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処刑直前に捕まえた闇をつきだし、映像を見せる
「皆さん! その人は被害者なんです!」
闇たちが笑いながら少年の仲間が死ぬところを見ている
そんなシーンを突き付けられた民衆はどよめきたった
「クソ! 何だよお前ら! あいつの死体をメグが有効活用しようと思ってたのに!」
「ね、姉ちゃんまずいよ。 こいつら僕らよりはるかに強いよー」
闇の二人は暴れるが、拘束の力で全く動けずにいる
「ねぇ君たち、そこの、二人なんだね?」
「え?」
断頭台から少年が話しかける
「そこの二人が、こいつらが、僕の仲間を死に追いやったってこと?」
「そうだな、間接的にだがそうなるだろう」
リゼラスがそう答えると、少年は怒りをあらわにし、その力を一気に解放して周囲を吹き飛ばした
少年は力を二人に向けて放ち、次元を引き裂いた
「させぬ!」
目の前に黄金に輝く美しい女性が現れて引き裂かれて二人に向かう次元の裂け目を手でつかみ、元に戻した
「どけ! その二人は、仲間の敵なんだ! 絶対に殺してやる!」
怒りで我を失っている少年に手を伸ばす黄金の女性カタカムナ
その手に異様な気配を感じ取った少年は飛びのく
「ほぉ、力を感じるだけの力量はあるようじゃな。 それに、ふむ、神もおったのかえ。 じゃがおぬし、おびえておるの。 可愛いものじゃ。 ほれ」
少年が飛びのいた横にはレライア。 そのレライアに向かって手を伸ばすカタカムナ
その手が触れた瞬間、レライアの体は砕け散った
目の前で突如女神が砕け散る光景に唖然とするいなみ
その後ろからルーナが飛び出し、直ぐにサニーに変わると、自らで生み出した破壊の力をその手にまとわせてカタカムナに叩きつけた
それによりカタカムナは破裂する
「よし! あんた! 速くこっちに来なさい!」
少年を呼び、自分の後ろに隠す
すでにカタカムナを破壊されたことで憤ったホツマがサニーを殺そうと飛び込んできている
その拳を避けてパリケルのいる方まで飛んだ
しかし少年まで連れることができず、的を外したホツマの拳が地面を砕いて少年を吹き飛ばした
「くっ、何て力を…」
少年は今の衝撃で気絶したようだ
そこをいなみが素早くキャッチする
いなみの手には黄色く輝くレライアの核が握られていた
どうやら彼女の魂にまでは傷はついていないようだ
「サニーちゃん! 少年とレライアさんの核は保護したよ! 一旦引いて!」
いなみの声を聴きルーナにシフトすると、仲間たちを抱えてこの世界から一気に転移を開始した
ルーナははっきりと敗北を悟った
黒い空間で僕は目を覚ました
うっすらと周りが見える
そこで声がした
「レライア様! レライア様!」
「だめだ、核は無事だが応答がないな」
「どうですか? シンガ様」
「そう言われても俺も核の状態だからな。 わからん」
「使えない神様ぜな」
「何か言ったかパリケル」
「い、いえ」
段々と視界が戻り、話している人たちの姿がはっきりと見えた
あれ? 男の声がしたと思ったけど気のせいか? 女の子しかいないな
「お、目が覚めたみたいだぜな」
「大丈夫か? 気分が悪いようならまだ寝ているといい。 ここはルーナの空間の力で作り出した誰からも認識されない世界だ」
空間? 認識されない世界?
どういうことなのか全く分からない。 僕はいったい今どこにいるんだ?
「取りあえず、これでも飲んで落ち着くぜな」
ロボットのような機械人形を持った少女がお茶を入れてくれる
混乱した頭でそのお茶を飲むと、ほのかな甘さと緑茶のような香りが僕の心を落ち着かせてくれた
「とりあえず落ち着いたかぜな? ちょっとそこで待っててくれるとありがたいぜな」
言われた通りに僕はその場に待機した
しばらくして気づいたけど、この人たちは僕が無実だと証明してくれた人たちだ
でもなんで僕を助けてくれたんだろう? それに、なんだか穏やかな、そう、神聖な力を感じる
「ふむ、わかったぜな。 レライア様はシンガ様と違って一度体を砕かれたぜな。 最近になってようやく体が戻ったけど、また砕かれたから魂が休眠状態にあるんだぜな。 そのうち目を覚ますはずだぜな。 エネルギー量から見るに、数日くらいだぜな」
レライア様って誰だろう? 体が砕かれた? そんなことされて生きていられる人間なんているのだろうか?
あ、でも核がどうのこうの言ってたってことは、あのパリケルちゃんって子が持ってる機械人形と同じようなものなのかもしれない
いやでも機械人形に様は付けないか…
考えても分からない。 聞いてみるかな
「あの、レライア様って誰です? ここにはいないみたいですけど」
「何言ってるの? そこにいるじゃない」
ものすごく可愛い女の子だ!
なんだろう、まるで天使、いや、女神さまのような
ん? その子が指しているのは、黄色い玉?
「この方がレライア様、雷の神様だよ。 今は体を砕かれて休眠してるみたいだけど、目覚めたらシンガ様みたいに話してくれるはずだから」
「シンガ様?」
「そう、この方がシンガ様、消滅の神様だよ」
美少女は今度はパリケルさんを指さす
あれ? パリケルさんも神様なのかな?
「違う違う、俺様じゃなくて、こっちぜな」
胸元にある白い玉
「よう、次元の力を持つ少年。 俺がシンガだ」
玉が、しゃべった…
「俺も体を失っている。 本来の姿はもっと威厳があるんだが、まぁ気にするな」
「は、はぁ」
この女の子たちや神様がなぜ一緒にいるのか、それに僕はどうなったのか、何もかも分からないし疑問も尽きないけど、この子たちは敵じゃないみたいだ
それなら、僕にはもう当てもないし、彼女たちと一緒にいるのもいいかもしれない
その後、僕は彼女たちの事情をすべて聞いた
かなり時間はかかったけどおおむね理解できたと思う
そうか、僕の突然目覚めた力は、神様の力だったのか…