神々の捜索11
力が溢れ、捻じ曲げられた事象を見つめる
「バラバラにされたって事象は捻じ曲げた。 だが、核が無いってのはどういうことだ?」
シンガの欠片の全ては既にミナキの手の中にあった
その大きさは人の頭ほどだが、核を入れれば体を構成するようになる
だがそのための核がない
シンガが砕け散ってバラバラになったという事象は捻じ曲げて、元あった形へと返している
にもかかわらずシンガが元に戻ることがなかった
「核は一体どこへ行っちまったんだよ」
いくら力を行使してもシンガの核が戻ってくることはなかった
「仕方ねぇな。 探すか…。 もしかしたら俺の力が及ばない場所にあるのかもしれないしな」
それはおおむね正解だった
現在シンガの核はパリケルと共にルーナの作り出した世界にあった
そのため空間が遮断され、シンガの核はミナキの手元に戻ることができなかったのだ
「エイシャ、ラシュア兄貴、俺はきっと神々の仲を元に戻す。 平和だったあの頃に戻るんだ」
ミナキは空間に剛腕を叩きつけ、世界を渡った
降り立ったのは一般的な、魔物がはびこる中位の剣と魔法の世界
人種は様々で、人々はこの世界の神の加護を受けてスキルや魔法を行使しているようだった
「ここの世界の神はちゃんと仕事をしているみたいだな」
キョロキョロとあたりを見渡して近づいてくる気配に備える
「来たか。 優秀だな」
ミナキの前に現れたのは、男性なのか女性なのか判別しにくい整った顔立ちの人の形を取った何か
「じょ、上位の女神さまがなぜこのような世界に? 私は何か過ちを犯したのでしょうか」
どうやらこの世界の神のようで、性別としては男性のようだ
「いや、お前はよくやってると思うぜ。 この世界の運営もちゃんとできてるし、加護も与えてる」
「で、でしたらなぜ…。」
「たまたまだよ。 それとも何かやましいことでもあんのか?」
「い、いえ、そういうわけでは。 私はこの世界をよりよく導きたいのです」
「ああ、そうだろうな。 この世界を見ればお前が頑張ってることくらいわかる。 ここに来たのは本当にたまたまなんだよ」
この世界の神は何かを切り出したいようだが、遠慮しているのか口どもっている
「どうしたんだ? 遠慮せずに言いたいことがあるなら言うといい。 いきなり怒るほど俺もバカじゃないよ」
それを聞いて少し安心したのか、ようやく彼は切り出した
「申し遅れました。 私はゼラトロンと言います。 一応この世界の管理をしている中位の神です。 実はあなた様にお願いがありやって参りました」
恐る恐る切り出してみたが、ミナキは真剣に話を聞いている
「実は、この世界に上位の神ほどの実力を持った何者かが侵入してきているのです。 その者は何でも闇と黒族を探しているのだとか」
「闇、を? もしや、闇を復活させようとたくらむ者か?」
「そうも考えたのですが、この世界で何かをしていた闇は既にどこかへと消えていますし、ここには闇化した魔物が幾匹書いたのですが、それも私の手で退治しております」
ミナキはそれが何者なのか考えたが、心当たりはなかった
「そいつはどんな奴だ? 会ってみたい」
「はい! すぐに連れてまいります!」
ゼラトロンは頭を下げて飛び立った
「俺の知らない神が、世界をまたぐ? 一体誰なんだ…。 まぁ、会ってみればわかるだろう」
ミナキの知る限り転移の出来る神はかなり少ない
もし移動するにしても、パリケルの転移装置やルーナの転移能力、上位の神々が使う狭間からの移動(ただし狭間からの移動の場合行ける場所に制限がつく)世界を渡る方法はいくつかあるが、自分自身で転移をする場合力がなければ消滅してしまう
どうやらその者は自分で転移を繰り返しているようだった
しばらくしてゼラトロンは一人の少女をお姫様抱っこの要領で連れてきた
「へぇ、その子が…。 確かに不思議な気配を感じるな…。 魔の気配に、神力? 何だお前は」
「あ、えと、私はアナサです。 闇と黒族を追っています」
緊張しているのか、少し震えている
「何故闇を追う? それにその魔の気配、お前まさか」
「ち、違います! 私の役目は闇を追って報告することなんです!」
「報告? 誰にだ?」
いまだ震えながらアナサは答えた
「下位の女神、アウラスタリア様とマルセタリア様です」
ミナキはその名前に心当たりがあった
シンガが消滅させようとしていた世界の女神達の名だ
「そうか、疑ってすまなかった。 あの世界の住人か。 しかしなぜ一住人がそこまでの力を?」
「私にも、分からないんです。 私は何度か死に、復活しました。 そのたびになぜか力が増していくのです」
「まさか! 死強…。 その力は神の名のもとに全て排除されたはず。 お前、一体何なんだ?」
そう言われてもアナサには全く心当たりもなく、死強という言葉にも聞き覚えがなかった
「すいません、分からないんです。 本当に」
「く、まぁ、そうだよな。 お前のような子供が知っているとも思えん。 よし! お前、俺についてくる気はないか?」
「え!?」
「俺ならお前をもっと強くさせてやれるし、闇に対抗できる術を教えてやれるぞ?」
それはアナサにとっても願ってもない申し出だった
自分も、母である女神達の役に立てるようになると
「はい! よろしくお願いします!」
傍らではすっかり空気になっていたゼラトロンが訳も分からず拍手をしていた