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 さかのぼること二日前、ルーナたちは新たにやって来た世界をひたすらに歩いていた

 人通りの多い街道のようで、馬車や冒険者のようないで立ちの人々、様々な種族とすれ違う

 目指す場所は分からないが、とある気配を辿っている


「どんどん気配が強くなっています。 こんなところにいるなんて」


「あたいも感じる。 これは確実に闇、それも闇本体の気配だ」


 この世界のどこにいようとも、この気配だけははっきりと辿ることができた

 闇のいる場所は既に目と鼻の先だった


「いました! あの二人に間違いありません!」


 街道から外れた森の中へ分け入り、しばらく進むと、迷宮と書かれた看板が掲げられた洞窟が見える

 その前に二人の少年少女が立っていた


「ククク、あいつは絶対当たりだよ。 バグ、もっとよく見せて」


「本当かよ姉ちゃん。 全然力なんて感じなかったぞあのクズ人間」


 二人は黒く光るオーブを必死になって眺めているようだった


「あれが闇だよね? よし、倒しちゃおうよ」


 いなみの提案にルーナは動こうとしたが


「待って、あいつらが何かたくらんでるなら目的を知っておかないと。 もし倒した後でも発動する罠なんて仕掛けられてたら厄介だ」


「それもそうだぜな。 俺様もそうした方がいいと思うぜな」


 レライアとパリケルが諫める

 リゼラスも出て行こうとしていたが、レライアの言葉を聞いてとどまった


「ほーら姉ちゃん、あいつもうじき死ぬよ? 見当はずれだって」


「黙ってみてな。 もうすぐ、始まるよ」


「始まる?」


 二人が持つオーブはルーナの位置からは見えないため、パリケルの遠視用ドローンを使ってオーブを覗いた

 そこに映し出されているのは、力のない弱そうな少年と、その少年の脚を踏みつぶし、今にも喰らおうとしている魔獣。 その魔獣の体色は真っ黒で、明らかに闇化していた


「た、助けなきゃ!」


 ルーナは再び出て行こうとするが、レライアに止められた


「待って。 この少年の体で何か起きてる」


 モニターにもう一度目をやると、少年は急に魔獣の脚をもいだ

 明らかに自分よりも強い魔獣の脚を、いとも簡単にだ


「これは、あの闇たちが目をつけるのもわかるわ」


 何かに納得したようなレライア


「それは、どういうことですか?」


「あの少年、どういうわけか強い神力が宿っている。 あたいたち上位の神々に匹敵するかもね」


「ってことはもしかしてあいつら、あの少年を闇化しようとしてるんじゃないかぜな?」


 もう一度モニターに目を移すと、少年は魔獣を見えざる力でずたずたに引き裂いて気絶した


「すごいね姉ちゃん!」


「まぁもう少し様子を見よう。 あの力があいつに定着しなきゃ、メグたちの役に立たないからね」


「そうだね姉ちゃん! さすが姉ちゃんは頭がいいなぁ」


「ほめるなほめるな」


 しばらくすると少年は目が覚めたのか、不思議そうにあたりを見つめ、思い立ったように仲間の死体を泣きながら処理していた

 やがて、彼は外へと出て来る


「感じる! 感じるよ姉ちゃん!」


「ほら見なよバグ。 こいつは掘り出し物だって言ったろ?」


 二人は少年に狙いを定め、闇の力を植え付けようと動いた


「危ないです! 助けましょう!」


 ルーナが飛び出すよりも早く、その少年は姿を消した

 ルーナの探知でも見つけられないほどで、まるでこの世界から忽然と姿を消したようだった


「驚いた。 この力、あたいと一緒に体が砕けた…。 次元の神ディジョン兄さんの力じゃない…」


 次元の神ディジョン、その名の通り次元を操る上位の神で、ラシュアにかなり近い上位中の上位の神だった

 彼も争いを好まず、おかしくなっていたラシュアによるエイシャたちへの攻撃を真っ先に受け止めたことでその体を砕かれた

 彼はレライアとは違い、魂にまで破損をきたしていたため体を復活させることができなかった

 そのため、自分の力を受け入れるのに適当な体、つまり少年の体に宿ったというわけだった


「ディジョン兄さんは争いこそしなかったけど、そん力はでたらめに凄かったよ。 次元の狭間に入り込むことで存在を隠したり、次元ごと相手を引き裂く力までもってた。 あの力だけはどんなに凄い防御の力をていたとしても防げないからね」


 つまり魔獣は次元ごと体を引き裂かれ、バラバラになったのだった


「あ、闇が行ってしまいます! 私は追いますのでいなみさんとリゼラスさんはあの少年を追ってください」


 ルーナ達は二手に分かれてそれぞれの対象の後を追った

 ルーナとレライア、パリケルは闇の後を追い、リゼラスといなみは少年を追った


 それから数週間、闇は思った以上に素早く、ルーナ達はなかなか捕まえられずにいた

 どうやらこの二人は戦闘能力に乏しく、逃げ足と洗脳能力のみに特化しているようだった


「くそ! アシキちゃんがいればこんな奴ら!」


「マクロ君、助けに来てくれないかな?」


 戦闘能力に特化した二人の闇を思い出し、名前を呼んでみたが、それで呼び出せるわけではなかった


「この! おとなしくしろっての!」


 レライアが自分のことをメグと言う闇の少女を取り押さえた


「レライアさん! そのまま抑えててください! 束縛の力!」


 ルーナは束縛の神の力を使ってメグを捕らえる


「もう一人!」


 姉が捕まったことに動揺したバグという少年もあっさりと捕まった


 そして話は今に戻る

 

 パリケルは保存されていた少年の動画を人々に見せつけ、処刑を止めたというわけだった

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