中にも平和を愛す人はいるんだね」


「信じられないですけど、あれは嘘を言ってる目じゃないです。 解析の力でも嘘をついていないことはわかりました」


 ルーナはいつの間にか二人を解析してその言葉に虚偽がないかを確認していた

 結果、二人とも本当のことを放していることが分かった

 この力に嘘をつくことはできない

 二人とも本心しか言っていないことが分かり、安心してこの世界を任せることにした

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